貴音はおねえちゃんのお誕生日を祝うのです(貴音side)前編
――七月に入ったのです!
梅雨も明けてスッキリした天気なのです! 貴音はいきなり大変な目に遭ったのですが、今はスッキリした気分なのです!
期末テストの結果も、和おねえちゃんが家庭教師になって教えてくれたおかげで中間テストより順位が上がってスッキリしたのです! なので夏休み中ゲーム没収されずにすんだのです。
そして何より、貴音にはもっとうれしいイベントが待っているのです!
それは……おねえちゃんのお誕生日なのです!!
貴音は今までパパと、お星さまになったママのお誕生日しかお祝いしたことがないのです。でも今年から初めて、自分の「きょうだい」のお誕生日をお祝いすることができるのです! 貴音はうれしいのです!
おねえちゃんは十九歳になるのです。二十歳の一歩手前なのです!
三十歳前後は「アラサー」というのです。四十歳前後は「アラフォー」というのです。二十は英語でトゥエンティーだと学校で教わったのです。なのでおねえちゃんは「アラトゥエ」なのです!
ちなみに貴音は十二歳なので「アラテン」、お隣さんの子どもは一歳なので「アラゼロ」なのです!
貴音はおねえちゃんのために、お誕生日プレゼントを用意したのです。実はこの前、おねえちゃんに「お誕生日プレゼントは何がいいのです?」と聞いたら「貴音ちゃんが『何でも言うことを聞いてくれる券』がいい」と言われたのです。
――却下したのです!
あのヘンタイおっぱいおねえちゃんなのです! 絶対にえっちいことを要求するに決まっているのです。その手には乗車拒否なのです!
なのでおねえちゃんには内緒で買ってきたのです。きっと喜ぶのです♥
※※※※※※※
「貴音ちゃーん! じゃあこれ、よろしくね」
「はいなのです」
夕方になったのです。ママさんが夕ご飯の支度をしているので、貴音はママさんのお手伝いをしているのです。
実はおねえちゃんのお誕生日は過ぎてしまったのです。その日はアルバイトだったので夕ご飯を家族と一緒にとることが出来なかったのです。でもバイト先のお姉さんたちがサプライズでケーキを買ってお祝いしてくれたのです!
今日は土曜日、改めて家族でお祝いするのです! 今は和おねえちゃんがおねえちゃんを遊びに連れ出しているのです。その間にママさんと貴音でお祝いの準備をしているのです。
ただ……ひとつ困ったことがあるのです。
ママさんが、お誕生日ケーキはお店で買わず家で作るというのです。もちろん料理も手作りなのです。
貴音は……料理ができないのです!
コーヒー淹れるのは得意なのです。でも料理は全然ダメで、小学校の家庭科でも成績は「がんばりましょう」だったのです……がんばった結果がこれなのです!
なので料理は全てママさんが作っているのです。貴音に出番はないのです。
――ところがなのです!
ママさんは貴音にもちゃんとお仕事を与えてくれたのです! それは……ケーキの飾りつけなのです。
ママさんがあらかじめケーキのスポンジを焼いて、全体に生クリームを塗るところまでやってくれたのです。貴音はその上に好きなフルーツを乗せてチョコペンで文字を描けばいいだけなのです! 簡単なのです!
デザインは貴音に任されたのです。貴音はあるアイデアがあるのです! 今日の主役はおねえちゃん! なので貴音はおねえちゃんらしいケーキを作るのです!
メインのフルーツは「桃」、貴音の住む町では桃の生産が盛んなのです。基本的に桃はお店で買わずに、親戚やご近所さんからタダでもらうのです。この日もご近所さんから大きな桃を頂いたのです。
まずは桃を半分に切るのです。
次に種がある部分を下にして二つ並べるのです。
その上にラズベリーをそれぞれひとつずつ乗せると……
ジャーン! 「おっぱいケーキ」の完成なのです♥
……冗談なのです。
これはパパやママさんも食べるのです。そんなトッピングをしたら貴音までヘンタイさんになってしまうのです。
すでに桃はママさんがキレイにカットしたのです。他にもラズベリーやブルーベリー、そして……ほぉおおおおっ!?
――シャインマスカットがあるのですぅううううっ!
この時期なかなかお目にかかれないのです! きっとこれはハウス物だから高級品なのです! さすがにこれはご近所さんからおすそ分け……というのはムリなのです。ママさん(あるいはパパ)……フンパツしたのです!
「ごくり」
貴音は責任重大な仕事を任されたのです! おねえちゃんのため、みんなのためにキレイに飾らなければいけないのです。
なのでこの大量のフルーツ……まずは貴音がどのような「味」か責任もって確認する必要があるのです♥
そもそもホールケーキのトッピングに桃一個丸ごと……は多すぎるのです! 貴音が一切れ「味見」したところでケーキの見た目に違いはないのです……こっこれは言い訳ではないのです!
貴音はダイニングテーブルの上で作業中なのです。ママさんはキッチンで料理を作っているので貴音を見ていないのです……。
「ぱくっ」
――ふっ!
――ふわっ!
――ふわわわわぁああああっ! おっ、おいふぃいのですぅううううっ♥
とっても柔らかいのです! そしてとっても甘いのですぅううううっ♥
貴音の住む町の人は「硬い桃」が好きでそればかり食べている……と前にテレビで言っていたのです。
確かに硬い桃が好きな人もいるのです。でも本当は柔らかい桃だって大好きなのです……テレビの情報操作なのです!
これはおそらく……樹に残されたまま完熟してしまい出荷できなくなった桃なのです! だから甘くて……おいふぃいのですぅううううっ!
味見も完了したので作業に戻るのです! 貴音は良い子なのです! 味見はこれでおしまいなのです! でも……
ママさんがカットした桃は偶数なのです。一切れだけ「味見」して奇数で残ってしまったら何か不自然なのです。
「ごくり」
でっでもっ! 味見は終わったのです! 味見を二回もしたらダメなのです!
――!?
こっ、これは「試食」なのです! 味見とは違うのです!
だから……オッケーなのです♥
「ぱくっ」
――ほわわわわぁああああっ! おっ、おいふぃいのですぅううううっ♥
口の中でとろけるような食感なのです! これは味見のときに気づかなかったことなのです! だっ、だから「試食」して正解だったのですぅううううっ!
でっでは試食も完了したので作業に戻るのです! 貴音は良い子なのです! 試食はこれでおしまいなのです!
貴音は桃(三切れ目)をつかんで乗せようとしたのです。すると……
「あっ!」
桃が真ん中あたりでちぎれてしまったのです! ママさん! こんな柔らかい桃を薄く切りすぎなのです! こんなちぎれてしまった桃をケーキに乗せたらおねえちゃんに失礼なのです。
なので……これは責任もって貴音が「処分」するのです♥
「ぱくっ」
――ふむむむむぅううううっ! おっ、おいふぃいのですぅううううっ♥
たっ貴音はこの作業……責任もってやり遂げるのです♥♥♥
貴音なのです。次回はみんなが思った通りのオチになるのです!




