貴音はおねえちゃんの「まかない」を食べるのです(貴音side)
「は~い今日はここまで~! 二人とも、お疲れさ~ん」
――つっ……疲れたのです!
和おねえちゃんの「夜の個人授業」がやっと終わったのです! 貴音はひたすら数学の問題集を解いていたのです。
和おねえちゃんは、志麻おねえちゃんの家庭教師をしているついでに貴音の勉強も見てくれたのです。なので貴音は問題集を解いて、わからなかったり間違えたところを教えてもらっていたのです。
普段の和おねえちゃんは目がとてもえっちいのです。ウチのヘンタイおねえちゃんと同じ目をしているのです。
でも勉強を教えている和おねえちゃんは目が真剣だったのです。完全に先生の目だったのです。
「えぇー、貴音ちゃんヌイッチ持ってんだぁ、いいなー」
「でも貴音の家にはWllUがないからスブラトーソができないのです」
「そうなんだぁ……あっでも来月には2が出るからヌイッチでもできるじゃん」
授業の後、志麻おねえちゃんとはゲームの話で盛り上がったのです。
「二人とも~お腹空いたでしょ? ご飯にしましょ~」
すると和おねえちゃんからご飯に誘われたのです。そういえば貴音はお腹が空いてきたのですが……
「えっ、もしかしておねえちゃんのいるカフェなのですか?」
「そうよ~」
「あ、あの……貴音は現金の持ち合わせがあまりないのです」
パパからもらったお金はタクシー代でほぼ使ってしまったのです。
「大丈夫よ~まかないだから」
「まかない……何なのです?」
貴音たち三人は志麻おねえちゃんの部屋からカフェに移動したのです。カフェにはおそろいのジャージを着たスタッフさんもいたのです。
それにしてもまかないとは……初めて聞く言葉なのです。
「スタッフの食事のことよ~、お金はかからないから心配しないで~あっ、紹介するね~私の専属シェフ♥」
「誰がオマエの専属シェフだ!」
現れたのはおねえちゃんだったのです。
「貴音ちゃん! アンタ本当はスタッフじゃないからこれは食べちゃダメなんだけどね……オーナーさん、つまりそこにいる志麻ちゃんのお母さんが特別にOKしてくれたからね! 後でお礼言っときなよ」
「うぅ……面目ないのです」
何と志麻おねえちゃんのお母さんがここの一番偉い人だったのです! 貴音も志麻おねえちゃんの部屋がここにある時点で気づけばよかったのです。
テーブルの上にはレタスチャーハンが並べられていたのです。でも普通のチャーハンと何か違うのです。
「あぁこれね!? サバの炒飯だって!」
志麻おねえちゃんが教えてくれたのです……えっ、サバ?
食べてみたのです。
ほわわわわぁ~! おっ、おいしいのですぅううううっ♥
「おねえちゃん! サバのチャーハン、とってもおいしいのです!」
久しぶりにおねえちゃんの手料理を食べたのです♥ でも……何でお肉じゃなくてサバなのですか?
「塩サバ定食が全然売れなくてねー、ついでにサラダ用のレタスも余ったから作ってみたんですよ」
おねえちゃんがスタッフさんに説明していたのです。そして……
「あっ、そうだ! そういや和に相談があるんだけどさ……」
「な~に? あらたまって」
おねえちゃんは和おねえちゃんに相談をしてきたのです。何を話しているのかわからなかったので、貴音は志麻おねえちゃんとゲームの話をしていたのです。ですがしばらくすると、
「それといっちゃ~ん! 貴音ちゃん、明日からどうするの~?」
二人の会話に貴音の名前が出てきたのです。
「そっ! そんなもん、もう二度と来ないように……」
ぐはぁっ! やっぱり貴音はおねえちゃんに嫌われていたのです! 貴音は出禁になってしまうのですぅううううっ!
ところが、
「ダメよぉ~」
「えっ?」
「貴音ちゃんは~、明日からココで『バイト』させるのよ~」
和おねえちゃんが意外なことを言い出したのです……えっ、バイト?
「おいおい、何てこと言い出すんだよ! 妹は中学生だからバイトできねーよ!」
そうなのです! 校則でも「アルバイトは禁止」なのです。
「大丈夫よぉ~、ちょっと体を売ってもらうだけの仕事よ~♥」
体を売るって……どういうことなのですか!? よく見ると和おねえちゃんの目はいつものえっちい目に戻っていたのです!
貴音は和おねえちゃんからとってもイケナイことをされてしまうのですか? 貴音は和おねえちゃんに聞いたのです。
「和おねえちゃん! もしかして貴音は腎臓を売るのですか!?」
「ぶーっ!」
和おねえちゃんは飲んでいたお水を吹いたのです。
「ケホッ、ケホッ……違うわよぉ~! あのね貴音ちゃ~ん、ちょっと耳貸して」
「えっ、耳はレンタルなのですか?」
「そうじゃなくてぇ~! あのね……」
と言って和おねえちゃんは貴音に耳打ちしたのです……えっ!? それだけでいいのですか!?
「その代わり~私は週二回ここへ家庭教師に来るけど~そのときはちゃんと教科書とノート持って来てね~」
「はいなのです!」
「私がいないときは~志麻お姉さんから勉強教えてもらいなさ~い! 志麻ちゃんも……いいよね~?」
「うん、貴音ちゃんと一緒にいると楽しい! ゲームの趣味も合いそうだし……」
「こ~ら! ちゃんと勉強も教えてやるのよ~」
「あははは!」
貴音は明日からここに来てもいいのです!
※※※※※※※
後日なのです。
貴音はカフェの隅っこの席で、志麻おねえちゃんと一緒にいるのです。志麻おねえちゃんとここで対戦ゲームをして遊んでいるのです……もっ、もちろん勉強も教わっているのです!
でも、ここで座っていると必ずといっていいほど……
「ねぇねぇお嬢ちゃん! 一緒に写真撮ってもいい?」
「まぁキレイな髪! ねねっ、ちょっと触らせてぇ~♥」
「あーんもうカワイイ! 癒されるわぁ♥」
ジムにいたお姉さんたちから声をかけられ、一緒に写真を撮られたり頭をなでられたりするのです。
「あっ、どうも……なのです……にこにこ」
本当は体じゅうベタベタ触られたりゲームが中断されるので、貴音は正直イラついているのです! でも和おねえちゃんから「何をされてもガマンして~」と言われているので、貴音は愛想笑いをするのです。
「お待たせしました、桃スムージー二つです」
おねえちゃんもなぜかイラついている感じなのです。が、おねえちゃんはお客さんや貴音に対して特に何も言ってこないのです。
貴音がここに座るようになってからなぜか、日に日にお客さんが増えている気がするのです! どうやらこれが貴音の「アルバイト」なのです。
でも中学生はアルバイトをしてはいけないのです。なので……
「ごちそうさまなのです! おねえちゃんの作るご飯はおいしいのです♥」
おねえちゃんの作る「まかない」がバイト代なのです♥
貴音は「まかない」を食べてから、志麻おねえちゃんと一緒に後片付けをするのです。これはお手伝いなのです。その間におねえちゃんはジムで体を鍛えて、その後貴音と一緒に帰るのです。でも……
〝ガタッ〟
――あれ!?
この日のおねえちゃんは、いつもより早めに席を立ったのです。
貴音なのです。貴音は腎臓を売らずに済んでホッとしたのです。




