貴音はおねえちゃんのお誕生日を祝うのです(貴音side)後編
――ふむむむむぅううううっ! おっ、おいふぃいのですぅううううっ♥
おねえちゃんのお誕生日をお祝いするため、貴音はバースデーケーキに飾りつけするお手伝いをしているのです。でも……でも……トッピングに使う「桃」がとってもおいしいのですぅううううっ!
――はっ!?
これはマズいのです! すでに「味見」と「試食」と「不良品」で三切れも食べてしまったのです! このまま食べ続けたら無くなってしまうのです。それだけは避けるのです!
なのですが……先ほど飾る前にちぎれてしまった分、再び奇数になってしまったのです。ひぃ、ふぅ、みぃ……数えてみると十三枚残っているのです。ママさんは十六等分にカットしているのです。こんな柔らかい桃を……器用すぎるのです!
これは再び偶数に戻すしかないのです! しかも貴音の家はパパ、ママさん、おねえちゃん、そして貴音の四人家族なのです……十三では割り切れないのです!
「ぱくっ」
貴音は一枚食べて十二枚にしたのです! これなら一人三枚で十二枚……上手く割り切れるのです! 桃も美味いのです♥
と、そのとき……
「貴音ちゃーん!」
――ビクッ!!
ママさんに呼ばれたのです! まっまさかつまみ食いがバレたのですか?
「なななっ何なのです?」
「今日はナゴ(和おねえちゃん)も一緒に食べていくからさぁー、ケーキは五等分できるように飾りつけてねー!」
――今さら言われても困るのですぅううううううううっ!!
和おねえちゃんが加わったら五人になってしまうのです! せっかく十二枚にしたのに……これでは意味がないのです!
「ぱくっ、ぱくっ」
――ほわぁああああああああっ!
無意識のうちに二枚も食べてしまったのですぅううううっ♥
でもこれで十枚……五人で仲良く割り切れるのです! 貴音は頭いいのです!
では気を取り直して飾りつけをするのです……あ、あれ? ママさん、ダメなのです! 貴音が手に取った桃には少しだけ「皮」が付いているのです!
世の中には桃を皮ごと食べる人もいるのです。でも貴音はイヤなのです! 桃の皮はキレイに取らないと気が済まないのです。
なのでこれは貴音が取ってあげるのです! 貴音は指を使って皮をはがそうとしたのです。そのとき、
〝ぶちゅ!〟
指で押さえた部分がつぶれてしまったのです……。
……不良品なのです……ぱくっ♥
その後も……
ほわっ! またちぎれてしまったのです……ぱくっ♥
ふへっ!? これじゃバランスが悪いのです……ぱくぱくっ♥
こっこれはおいしそうな気がしないのです……ぱくぱくぱくっ♥
――ふへぇええええっ! やっぱりおいふぃかったのですぅううううっ♥
数分後……
ほわぁああああああああっ!?
もっ、桃がどこかに消えてしまったのですぅううううううううっ!?
不思議なのです。どこに消えたのですか?(←正解は、この人の胃の中)
これは困ったのです……が、「覆水(フルーツ)盆(調理バット)に返らず」なのです! 桃は存在しなかったことにして次のフルーツを準備するのです!
今度は……シャインマスカット(一房)なのです!
よく考えたら桃はご近所さんからの「おすそ分け」、つまりお金はかかっていないのです。でもこれは間違いなく高価な物なのです! 緊張が走るのです!
「ごくり」
やっぱ一粒「味見」をしなければならないのです♥
「ぱくっ」
――ふにゃああああっ! おっ、おいふぃいのですにゃぁああああんっ♥
これは偶数奇数関係ないのです。他にもブルーベリーとラズベリーが残っているので、これらをランダムに並べたら何となくオシャレに見えそうなのです!
ただ、シャインマスカットの粒は大きいので半分に切る必要があるのです。これは貴音のお仕事なのです!
と、その前にぶどうの粒を軸から外さなければいけないのです……
〝プチッ〟
「あ……」
軸に少し「皮」が残ってしまったのです。皮ごと食べられるシャインマスカットなので、こんな見た目の悪い粒をおねえちゃんの前には出せないのです♥
「ぱくっ」
――きゃいいいいんっ! おっ、おいふぃいのですわぁああああんっ♥
次こそは……〝プチッ〟
今度は上手く取ることができたのです! では真っ二つにカットするのです。
「あっ……」
半分に切ることができなかったのです! 三分の二と三分の一になってしまったのです! これは失敗……不良品なのです♥
「ぱくっ」
――ふもぉおおおおっ! おっ、おいふぃ(以下略)
今度こそは半分に……あっ、また失敗なのです♥
「ぱくっ」
――ぶひぃいいいいっ! お(略)
また失敗なのです♥
「ぱくっ」
あっ、また……♥
「ぱくっ」「ぱくっ」「ぱくっ」……
数分後……
――ひょええええええええっ!?
貴音の目の前には、枯れ木のような姿になったシャインマスカットの残骸=軸だけが残されたのです! 気がつくとなぜか、ブルーベリーやラズベリーもほとんど残っていなかったのです!
こっ、これはマズいのです! フルーツはおいしかったのですが……。
まだケーキの上には何も乗っていないのです! これでは貴音のつまみ食いがバレバレなのです。仕方ないのです! チョコペン使ってできるだけ大きくメッセージを書くのです!
貴音は中学生なのです。だから日本語ではなく英語で「Happy Birthday おねえちゃん」とメッセージを書くのです!
H……a……あっ「a」と「p」がくっついてしまったのです! でもたぶん読めると思うのです。続けて……ほわっ「y」の上の部分もくっついたのです! しかも下の部分はチョコが出すぎてくるっと一周してしまったのです!
――そのときなのです!
「ねぇいっちゃ~ん! 犬は~!? 放し飼いになってないよね~?」
「ビビりすぎだオマエは! いい加減慣れろ!」
おねえちゃんが帰ってきたのです! 和おねえちゃんも……。
貴音は急いでメッセージを書くと、ママさんに見つからないようにケーキを冷蔵庫に仕舞ったのです。
※※※※※※※
「これは……一体何かな?」
おねえちゃんのお誕生日パーティー……バースデーケーキを見たみんなの目が点になったのです。
「こっこれは……ブルーベリーとラズベリーのレアチーズケーキなのです♥」
そこにあったのは真っ白なホールケーキの上に、かろうじて残っていたブルーベリーとラズベリーを言いわけ程度に乗せたシンプルなケーキなのです。それはまるでレアチーズケーキのような見た目だったのです。
「貴音ちゃん……ウソだよね? 食べたらわかるよ」
「はい、ウソなのです。ごめんなさいなのです」
……秒でバレたのです。
「じゃ、ケーキは四等分でいいよね?」
「そうだねー! 継父さんと母さんと私と……和で分けようか!?」
――ふぇええええん! それだけはカンベンなのですぅううううっ!
「それと……何なんだこのメッセージは?」
おねえちゃんたちが帰ってきたので慌てて書いたチョコペンのメッセージには、「Happy Birthday おねえちゃん」と書いたハズなのですがなぜか……
……続くのです!
貴音なのです。次回はおねえちゃん視点でお送りするのです。




