私の誕生日に妹からプレゼントをもらった(いづみside)
「おねえちゃん、お誕生日おめでとうなのです!」
この日、私は十九歳の誕生日を迎えた。
母の茅乃が再婚し、尾白家で生活するようになって早三ヶ月が過ぎた。今までは茅乃と私の二人っきり……高校時代には和も加わり私の誕生日を祝ってくれた。
だが今年は延明さんと貴音ちゃんの父娘も一緒だ。一気に「家族」って雰囲気になった……なんかいい感じだなぁ。
料理とバースデーケーキは茅乃の手作り……しかもケーキのトッピングをしたのは私の「妹」になった貴音ちゃんらしい。どーれ、妹がどんな飾りつけしたのかお手並み拝見といこうじゃないか♥
だが……妹が冷蔵庫から取り出したバースデーケーキを見たとき、私たちは凍りついてしまった。
……あれ?
「なぁ和、確かオマエ……」
「え~茅乃ちゃんに渡したわよ~」
「うん、確かにナゴからもらったけど……」
ケーキの上に乗っていると期待していた「物」がないのだ。これは……妹に問いただす必要があるな。
「貴音ちゃん!」
「……な、何なのです?」
「これは……一体何かな?」
私にそう聞かれた妹は……悪いことをした自覚があるのだろう。目が泳ぎ顔を引きつらせ、それでも必死に笑顔を作り込みながらこう答えた。
「こっこれは……ブルーベリーとラズベリーのレアチーズケーキなのです♥」
そこにあったのはブルーベリーとラズベリーが言い訳程度に乗っただけの真っ白なホールケーキだ。確かにパッと見、レアチーズケーキのような姿だが……
「貴音ちゃん……ウソだよね? 食べたらわかるよ」
「はい、ウソなのです。ごめんなさいなのです」
私と和、もちろん茅乃も実は真相を知っている。
「シャインマスカットはどうした?」
「へっ!? あっ……あのですね……」
私の口からシャインマスカットという予想外のワードが出たためか、妹はかなり動揺していた。と、そこへ和が、
「貴音ちゃ~ん! あれ、私が買ったのよ~」
「へあっ!?」
そう! あれは茅乃がバースデーケーキを作るために、和がわざわざデパートで買ってきた物だ。
私の住む地域ではシャインマスカットの生産量は多いが、桃と違い地元の私たちでも口にする機会は少ない。ましてやハウス物などもってのほかだ。
今回は和が、尾白家でご馳走になるから……という理由で買ってきたのだ。あれはマジで食べたかったんだぞ!
私が妹を睨みつけると、茅乃が冷静に言った。
「じゃ、ケーキは四等分でいいよね?」
……茅乃も完全に怒っている。
「そうだねー! 継父さんと母さんと私と……和で分けようか!?」
「ふぇええええん! それだけはカンベンなのですぅううううっ!」
妹は涙目で懇願してきた……冗談だよ! このケーキは一般的なケーキの七号サイズ(直径二十一センチ)だ……四人で食べきれる代物ではない。
それにしても……自分のした悪事を隠そうとして挙動っている妹の顔もメッチャカワイイ♥ だが……
「それと……何なんだこのメッセージは?」
問題は妹がチョコペンで書いたメッセージだ! フルーツがなくなった分、広くなったスペースに大きく書かれていたのは……
『H oppa i
の
おねえちゃん!』
Hおっぱいのおねえちゃん……なんだこりゃ!? 私がHな巨乳ってことか!? いや、ある意味間違ってないがこんなことをわざわざケーキに書くな!
「あぁっ!?」
「何だよ」
「Birthdayと書くのを忘れたのです!」
「そっちかよ」
そこへ和が話に割り込んで来た。
「貴音ちゃ~ん、いっちゃんは~Fカップよ~! 私もIカップだから~Hカップのおねえちゃんじゃないのよ~」
「話がややこしくなるから和はしゃべるな!」
「えっ、ナゴ! オマエ……Iカップなのかよ!?」
――茅乃も黙ってろ!!
※※※※※※※
ようやくケーキの騒動が終わった。結局妹にもケーキを分けたが、フルーツの食べ過ぎでお腹いっぱいだったのかほとんど手をつけなかった……バカじゃん!
妹の話では「Happy」の「a」が「p」とくっついてしまい「o」に見えてしまった。そして「y」の上の部分がくっついて「a」に……さらに下の部分が長すぎてしまいクルッと回って「の」に見えてしまったそうだ。で、最後に飛び散ったチョコが「i」に……そんな偶然があるか?
「おねえちゃん! おねえちゃんにお誕生日プレゼントがあるのです」
妹がプレゼントを用意してくれた。なんだろう? 以前私は妹にお金をかけさせないよう『何でも言うことを聞いてくれる券』をリクエストしたが却下された……くそっ、こっちの意図がバレバレだったか!
「ありがとう、開けていい?」
何だろう? 何か大きな袋に入っているが……ぬいぐるみか? まぁ妹のセンスならカワイイ系だろう。袋の中に入っていたのは……げっ!?
「おい……正気か?」
ふかふかした生地に長い耳……着ぐるみパジャマ(ウサギ)だった。
「おねえちゃんのパジャマはカワイイのです! でも生地がくたくたでさすがに古いのです! これは貴音の着ぐるみパジャマとおそろなのです! おねえちゃんはウサギのコスプ……むぐぐっ!」
私は瞬間的に妹の口をふさいだ。ここでバニーガールの話をするな!
「おい勘弁してくれ! これはさすがに私のキャラじゃない」
「むぐぐ……ぷはっ! えっでも今のパジャマだってピンクのネ……んぐっ!」
「言うな―! しかもこれから暑くなって着ることないぞ!」
「秋になったら一緒に着るのです! 十五夜はこれ着てお月見をするのです!」
「嫌だ! こんなの着ねーぞ! 返品しろ」
私は後ろから抱きかかえるようにして妹の口をふさぎ、妹はその手を退けながら攻防が続いた。そのとき……
「いっちゃん!!」
私を怒鳴る声が聞こえた……和だ。
「せっかくカワイイ『家族』が買ってくれたんだからさぁ~、そこは素直に『ありがとう』でいいでしょ~!?」
久しぶりに和から怒られた。
「あ、あぁごめん……ありがとう貴音ちゃん」
確かに大人げなかった! まだまだ私も子どもだなぁ……しゃーない、秋になったら着るか!
「あっ、いっちゃ~ん! 私からもお誕生日プレゼントあるわよ~! こっちは~大人よ~♥」
和もプレゼントを用意してくれたようだ。これは小さい袋だな……
――げっ!?
和からのプレゼントは……
――ビキニだ!
「いや、さすがにこれは……」
「何で~! 今年は貴音ちゃんと海とか行かないの~?」
そうか……そんなこと考えたことなかった。でも……
「だからってビキニはないだろ!? しかもかなり露出高けーぞ!」
「いいじゃ~ん、VIO脱毛してんでしょ? そのくらい着ても平気よ~!」
「おい、言うなそれ!」
「何だいづみ! オマエ、脱毛なんかしてんのか!?」
「あっ、やべ」
「よし! 私も今年はビキニ着て海行くぞー!」
「対抗意識燃やすな―!」
「ね~パパさ~ん♥ 娘さんに似合うと思いませんかこれ~?」
そういえば……継父はシャインマスカットの件からずっと存在を消していた。
娘の不祥事、バストや脱毛の話……さぞかし居心地が悪かったに違いない。
貴音なのです。パパには刺激が強い話だったみたいなのです。




