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装甲戦士・ロロアちゃん   作者: 地底人のネコ
6/11

ロロアちゃん、戦場に行く

祝日。

ロロアは友達と『人間と変わらない休日』を送っていた。


しかしテリンコをはじめとする特殊部隊の作戦が、彼女がロボットである現実を無情にも突きつける・・。

彼女の決意に、女神メルヴィアは微笑むのか。

「さぁ、ロロア!」

リクトがフリスビーを投げた。

私は右手を速やかにバスターに変えると、片目を閉じて狙いを定める。

『チュン!』と言う音と反動がして、フリスビーの右をかすめた。

「おしい!!」

「くううう!もう一回!」



今日は祝日なのでメリルとリクト、そしてユミルと近くの森へハイキングに来ていた。

シートを草原に敷いて小さなテントを置き。


メリルがランチボックスを持ってきて、ユミルと紅茶を呑みながら私達の特訓を見ている。

リクトの夢は私を最強のロボにする事らしい。

「いくぞ!ロロア!」

リクトがフリスビーを投げる。

『チュン!』と言う音がしてまた外してしまった。


「ロロアちゃん、もう少し左に撃ってみたらー?」

ユミルが言った。

「そっか!やってみるよ!リクト、お願い!」

「あいよ!」

私は右手を元に戻すと、深呼吸した。


「はい!!」

2枚のフリスビーが宙を待った。

右手を瞬時に変えてバスターを構える。

いつもより、少しだけ左にずらして撃った。


2回の閃光が瞬き、フリスビーに当たると木っ端微塵に吹き飛んだ。

「やったぁ!!」

「すごい!ロロア!!」

「やるじゃん!」

ユミルとメリルが拍手する。


私はリクトを見ながら鼻をこすり、バスターから出る煙を得意気に吹き消した。

「私にかかればざっとこんなもんよ!」

「いや、外しまくってたじゃんっ!」


「まぁ、二人とも!ティータイムにしよう!」

「「はーい!!」」


「はいはい、座って座って!」

ユミルがランチボックスからティーカップを出して紅茶を注ぐ。

メリルは、ふわふわのチーズケーキをお皿に切り分けてくれた。

白い小さなテントには小さなスピーカーがあって、『川のせせらぎと森の音楽会』が流れていた。


「わぁー!美味しそう!」

「喉乾いた!!」

リクトが冷たい紅茶を喉を鳴らしながら飲んだ。

「ふぅ!おかわり!」

ユミルはケトルを調節すると温かい紅茶を出す。

リクトは今度はゆっくりと飲んだ。

「はぁ・・、おかわり!」

ユミルはケトルを調節すると熱い紅茶を出した。

リクトは紅茶の香りを楽しむ。

「・・・すごく、良い香り。」



私も紅茶をもらい、胸いっぱいに紅茶をかいだ。

「本当に良い香りね!」

「ミネルヴァ地方でとれる紅茶よ!チーズケーキは牧場で買ってきたの!」

「そうなんだ!」


『ミネルヴ』と言うらしく、新緑に萌える森の中で年季のはいったバイオリンを聴くような新鮮な中に芳醇な香りが鼻をくすぐった。

一口呑み、チーズケーキをフォークで切って少しだけ食べ。

砂糖を入れていないシンプルな紅茶でやさしく流し込む。

紅茶の渋みの中で、洗練されたチーズケーキのクリーミーな味わいが私を虜にした。

「おいしい・・!おいしいよ、メリルちゃん!ユミルちゃん!」

私は両手を顔にそえながら、うっとりした。

「ご飯が食べれるようになって本当に良かったね!ロロア!」

「給食の時、いつも私達を見ていたもんね!」

メリルとユミルが笑顔で言った。


食は人を良くするとは古の時代から言われてるけど、私は本当にそう思った。



風が森を吹き抜け、木々が深呼吸するように大きく揺れた。

太陽が薄い雲を見え隠れして、吹き抜けた風が草原を揺らし、波のように光と影のコントラストを奏でる。


一匹のコガネムシがキラリと光り、私の腹にとまった。

太ももにポトリと落ちたので、私はコガネムシを捕まえると、緑の光沢のある体を見る。

触覚を拡げて、私を分析しているようだ。

やがて手甲の先端まで来たら羽を拡げて飛んでしまった。



「あはははは!」

リクトとメリルがボールで遊ぶ。

私の体は機械だけど、コガネムシや木々、リクトやメリルだって変わらない。

同じ命なんだと私は感じた。




※※※※※※※

ワープしたパトカーが地上に降り行く。

カイン博士が後部座席に乗り、テリンコが運転している。

ガムを差し出すとテリンコは左手をふった(いらないと言う意味)。

テリンコは白い短髪に青いピロトカを斜めにかぶり、ぶつぶつ言いながら親指の爪を噛んでいた。


カイン博士は失った右の髪の毛を掻いている。

カイン博士は説得の末

『最後はロロアに決めさせてあげて下さい』と消え入るように言った。

パトカーは森を抜けメルヴィアの神殿をぬける。

すると、ひらけた草原に白いテントを見つけた。

「ロロアちゃん。いましたね。」

俺はカイン博士に言った。



パトカーを降りると、ボール遊びをしていた2人の男女が

「はわわわわ!」と言う顔をした。


「すいません!!ロロアにバスターを撃たせていたのは僕です!!」

「いえ!私もアドバイスしていました!」

「バスター??」


「い、いつも、ロロアがお世話になって。ありがとう」

カイン博士が慌てて2人に言った。


「私に・・何かご用ですか?」

風が強く吹き抜け、赤みのかかるブロンドの髪がなびいた。

目は青く

青緑のボディがあるものの、なんらまわりの子らと変わらない背の低い女の子が立っていた。

胸のライフコアがくすんだ発光をしている・・きっと俺らを警戒しているのだろう。

ロロアは文字通り胸中を探られないように、咄嗟に胸のライフコアを隠した。

「ロロアちゃん、大切なお話があります。いいですね?」

テリンコが言い、せっかくなので先ほど見かけたメルヴィアの神殿で話す事にした。



「・・なんとなく、来る予想はできていました。あれから、毎日夢を見るんです。ロボット達の悲鳴が聞こえるんです。」

ロロアちゃんに一連の事件と作戦の話をすると彼女はポツリと、そんな事を話した。

女神メルヴィアの神殿の横にある大理石のベンチ。

そこにニュートリノ発電所内部の地図と止めるバルブやパワーマンの写真をひろげている。


「ロロアちゃん、これは大変危険な作戦よ。あなたに全ての責任を押し付ける事はしない。でも、軍が本格的に兵を動員したら。ニュートリノ発電所は跡形もなく消え去り、民間人も犠牲になるでしょう。」

「今、軍隊は世論から実績を得るためにフォレストマン討伐に躍起になっている。『今やっている事』をそのままニュートリノ発電所でもする事だろう。」

俺は『極秘資料』と書かれたメディアには出ない映像をロロアに見せた。


爆撃された森。

火炎放射機をもった兵士や軍の腕章をつけたロボット達が、施設をまるごと焼いている。

引きずり出された人型の何かを剣で叩き、

明らかに略奪のような事をしている映像もあった。

民間企業の林業組合自体を『ロボット兵団』として扱っているとの情報もある。

きっとその映像だろう。


ロロアは神妙な顔をして映像を見ながら、カイン博士に寄り添っていた。

空は雲行きが悪くなり、遠くの山に雷が落ちた。

急に天気が変わるのは、フォレストマンが未だにガイヤコアを持って戦っているのだろう。


「ロロア、別に今日決めなくてもいいんだぞ?ロロアがやりたくないと言うなら小型のロボットをマット博士にお願いすればいいだけで・・」

「私、やります!」


「なっ!ロロア!?」

「ロロアちゃん!」

「ロロアちゃん、今!?」


「私、やります!私にはロロアバスターもあるし、パパからもらった体もある!私が暴走を止めて見せる!!」

ロロアは強い決意で言った。

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