決断
奇跡は待っていても起こらない。
けれど、起こる奇跡を和季は知っている。
何度もこの目で見てきた。
それも、もうすぐ目にすることは無くなる。異動してしまえば、生き返りと接することはなくなる。
「僕は白瀬さんのいない間、ちゃんと頑張れていたんでしょうか?」
いつもの病室で、ベッドの上の白瀬に話し掛ける。
「白瀬さんのいない生き返り課はさみしかったです。それも、もうお別れですが。僕、明日で異動なんです」
今まで生き返り課で和季がしてきたことを無駄だとは思わない。ただ、それを白瀬に見ていてもらえなかったことが悲しかった。
白瀬がこんな状態になって無気力になっていた時期もあった。それでも頑張ろうと思えたのは、白瀬がいない間は自分が頑張ろうと思えたからだ。あんな自分は、見せられないと思ったからだ。
和季が立ち直らないまま事務的に仕事をしていたら、何かに後悔したまま死に還った生き返りもいたかもしれない。自分でも何かの役に立っていたと信じたい。
辛いことも多かったが、よかったこともきっと沢山あった。
和季のやってきたことは、自己満足でしかないのかもしれなかった。それでも、彼女が認めてくれるような自分でいたかった。
和季は立ち直ったはずだった。
待ち続けようとした。
だが、いつの間にか和季の身体の中には何かがどんどん溜まっていった。
「僕は、弱い人間ですね」
白瀬に向かって微笑んでみせる。
異動が決まったとき、和季は気付いてしまった。
これ以上、生き返りを見ていられない。
それは、和季の心の奥底に、ずっと潜んでいた感情だった。
目覚めない白瀬を待ちながら生き返りになっては死に還っていく人々を見送るのは、本当はずっと苦痛だった。
異動の辞令が下ったとき、和季は安堵した。もう彼らを見続けなくてもいいのだと、安堵した。
そして、決めてしまった。




