私は妹の「復讐」に協力することとなった(いづみside)前編
「おねえちゃんにお願いがあるのです!」
私は、妹から妙なお願いをされた。
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妹の貴音ちゃんから過激なイタズラを受け思わず妹を叩いてしまった私は、「罪滅ぼし」のため妹のお願いを聞いてあげることにした。
「明日、貴音はお友だちとこの家でお勉強会をする予定なのです。明日はパパとママさんがいないので、代わりにお茶菓子を出してほしいのです」
――え、それだけ!? 何か拍子抜けしたなぁ。
「は? まぁ、別にいいけど……何人来るの?」
「三人なのです」
「ふーん、二人は天ちゃん空ちゃんだよね? もう一人って……この前、校長室の前で一緒にいた子?」
「おねえちゃんは会ったことない子なのです。とってもいい子なのです!」
珍しいな……妹が双子の天ちゃん空ちゃん以外に友だちを連れて来るとは。
「もうひとつお願いがあるのです! お茶菓子を出すときに、この前お誕生日プレゼントであげた服を着てほしいのです」
は? 急に変なお願いをしてきたぞコイツ……。
私は妹から誕生日プレゼントをもらった。中身はウサギの着ぐるみパジャマだったが、それと一緒に服が一枚入っていたのだ。
よくみるとそれはタートルネックのタンクトップだった。いやこれはさすがに無理! 着なくてもどんな風に見えるか予測できる。
この手の服は概ね体にピッタリフィットするデザインだ。素材を見たところ間違いない。おまけに無地……つまり否応無しに私の胸が目立ってしまう。
「着ぐるみパジャマと一緒に入ってたヤツか? やだよ! あれは着たくない」
「ふぇええええん! まだ頭が痛いのですぅううううっ!」
「わーったよ! 着りゃいいんだろ着りゃ……」
ウソ泣きとわかっているが面倒くさい! しかし何だって妹は友だちの前で私にこんな格好をさせようとするんだ!?
「あと二つお願いがあるのです!」
「まだあんのかよ!」
「次に貴音から呼ばれたときは色の濃いブラジャーの上に白いTシャツ、またその次に呼ばれたときは和おねえちゃんからもらったビキニを着てお友だちに会ってほしいのです!」
「ちょっと待った!!」
さすがにこれは異常だ! 何で家の中でビキニ着て接客せにゃならんのだ!?
「オマエ何をたくらんでいるんだ!? 正直に答えろ!」
私は妹の両頬を引っ張りながら問い詰めた。
「ひっ、ひぅにょれふ! ひぅひゃらへふぉはらひゅにょれふ!」
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「復讐!? 何だよそれ……物騒な話だな」
私に問い詰められた妹は明日、天ちゃん空ちゃんと一緒に「勉強会」という名目で誘ったもうひとりの子に「復讐」がしたいと白状した。
妹の話では、妹と双子は以前からその子にイジメられているそうだ。まぁイジメというよりは、マウントを取られイジられることが多いらしい。
私に変な格好をさせたい理由、それは……その子が「巨乳」で妹や双子にマウントを取ってくるから、私のおっぱいでマウントを取り返したいということだ。
――何だよその理由は!?
確かにこの三人は貧乳だ。でも中一だしそんなこと気にするなと私は再三言っていたのだが……。それに対抗策が私のおっぱいって……子どものケンカに親が出るようなものじゃないか!?
「貴音とおねえちゃんは実の姉妹ということにしてほしいのです!」
なるほど、そういうことか! 私と血が繋がっていることをアピールして自分も大きくなったら巨乳になるというマウントを取ろうって魂胆だな!?
「だからさぁ、巨乳なんていい事ないんだから気にすることないじゃん!」
「おねえちゃんはおっぱい大きいからそういうことが言えるのです! 貴音は悔しいのです!!」
ダメだこりゃ……この子に何言っても水掛け論だ。
「だとしても……復讐なんて暴力的な解決法、お姉ちゃんはよくないと思うなぁ」
「お願いなのです! 協力してほしいのです! 貴音はおねえちゃんの言うこと何でも聞くのです!!」
――おっと! ここでNGワードが出ちゃったぞ……いいのか? 妹よ♥
「ほほぅ、何でも言うことを聞く?」
「あっ! それはその……あくまで児童福祉法に違反しない範囲でなのです」
今回の話は私にとって何のメリットもない。むしろ初対面の妹の友だちにビキニ姿で接客するとかデメリットしか感じられない! これじゃ完全に……痴女じゃないか! こんなこと余程の「見返り」がなければできるモンじゃない。
だが妹が下手に出てきた。一気に形勢逆転……形勢シティラ●ナーだ! よくぞ言った妹よ! ならば児童福祉法スレスレの要求をしてやろうじゃねーか♥
「わかったよ、貴音ちゃんがそこまで言うんなら……ただし、最後はちゃんとその子と仲直りするんだよ」
私は妹の「復讐」とやらに協力することにした。そしてこの後、私は貯金をかき集めて「ある物」を買いにお店に向かった。
※※※※※※※
翌日……
「こんにちはー、おじゃましまーす!」
「しまーす!」
私はキッチンに隠れて、妹と友だちが二階に上がっていく様子をこっそりとうかがっていた……今のは双子の天ちゃん空ちゃんの声だ。
「ちわーす! へー、貴音っちの家ってこんなんっすかー!?」
今の声が、妹が復讐したいと言ってた子か……何となく陽キャというかギャルっぽいキャラを意識してる感じがするな。
それにしても、この子は巨乳でマウントを取るとか言っていたけど……。
「あー外は暑いっすねー! こーんなに暑いとおっぱいの下が蒸れちゃってもーう大変っすよー!」
――なるほど! そういうことか。
「いいっすねーアンタたちは! どんなに暑くてもおっぱい蒸れなくてー!」
ぷぷっ、確かにマウント取ってるわ……こりゃ妹と双子は今ごろカチンときているだろうな!?
私はキッチンに戻ると、妹たちに出すお茶を準備した。この前ご近所さんからもらった桃が大量にある……まぁこれでいいだろう。
〝ニャイン♪〟
その後、しばらくリビングでテレビを見て待機していたらニャインの通知が……妹からだ。私は麦茶と桃を持って二階へ向かった。
※※※※※※※
〝コンコンコンッ……ガチャ〟
「あら、天ちゃん空ちゃんいらっしゃい」
「あっ、お姉さん! おじゃましてまーす」
「してまーす」
私は妹の部屋に入ると、おそらく今までの人生において一度も使ったことのない言葉遣いで天ちゃん空ちゃんに話しかけた。
いつもなら「おー天と空! 来てたんだー」と声を掛けるだろう。今回は私が妹と実の姉妹と思われるため「上品な言葉遣いをしてほしいのです」と妹から頼まれたからだ……私、そんなに下品な言葉遣いだったかなぁ?
「遅くなってごめんね、麦茶と……あと桃あるからよかったらみんなで食べて」
「ありがとうございます! いただきまーす」
「いただきまーす」
普段と違う言葉遣いに、本来なら戸惑うはずの天ちゃん空ちゃんが自然に受け入れている。そりゃそうだ、この双子も妹とグルだからな。
部屋にはもうひとり……たぶん校則違反になるであろう、髪を染めて付け爪をしたギャルのような子が座っていた。
貴音なのです。更新が遅れてごめんなさいなのです。




