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装甲戦士・ロロアちゃん   作者: 地底人のネコ
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悩めるロロア

クラスメイトと自分との違い、人間とロボットの違いに悩むロロアちゃん。


再調整されてない体に苦悩する・・。


「ロロアちゃん、教科書持った?」

「持ったよ!」

「Aタンクは?」

「持ったよ!」

私はママに聞こえるように天井に向かって言った。

リュックに教科書が内蔵された本と、側面にAタンクをしまう。


テーブルユニットが格納され、パパは食パンを咥えながら忙しそうに歩いている。

パパは今日、学会で発表があるらしい。


「パパ!ネクタイが曲がってるー!」

「おぉ!ありがとう」

「ゴメンね、できないや!」

「あらら。」


朝がこんなにバタバタしているとは思わなかった。

いつも病院のベッドで勉強していた私にとって、朝のこの時間がものすごく早く感じる。

「行ってきまーす!」

「行ってらっしゃい!ロロア!」

「行ってらっしゃい! 」


廊下のエアーカーテンを抜けると、玄関が開いて外に出た。

朝の日射し。

パパはガレージからピカピカの車を出すと、颯爽と空を飛び。

天空に広がる車列に並んだ。


そして一斉にワープする。


私は手を降って見届けながら、メリルを待った。

「お待たせ!」

「全然待ってないよ!」


メリルは家から2ブロック北に住んでいるらしい。

居住区には他にも沢山のクラスメイトが住んでいて、 学校に着くまでに色々な子達と会う。

「今日は帰ったら?」

「VRするんでしょ?メリル。」

「あたり!」

メリルはクルクル回りながら言った。

どうやらフィギュアスケートをVRでやっているらしく、目の前で回ってみせた。


メリルは、キラキラした二重のスカートに水色のニーハイソックスを履いている。

少し羨ましいのもあるけど、こうして並んで歩けるだけで私は嬉しかった。

今は体の間接のパーツが軋むけど、長く歩けば膝の間接が滑らかになるらしい。



そして

「うおーい!ボールパスしろよぉー!!」

「おう!」

念願の体育の時間がやってきた!

実は言うと私は、時間割りを見た時から体育の授業があると知ってワクワクしていた。


「男子って、体育好きだよねぇ。」

メリルがため息をついて言う。

「私も混ざりたい!!」

「えっ!?ロロアちゃん?」

私は我慢できず、準備運動もそこそこに男子のいるグラウンドに走り出した!

「お!ロロアが来るぜ!?」

「転入生か!丁度いいや!ボール蹴ってよ!」

「うん!!」

そして私は、丁度転がってきたサッカーボールを思い切り蹴った。

筈だった。

「ロロアちゃんパス!・・のわー!!」

私の蹴ったボールは赤い光をカッと光らせたと思ったら、遠くにあるフェンスに飛び散り。

グラウンドの芝生が削れて、爆発を起こした!


「かっかはぁ!!」

リクトが草だらけになりながら呆然として、私はあまりの張り切りに赤面した。

「えっ!今の何!?ボールは!?」

メリルが駆け寄り、私は遠くのフェンスに刺さったゴムの残骸を指差した。


「ハリキって蹴ったら、ボールを吹き飛ばしちゃった!」

「えぇえっ!!!」

結局、その日私はキーパーをして。

『ゼロ・ストロング』と名付けた、男子を右手に持ったまま敵のゴールに飛ばす技をする事になった。


危うく、男子の間であだ名が『ストロング』になる所だったけど。

メリルが必死になって否定してくれて、なんとか無くなった。

どうやら普通の女の子は、こんな力を出せないらしい・・。


あと。

「ロロアちゃーん!円を書いてみせてよ!」

算数の授業で黒板に円を描いたら、その円の丸みに教室が沸いた。

普通の女の子は、フリーハンドで綺麗な円を書けないらしい・・。


普通の女の子。

普通の人間ってなんだろう?


私は給食中もずっと考えていた。

机を向かい合わせにしているので、私の向かいにユミルが座り。

長い黒髪を耳にかけてカーシャ(分子結合したスープ粥)を掬って食べていた。

時より私をチラッと見ると照れたように小さく口角をあげ、コッペパンを一口サイズに小さくむしるとカーシャに入れる。

「こうすると美味しいんだよー?」

ユミルはニコッと笑ってそう言うと、カーシャを浸したパンを口にする。


メリルはと言うと、休みの子のミルクを貰うために皆でジャンケンしていた。

ジャンケンしてまで取ると言う事は、ミルクも美味しいのだろう。

美味しい。

美味しいってなんだろう?

匂いだって私には分からない。

私は赤みがかかったブロンドの髪を撫で、眉毛を撫でた。

青い瞳。

首には、留め具が付いていてその下からシリコンゴムがドライスーツのように付いている。

肩、腕と手甲、胸や胴体、腰、足に装甲板が付いていて、胸の中心には赤いライフコアが付いている。

私は人と違う。

廊下ですれ違う人が私をチラッと見ている気がする。

パパにこれ以上ワガママは言えないけど、私も皆みたいに『味』を楽しみ、普通にサッカーがしたい・・。



そして、放課後に私とユミルと3人でメリルの家で遊ぶ事になった。

メリルの家は白とピンクのお城みたいな家で、部屋には宝石箱や天蓋付きベッドがあった。

どれもキラキラしていて、私の生命維持装置の部屋と大違いだ・・。

この体になるまで、私はありとあらゆる延命装置を付けたのだ・・。



宝石箱の中を見てみたいけど、サッカーの事があって気が引けた。

新しい体になった時、家でガラスのグラスを持つリハビリをしたけど・・自分の力を今では信用できない。


「ロロアちゃん!ロロアちゃん!」

「なにー?」

「目をつむって?」

「ふふふっ!」

宝箱を開けた音がして、メリルとユミルが後ろに回った感覚がした。


そして、私の髪を撫でる。


「じゃあ、どうぞ!」

「あっ!」

「ポニーテールにしてみたよ!ロロアちゃん似合うかなって!」

私は驚きながら鏡を見た。

そこには宝石がちりばめられたヘアゴムでポニーテールにした私がいた。


「わー!ありがとう!!」

「新入生が女の子って聞いて、作ってあげようって話をしてたの!」

「気に入って貰えて嬉しい!」


「うん!うん!!メリルもユミルも、ありがとう!私、大切にする!」

私はメリルとユミルに笑顔を見せた。


「ロロアちゃん、男子に変なあだ名つけられて落ち込んでたみたいだから良かったよ!」

と、ユミルが言った。


「え?あぁ!まぁ・・。へへへ!」

本当は、もっと壮大な悩みなんだけど・・なんだかちっぽけな感じがして笑った。

「ロロアちゃんは笑顔でなくっちゃ!」

ユミルがそう言って微笑んだ。






『次のニュースです。今日午後、労働組合員2名が搬送先の病院で死亡が確認されました。警察によると逃走した伐採ロボット1体をパーク内で射殺。残りの2体は複数の運搬用ロボットと共に加工場に立てこもっている模様です。警察は特殊部隊の派遣を要請し、フォレストパークを統括しているロボット、『フォレストマン』を任意で事情聴取するとの方針を固めています。』



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