私は妹たちの水着姿が見たい(いづみside)後編
「ちぃーす! 師匠!」
私が市民プールの休憩スペースでくつろいでいると、妹の貴音ちゃんや双子の空ちゃんが入れ替わりやって来ては不可解なことを言うのだが……何なんだ?
そして今度は……樹李ちゃんがやって来た!
「あぁ樹李ちゃん、どうしたの?」
この子は妹や双子の貧乳をイジってくるので彼女たちと仲が悪い。でも今はどういうワケか四人で仲良く遊んでいる。
「ちょっと休憩っす」
「そう……妹たちと仲良くやってる?」
「大丈夫っす! 樹李タソたちは共通の目的が……あ、いや何でもないっす」
えっ何だよ共通の目的って!? まぁいいや、仲良くやっているなら何よりだ。
樹李ちゃんはいつの間にか私の左側にちょこんと座っていた。ギャル風の見た目で思いっきり背伸びをしている感じがする子だ。でもこうして見ると可愛らしい中学一年生……まだまだ子どもだな。
あれ? そういえば樹李ちゃんはさっきから右手に何か持っているが……
もしかして……パッド!? しかもシリコンとかじゃなくスポンジか何かを切って作っただけのようだ。もしかしてこの子、パッドを自作して着けている?
――げっ!
よく見たら左胸が小さくなってるじゃん! ていうか背の高い私が上から見たらパッド付けてるのバレバレだったわ!
「ねぇ樹李ちゃん、さっきからその手に持ってるの……何?」
「へっ!? あっ! こっこれは……」
樹李ちゃんは慌てて私に背を向けると、何か……じゃなくてパッドをつけ直し、
「ななっ、何でもないっすよ師匠!」
振り向くと左右の胸が同じ大きさに戻った。何でもない……ことはない。
※※※※※※※
「い、いや~暑いっすね~師匠!」
樹李ちゃんは必死にごまかそうとしている……もう無理だけど。あと、できれば私のことを「師匠」って呼ぶのはやめてほしい。
「うん、まぁ暑いね」
「こんなときは『野球拳』とかやりたくないっすか!?」
――はぁ?
やりたくなるワケねーだろ! 何言ってるんだコイツ。
「な……何だよ野球拳って」
「えっ知らないっすか師匠!? ジャンケンして負けた方が服を脱ぐっすよ」
「いや知ってるけどそういう意味じゃな……」
あ゛っ!? このとき私は妹たちの「目論見」にやっと気がついた!
妹たち……私のラッシュガードを脱がして水着を見ようって魂胆だな!?
よく考えたら妹の「泳ぎを教えて」も空ちゃんの「ピアス探して」も、必然的に私がプールに入ることになる。フード付きのラッシュガードは事故防止のため、着たままプールに入ることはできない……つまり水着になるということ。
そして樹李ちゃんの明らかに頭のおかしい「野球拳」の誘い……そうか、そういうことか!?
だが……
「いいよ、じゃあやろうか」
私はあえて樹李ちゃんの要求を飲んだ。この子は自分が「重大なミス」を犯していることにまだ気づいていない。
「ホントっすか!? じゃあ勝負っす」
「でもちょっと待って! こんなに人が多い所でさすがに『あの歌』は歌いたくないからさ……普通にジャンケンでいい?」
「えっ……歌ってなんすか?」
「オマエさては野球拳のことよく知らないだろ!」
私は樹李ちゃんと野球拳をすることになった。だが私には勝つ自信がある。
私は剣道をやっていたが、剣道には「一眼二足三胆四力」という言葉がある。一番大事なのは「眼」……つまり洞察力であり、一瞬で勝負が決まる剣道において相手がどんな手で来るのか見破る「眼力」は重要な事だ。
この眼力を「目付」というが……これを鍛えてきた私は、樹李ちゃんがどの手を出してくるかある程度考えが読める。
「最初はグー! ジャンケン――」
パーか!? いや、そうと見せかけ……チョキだ!
「――ポン!」
思った通り……樹李ちゃんはチョキ、私はグー……勝った!
「樹李ちゃん! お姉さんの勝ちだよ……脱ぐんでしょ? 樹李ちゃんが」
「そぉっすね……えっ!?」
樹李ちゃんはキョトンとしていた。やっぱこの子、負けたら「自分が脱ぐ」ことを全く想定していなかったようだ。
「あっそういえば樹李ちゃんビキニだよね!? ってことは上か下、必ずどちらか脱がなきゃダメってことだよねぇ~」
「えっ、えええぇっ!?」
ようやく自分の発言に気づいた樹李ちゃんは顔が真っ青になっていた。
「あぁ、でも私の方が一枚多く着ているから……ハンデをやるよ! 胸のカップの所に仕込んでいるフカフカした物を取り出したらオッケーだよ♪」
それを聞いた樹李ちゃんは、今度は顔が真っ赤になり
「そっそんなモノ仕込んでないっす! し……師匠はエロいっすー!!」
と叫んでプールに戻っていった。こらっ人前でエロいとか言うな! まぁでも樹李ちゃんのハダカをマジで見たかったエロいお姉さん……なのは間違いない♥
※※※※※※※
〝ピピィイイイイッ!!〟
休憩時間を告げるホイッスルが鳴った。プールで遊んでいた妹たちが休憩スペースで待っている私の元へやって来た。
「みんな、麦茶あるよ! 水分補給しな」
私はポットを取り出すと、麦茶を紙コップに注いで四人に配った。
「師匠! いただくっす!」
「……いただきます」
樹李ちゃんや空ちゃんが麦茶を飲み始めたとき、天ちゃんが……
「お姉さん、いただきまーす……あっ!?」
私のラッシュガードに麦茶をこぼすと、
「あぁすみませんお姉さん! 拭くからすぐその服脱いでください!」
……ったく、わざとらしい! しょうがない、ハッキリ言ってやるか!
「アンタたち……さっきから私の服を脱がそうとしてるだろ!?」
「えっ、そそそんなことないのです」
四人の目は百メートル自由形決勝のように激しく泳いでいた。
〝ピピィイイイイッ!!〟
休憩時間の終わりを告げるホイッスルが鳴った。だがこの子たちにお説教をするため、私たちは休憩スペースに残っていた。
「で、だいたい予想がつくけど……アンタたち、何がしたいの?」
「おねえちゃんの水着が見たいのです」
「師匠のビキニが見たいっす」
「お姉さんの豊満なお胸が見たいです」
「見たいです」
「うん、素直でよろしい」
素直すぎて怒る気にもなれん!
「アンタたちねぇ、こんなの見て何が面白いの?」
「それは……お姉さんのおっぱいはみんなが憧れるおっぱいです!」
「おっぱいです!」
「そうっす! 師匠のおっぱいは尊敬に値するおっぱいっす!」
「おねえちゃんのおっぱいは公開してなんぼのおっぱいなのです!」
「公共の場所でおっぱい連呼するな! それと見せもんじゃねーよ!」
このとき私は腕時計を見ていた。
「……あ、もうそろそろかな?」
私はスッと立ち上がると妹たちに
「アンタたち……巨乳なんて何にもイイことないんだよ」
「そんなことないですよ!」
もう何度も巨乳の大変さを伝えているが妹と双子は聞く耳を持たない。しかもこの三人に樹李ちゃんまで加わってしまった。
「そっか……わかった! じゃあ今から巨乳がどんだけ不便なものか、アンタたちに教えてあげるよ」
そう言うと私は、おもむろにラッシュガードを脱ぎ始めた。
貴音なのです。「後編」だけどまだ続くのです。




