手伝えることはなさそうです
高岡と目を合わせないまま、言葉につかえたりしながら最低限の説明をする。高岡は、もう少しはっきり話してくれないからしらと興味なさげに言いながら一応聞いてくれていた。
「こちらが生き返り証です」
「へえ、これがそうなの」
生き返り証はすぐに受け取ってくれた。
「ええと、それとですね。何かお手伝い出来ることはありませんか? 小さなことでも何かありましたら、おっしゃってください」
もしも三日間一緒にいることなんかになったら、窮屈で息が詰まりそうだと思いながらも、白瀬がいつもしていた質問をする。
高岡はため息を吐きながら首を左右に振る。
「何それ? じゃあ、会社の片付けとか頼めるの? 色々面倒なことあるんだけど」
「あの、それは……」
すぐに答えられない。
「冗談。やってもらうことなんてないから。用が済んだなら、帰っていいかしら? 本当に忙しいんだから。こんなところに足を運ばせておいて、用件ってそれだけなの? 死んだ後のことが自分で処理できるのはいいんだけどさ。そんなの他人に押しつけてしまいたかったわ。死んでまで仕事のこと考えるなんて思ってもいなかった。生き返ってもいいことなんて無いわね」
マシンガンのように高岡はまくし立てる。息継ぎをするように、ため息を吐く。
ここまで来てもらわなくても、ちゃんと和季の方から出向いたのに、と口を挟む暇も無い。最も、そんなことを言ったら、ものすごい勢いで言い返されそうだ。考えただけで怖い。
「これじゃ自由に行きたいところにも行けないじゃない。全く、困ったもんだわ。三日なんて短いったら。ほら、あんたも他も仕事あるんでしょ。こんなところで油売ってていいの? あんたに手伝ってもらえることなんて何も無いの。他に伝えることある?」
「いえ」
もう無いと思います、と弱気な言葉を続けようとしてしまい慌てて飲み込む。
「だったら、もう帰るわ。ああ、時間の無駄だったわ」
「え、ええと、お時間を取らせて申し訳ありません」
なんとかそれだけ言う。
「あ、あの、明日も会って頂かなくてはならないんですが、どうしたらいいでしょうか?」
和季の問い掛けに、高岡が深いため息を吐く。
「どうしたらって、私に聞くことじゃないでしょ。あんたの仕事じゃないの? もういいわ。じゃあ、私の家に来てもらってもいい? もうこんな所まで来たくないから」
「……わかりました」
高岡の言うとおり、今の和季の言葉は失言だった。どうしたらいいでしょうか、なんて聞かれても困るに決まっている。出来ることなら時間を巻き戻して取り消したいが、そんなことは不可能だ。
高岡は、来て欲しい時間と場所だけ伝えるとさっさと帰って行った。
怒濤のように話す人は苦手だ。どこで口を挟んでいいのかわからない。
結局、白瀬や松下に助けを求めることはなかった。というよりも、そんな隙すら無かったという方が正しい。




