私は妹に起こされたい(いづみside)
私には妹がいる……
……まるで天使のようにカワイイ。
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私の名前は『武川 いづみ』、近くの短大に通っている十八歳だ。
月曜日の朝七時。いつものように母が朝食を用意しているが、まだ私は自分の部屋で寝ている。この日は午前中の講義が無いので、わざわざこの時間に起きなくてもいい。ラップをかけて食卓に置いてくれれば後で食べるのだが……
――家には、それを許さない者がいる。
「こんこん……入るのです」
――きたぁああああああああっ♥
部屋に入ってきたのは『尾白 貴音』、私の妹で私立中学校に通う十二歳だ。
……そして、とてもカワイイ!
苗字が違う? そう、私たちは親の再婚で知り合った「連れ子」同士……
てゆーか……
何で「こんこん」ってノックしないで口で言ってるのよぉおおおおっ!? 何なのそれ!? くっそカワイイじゃねぇかぁああああああああっ!
「おねえちゃん、朝なのです。貴音はおねえちゃんを起こしにきたのです」
くわぁああああああああっ! 妹が通う中学はお嬢様系で本人は上品な言葉遣いだと思っているみたいだけど、この子ったら必ず語尾に「~のです」って付けるのよーっ! もうっ何でなの!? 変だけどそれがまたくっそカワイイッ!
私はすでに目を覚ましている。起きようと思えば起きられるけど……あえて起きない! 寝たふりをしている! それはなぜか? 答えは……
お姉ちゃんは毎朝、このカワイイ妹との「寝起き攻防戦」を楽しみにしているんだよぉ! こういう「妹が起こしに来るシチュエーション」って、たいてい兄が萌えるのが相場でしょ? でもね、姉だってうれしいんだよ! だって……
私は……妹の「貴音」が大好きだからなんだよぉ!
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「おねえちゃん、起きるのです。起きるのです」
妹は布団の上から私を揺り起こそうとしている。だが私はその程度のことでは起きない。だってここで起きたら妹との「至福の時間」が終わっちゃうじゃん!
「仕方ないのです。次の作戦に移るのです」
きたぁああああああああっ! 次にこの子が行うのは「くすぐり」だ! 布団を少しめくり上げ、私の足の裏をくすぐるつもりなのよ。
「おねえちゃん、貴音は今からおねえちゃんの『あし』をくすぐるのです」
ふっふっふ、予告までしちゃってカワイイ子……だが考えが甘ーい!!
私は昔から剣道をやっている……しかも有段者だ! 普段から練習ですり足とかやっているし、心身ともに鍛え上げている。妹のくすぐり攻撃などに屈するワケがない……って、あれ?
いつもは足が見えるくらいの所までしか布団をめくり上げないんだけど……おかしい、何で今朝は腰の所までめくり上げたんだろう?
私は寝たふりしているので目をつぶっている。妹の様子がわからない……この子はいったい何をするつもりなの?
次の瞬間……
「おねえちゃん、覚悟するのです。こちょこちょこちょ……」
――ひっ!?
――ふひっ!
――ふひゃひゃひゃひゃ!
ちっちちちちょっとそれ反則だって!! やっやめれぇええええええええっ!?
こっ、この子……
――私の太ももの内側をくすぐり出したぁああああああああっ!
私は声を押し殺して耐えているが……いかん! 時々身体がピクッと反応してしまう! 精神集中精神集中!
ていうか自分で「こちょこちょ」とか言うなぁああああっ! かかっ、かわい過ぎて思わず何か吐きそうになったわーっ! ぶはぁああああっ!!
――朝から幸せ過ぎるぞ妹よ!
くすぐり攻撃が終わった。はぁ~、まさか太ももに来るとは……
「なかなかしぶといのです。場所を変えるのです」
えっ、何? 場所を変えるって……ひっ!
今度は妹が、私のパジャマの上着の中に直接手を入れてきた。えっ、まさか!?
「こちょこちょこちょ……」
――!?
――わき腹をくすぐってきたぁああああああああっ!!
うひゃひゃひゃっ! こっこれはダメなヤツだ……太ももの比じゃない! しかも妹のカワイイ手が直接私の肌に……うわぁああああっ! これは地獄だぁああああああああっでも天国だぁああああああああっ!
――はぁ、はぁ、はぁ……はぁーぁ!
何とか妹のくすぐり攻撃を耐えきった……でも今日一日分の体力を使い果たしたかも? こっちも限界に近いのでそろそろ起きたいところだがしかーし! やっぱもう少し妹とスキンシップを楽しみたーい! 妹よ、もっと来ーいっ!!
「おねえちゃん、そろそろ最終兵器を投入するのです」
そう言うと妹は私の上に覆いかぶさってきた。えっ、何よ最終兵器って? 目をつぶっているが、私の体に妹の体重がかかっているのはわかる。
あぁ~っ!! このままガバッと妹を布団の中に引きずり込みたーい! そして布団の中で妹を「抱き枕」にしてあと二~三時間くらい一緒に寝ていたーい!
「おねえちゃん……覚悟なのです♥」
突然妹の囁き声が私の耳元で聞こえてきた。その瞬間私の全身にザワザワっとした感覚が……いゃああああああああっ! もしかしてこの子、めっちゃ至近距離にいるの!? これってASMRじゃん!!
私は今、横向きの状態で寝ている……いや寝たふりをしているが、ここで私が首を横に向けたら妹とチューできんじゃね?
うわぁああああああああっ! チューしたいけど今起きたら妹が「最終兵器」を発動できなくて泣いちゃうよねぇ~!? とりあえずこの子が何をしたいのかだけでも見極めておこう。
妹の顔がさらに近づいてきたようだ。呼吸と体温を感じるようになってさらにザワザワっとした感覚が全身を覆う。そして妹の吐息と温もりは私の耳の近くでロックオン……えっ、何? 耳元で「わっ!」とか大声出すのか? いや妹よ、それは鼓膜が破れるからやめなさいっ!
だが妹の「最終兵器」は、私の想像を遥かに超えるモノだった。
〝ふっ……〟
――耳にそっと息を吹きかけてきたぁああああああああっ!
ちょちょちょちょい待て妹よっ! オマエはどこでそんな高度なテクを覚えたんだよ!? 妹の予想外の行動に私は全身の力がフニャ~っと抜けてしまった。
それでも妹は攻撃の手を緩めない。さらに高度なテクを投入してきたのだ。
〝かぷっ♥〟
――今度は耳たぶを甘噛みしてきたぁああああああああっ……あんっ♥
もっももももぉらめぇ……降参らぁ~!
朝からこれはキツイわ! こういうのは夜のベッドでやるもんだぞ妹よ。
「うわぁ!」
さすがに耐えきれなくなった私は目を開けて「起きたよ」アピールをした。そしてそっと妹の方を向くと……
「おねえちゃん……おはようなのです」
目の前には、私に向かって天使のように微笑みかける小悪魔さん……とってもカワイイ妹・貴音ちゃんの顔が迫っていた。
「あっ……あぁおはよう」
くっそぉー! このままチューしてぇー!!
貴音なのです。次回も読んでほしいのです。