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貴音たちはおねえちゃんの水着姿が見たいのです(貴音side)後編

 



「アンタたち……さっきから私の服を脱がそうとしてるだろ!?」




 ――バレていたのですぅううううっ!


 おねえちゃんの水着姿が見たいと思った貴音(たかね)(てん)ちゃん(くう)ちゃん……そして樹李(じゅり)の四人は、それぞれおねえちゃんのラッシュガードを脱がそうと試みたのですが全て失敗に終わったのです。その上貴音たちの計画までバレてしまったのです。


「えっ、そそそんなことないのです」

「いやどう考えてもおかしいだろ! プールにピアス落したから探してとか野球拳しようとか……不自然すぎるわ」


 ピアス? 野球拳? さすがにそれは不自然なのです!!


「あっでもお姉さん! 服にシミが付いちゃ……」

「この色じゃ目立たないから大丈夫!」


 おねえちゃんは黒いラッシュガードを着ているのです。全員、アイデアがポンコツすぎるのです。


 〝ピピィイイイイッ!!〟


 休憩時間の終わりを告げるホイッスルが鳴ったのです。休憩スペースにいた人たちが、一斉にプールへ向かっていったのです。休憩スペースには貴音たちと、数人の大人たちだけが残ったのです。


「で、だいたい予想がつくけど……アンタたち、何がしたいの?」


「おねえちゃんの水着が見たいのです」

「師匠のビキニが見たいっす」

「お姉さんの豊満なお胸が見たいです」

「見たいです」


「うん、素直でよろしい」


 おねえちゃんはニコッとしながら怒っているのです。


「アンタたちねぇ、こんなの見て何が面白いの?」


「それは……お姉さんのおっぱいはみんなが憧れるおっぱいです!」

「おっぱいです!」

「そうっす! 師匠のおっぱいは尊敬に値するおっぱいっす!」

「おねえちゃんのおっぱいは公開してなんぼのおっぱいなのです!」


「公共の場所でおっぱい連呼するな! それと見せもんじゃねーよ!」


 おねえちゃんは顔を真っ赤にしながら、なぜか腕時計を見たのです。


「……あ、もうそろそろかな?」


 おねえちゃんはそうつぶやくと、スッと立ち上がったのです。


「アンタたち……巨乳なんて何にもイイことないんだよ」

「そんなことないですよ!」 

「そっか……わかった、じゃあ今から巨乳がどんだけ不便なものか、アンタたちに教えてあげるよ」


 と言うとおねえちゃんは、おもむろにラッシュガードを脱ぎ始めたのです。


「ほわぁ……♥」


 ラッシュガードから「ぽよんっ♥」と飛び出したビキニのおっぱいに、貴音たちは目が釘付けになったのです。


「こっこれは……芸術品っす!」

「もはや私たちにとって神……ありがたや」

「ありがたや」


 貴音はこの四人の中で唯一、ビキニの「中身」も知っているのです! でもその中身をキレイに寄せて上げているビキニのおっぱいは、貴音たちにとって「神聖なる芸術品」なのです! 石膏像にして美術室へ飾りたいのです♥


 ところが……


 おねえちゃんが水着を披露した瞬間、予想外のことが起こったのです!


「お姉さんどっから来たの!? 俺たちと一緒に遊ばなーい!?」


 突然二人組の男の人が現れ、おねえちゃんに声を掛けたのです。


 さらに……


「いやいや、おねーさん! オレと遊ぼうよー!」

「今来たのー? 一緒にビーチボールで遊ぼうよ!」

「オレ近くにいい店知ってんだ! 後で行こうよ!」


 気がつくとおねえちゃんは、プールにいた若い男の人たちに囲まれてしまったのです! 貴音たちも一緒に囲まれたのですが、完全に無視されているのです!

 これは困ったのです! このままじゃおねえちゃんも貴音たちも身動きが取れないのです。監視員さんはこの状況を止めてくれないのですか!?


 ……あ゛。


 監視員さんもチラチラとこっちを見ながらニヤけた顔をしているのです……役に立たないのです!


「おっ、おねえちゃん! これは大変なのです!」

「だから言ったろ!? 巨乳なんて百害あって一利なしなんだよ」


 さっきまでおねえちゃんは男の人たちから見向きもされなかったのです。でもおねえちゃんが水着になったとたん、男の人たちが一斉に寄ってきたのです!


「何だよオメー! 俺が先に声掛けてんだよ!」

「あぁっ!? 何言ってんだテメー!」


 そのうち男の人同士でケンカが始まったのです……こっ、怖いのです!


「ひぃっ……こっ、怖いよぉ」

「怖いよぉ」

「うわぁ、ヤバいっす!」


 天ちゃん空ちゃんや樹李も怖がっていたのです。


「おねえちゃん! こ、これはどうしたらいいのです?」

「ん? あぁ……もうすぐ来る頃だと思うけど」


 えっ? 何が来るというのですか?


 ちょうどそのとき、遠くの方から……


「いっちゃ~ん!」


 誰かを呼ぶ声が……これは!?


「いっちゃ~ん! どこにいるの~!?」



 ――和おねえちゃんなのです!



 ところが……


「あのバカ! 何だよアレは!?」


 和おねえちゃんを見た貴音とおねえちゃんは……


「おねえちゃん!」

「ア……アイツと視線を合わせるな! 他人のふりをしろ!」


 和おねえちゃんのことを瞬時に「関わってはいけない人」と認定したのです。


「いっちゃ~ん! あっ、そこにいるじゃな~い!? 貴音ちゃんも~」


「えっ!? あのお姉さん、貴音ちゃんを呼んでなかった?」

「なかった?」

「ししっ、知らないのです! 貴音はあんな人知らないのです!!」


「うわっ~あの人すげぇっす! 師匠の知り合いっすか?」

「しっ、知らん! 帰るよみんな!」


 天ちゃんたちは和おねえちゃんのことを知らないのです。でも今の和おねえちゃんは赤の他人でいいのです。貴音たちの知り合いだと思われたくないのです!!


 すると、さっきまでおねえちゃんの周りに群がっていた男の人たちが


「お姉さんひとりー!? オレたちと遊ばなーい!?」

「ねぇねぇこの後どう? 一緒にお茶しない!?」

「日焼け止めする? オッオレが塗ってあげるよ」

「いや俺に塗らせて……」


 一斉に和おねえちゃんの元へ集まっていったのです。


「えぇ~、こんなに大勢~!? う~ん、どうしよっかな~」


 和おねえちゃんはまんざらでもないようなのです……というか、全員を相手にするつもりなのです。

 おかげで貴音やおねえちゃんの周りには誰もいなくなったのです。そのスキに貴音たちはプールから出ていったのです。


 ……怖かったのです。


 男の人はおねえちゃんのビキニ……つまりおっぱいを見ただけであんなに態度が変わるのです。貴音はおっぱい大きくなりたいけど、おねえちゃんや和おねえちゃんみたいにならなくていい……そう思ったのです。


 大きいおっぱいは……見る側の方が気楽なのです♥



 ※※※※※※※



 プールから出てきたみんなは、おねえちゃんの運転する車に乗り込もうとしていたのです。


「なぁ……何で全員、後ろに乗ろうとしてるんだ?」

「そ、それは……全員が勝負に負けたからなのです」


 結局、誰もおねえちゃんのラッシュガードを脱がすことができなかったのです。


「それよりおねえちゃん! 何でビキニを着て運転しないのですか!?」

「おい、どこの世界に街中でビキニ着て運転するヤツがいるんだよ!?」


 ビキニ姿で運転するおねえちゃん……そもそも設定にムリがあったのです。

貴音なのです。


なぜ貴音とおねえちゃんは和おねえちゃんを見て他人のふりをしたのか……正解はおねえちゃん視点で明らかにするのです。

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