私は妹たちの水着姿が見たい(いづみside)中編
「みんなー、着いたよー」
家を出て十五分ほどすると目的地に着いた。
市民プールは北と南の二ヶ所あるが、今回私が選択したのは北にある運動公園のプールだ。ここは施設が古いがその分南より料金が安い。大人は二百二十円、中学生以下は何と五十円! まぁ南のプールも六十円と大差ないが……。
「……」
私が運転する車の助手席には樹李ちゃん、そして後部座席には妹の貴音ちゃんと双子の天ちゃん空ちゃんが乗っていた。移動中、後席の三人は話が盛り上がっていたが助手席の樹李ちゃんとは一切会話がなかった……本当に仲が悪いんだな。
妹たちに頼まれたとはいえ、私はこの樹李ちゃんという子に申し訳ないことをしてしまった。その負い目もあって私は、今回のプールでこの子たちに何とか仲良くなって欲しいと願っている。
受付を済ませ更衣室に移動しようとしたら、私は忘れ物をしたことに気づいた。
「あ、悪いけどみんな先に着替えて! 私は後から行くよ」
「はーい、行こっ!」
妹と双子はさっさと更衣室に入ってしまった。樹李ちゃんは一瞬不安そうな顔で私を見てから遅れて更衣室に入っていった。
……大丈夫かなぁ。
※※※※※※※
私は遅れて更衣室に入った。妹や双子のことだから、私の着替えを見ようと待ち構えているかも? と思って周囲を警戒したが……どうやらプールの誘惑の方が上だったようで安心した。
樹李ちゃんも出ていったようだ。仲良くやっているか……うーん、さっきまでの様子じゃ難しいな。早く着替えてあの子たちと合流しなきゃ!
私は和からもらったビキニに着替えると、その上にゆったりとしたフード付きのラッシュガードを羽織った。
ラッシュガードは元々、サーファーが擦り傷や日焼け防止のために着ていた体にフィットする服のことだ。でも最近はフード付きでゆったりとしたパーカーのような物もあり、私は今回そのタイプのラッシュガードを持ってきた。これなら体型が隠せ、さらにサングラスをすれば男どもの視線を逸らせることができるだろう。
ビキニを着たとき、隣で着替えていた小学生が二度見していた。やっぱ市民プールじゃビキニは浮くし、この胸は人前で見せるべきじゃないな……ったく、巨乳は不便だなぁ!
私は水分補給のために用意した麦茶などを持ってプールサイドに出ると、
「うわー貧乳を隠したフリル三姉妹が傷を舐め合ってるっすねー!」
「ふーんだ! 何よ! どうせ中身はパッドで盛ってるんでしょ!?」
――うわっ、やっぱダメか!?
「こーら、二人とも! こんなとこでケンカしなーい!」
樹李ちゃんと天ちゃんがケンカしていた。私は二人のケンカを止め、
「樹李ちゃん、そういうマウントはダメだって言ったでしょ!?」
「さーせん師匠! でも師匠のビキニには負けるっす……あ、あれ?」
「あれ? お姉さん、その格好って……」
「おねえちゃん……何で水着じゃないのですか?」
樹李ちゃんに注意をすると、今度は私が水着を着ていないことに妹たちから不満の声が上がった。
「私は付き添いだからプールに入らないよ! アナタたちだけで遊んできなさい」
そう言うと、私は荷物を持ってテントの中にある休憩スペースに入った。妹たちはガッカリした様子でその場に立ちすみ……いやそこまで凹むことかよ!?
※※※※※※※
休憩スペースに入った私は、中から妹たちの様子を見ていた。
プールサイドにいた妹たちはしばらく何か話していた後、四人でプールに入っていった。何だ、仲良く遊んでいるじゃないか……なら良かった!
それにしても……いい眺めだ♥
妹と双子は私が買ってあげた水着を着ていた。妹は、私が選んだ水着の中で最も肌の露出が少ないピンク色のタンキニを着ていた……くっそー、それ選んじゃったか! 妹には是非ともバンドゥビキニを着てもらいたかったのだが……。
天ちゃんは黄色のハイネック……ハイネックは巨乳向けと思われがちだがフリル付きだと小胸でも似合う。そして空ちゃんはオレンジ色のオフショル! おぉ大胆だなぁ……でも肩ひもが付いているから安心して着られたのかも?
そして、唯一自前の樹李ちゃんは真っ赤なホルターネックのビキニ……ずいぶん背伸びした格好だなぁ。
まぁ何にせよ目の保養になった♥ これで暑い夏も乗り切れるぞー!
「おねえちゃん!」
しばらくすると、妹がプールから上がって私の元にやって来た。
「どうしたの? 貴音ちゃん」
「実は……貴音は泳げないのです! なので貴音に泳ぎを教えてほしいのです」
――は? 何を言い出すんだこの子は!?
実は昨夜、もし妹がカナヅチだったら何かあったとき心配なのであらかじめ継父に聞いていた。すると妹は小学生のとき、スイミングスクールに通っていたという事実が判明したのだ!
「貴音ちゃん……泳げるよね?」
「ぎくぅ」
――おい、「ぎくぅ」って口で言うな!
「えっ、貴音は泳げないので……」
「お継父さんから聞いてるよ! スイミングスクールに通ってたんだって?」
妹はプールサイドにいたがその目は泳いでいた。
「ももっ、もっと速く泳ぎたいのです」
「ここのプールって完全にレジャー向けだから泳ぐスペースなんてないよ」
「だっ、だったら隣の五十メートルプールで……」
「そっちは本格的に泳ぐ人専用だから……競泳用水着じゃなきゃ無理だし、あと中学生は泳力テストに合格しなきゃ使えないよ」
私に論破された妹は「ふわぁ、助手席がぁ~」と嘆きながら天ちゃんたちがいるプールに戻っていった……えっ、何だ助手席って?
このとき、妹は何が目的で私の所に来たのか皆目見当がつかなかった。だがしばらくすると、今度は双子の妹・空ちゃんが私の元へやって来た。
「あの……お姉……さん」
「えっと……空ちゃんだよね?」
空ちゃんは黙って頷いた。双子なので普段は見分けがつかないが、水着がオレンジのオフショルなので空ちゃんだとわかった。
「あの……お姉さんにお願いが」
「えっ、どうしたの?」
「空……さっきプールの中にピアスを落としてしまって……だから、お姉さんにも探すの手伝ってほしい」
――はぁ!?
確実におかしい! だって……ピアスなんかしてねーだろ空!?
こんな真面目そうな子が何でそんな見え透いたウソを? まぁいい、とりあえずウソは良くないから「撃退」しておこう!
「空ちゃん、それって誰か踏んだら大変じゃん! 急いで監視員さん呼ぼうよ」
「……えっ!?」
「あと、他のお客さんにもプールから出てもらわないと探せないよ!」
「えっ!? そ……そこまでは……」
私の提案に空ちゃんは動揺を隠せなかった。
「じゃあお姉さんが監視員さん呼んでくるから」
「あっお姉さん! やっ、やっぱありました! 大丈夫でーす!」
空ちゃんは逃げるようにプールへ戻っていった。
――何なんだ一体!?
妹といい空といい……様子がおかしい!
正直、この二人のときはまだ目的がわからなかった。
「ちぃーす! 師匠!」
……だが次の「相手」で彼女たちの目的がはっきりした!
貴音なのです。おねえちゃん……手ごわいのです!




