ロロアの死 そして残骸
ロロアの残骸を拾う2人のロボット・・。
その最中、キグナス率いる巨大な軍事力が不気味にうねる・・。
「こぉれは・・・酷すぎる・・酷すぎるよぉ・・」
ニイさん(ZM-200)はあまりの惨さに絶句した。
「・・旦那も人が悪い。敵サンのケジメ付けるったって、いくらなんでもやり過ぎだ。長生きできねぇなありゃ。」
ミーさん(ZM-300)もあまりの惨さに顔をふせる。
顔を伏せた先にもかつてロロアだったものが転がり。
いよいよ二人は顔を見合わせた。
「「どうしよ??」」
とりあえず医務室にいるクマさんに事の経過を話した。
クマさんは暫くの間、ショックのあまり電源が落ち。
とりあえず残骸を医務室に運び出す話になった頃には、何も言わずにスクッと立ち上がり体の一部を部位ごとに淡々と置き始めた。
回収は困難を極めた。
思わずニイさんは捻り鉢巻(ZM-000※の遺品)をギュッとしめ、ミーさんはハッピの袖を×の字に捲って、たすき掛けに締めなおした。
ロロアの体は制御室いっぱいに散らばり、残虐非道なメカニロボですら通るのを躊躇う程だったと言う・・。
この『けじめ』と言う行為、人間に反旗をひるがえしたとは言え部下達の士気を大きく下げ、上司であるパワーマンの株を大きく落とす事に繋がってしまった。
いつしかブラックアイを筆頭とする『上様派』と、パワーマンを筆頭とする『武闘派』に別れ、皮肉にも井上ルートを境に分断して防衛する陣形をとってしまう。
パワーマンは左右バラバラに動く2頭の馬の手綱をなんとか持ち。
きたる『上様』の指示を首を長くして待っていた。
「これは何でぇ?」
「そりゃ、腕ですね。」
「これはなんでぇ?」
「それは踵をひねる時に使うジョイントボールですね。俺らの間で『タマ』と呼んでいます。」
「これはなんでぇ?」
「それは・・ヘッドギア、冠や王冠と呼ばれてる奴です」
「これはなんでぇ?」
「それは脛のパーツですね、具足と呼ばれてます。」
「詳しいんだなぁ、ニイさんは!」
「昔、アステロイド製造工場に居た事あるんすよ。」
「するってぇと、組み立ては?」
「できますよ。ロロアちゃんは・・無理でしょうけど。」
「なんだよ。」
「なんだよは、ないでしょう?こんなバラバラになっちまったら!」
「まぁまぁ。」
俺は、破壊された制御室の予備電源の光りを頼りにロロアちゃんを探した・・。
やたら重い右腕のパーツは2人がかりで持ち。
パーツを集めては医務室に運ぶ。
途中、見かねたレッドキラーも手伝ってくれた。
そして。
「あっ!!いた!!」
壁に食い込んだロロアちゃんをようやく見つけたのだった・・。
壁の裂け目から体の半身が出るその様は、天岩戸を彷彿とさせる。
顔は思いの他綺麗だったのが唯一の救いだった。
「・・・まるで寝ているみてぇだ。」
「・・・。」
暫くの沈黙。
「よし、運ぶぞ!ペッ!(ミーさんは、唾を手につけた。)・・ふぅ!」
「こっち、持ちますから。せーのっ!!」
「いきますよー!」
レッドキラーがバールでこじ開けながら、なんとか2人で引っ張りあげた。
『人の魂はいずしらず、ロロアはかくも軽いのか。』
腕を運んだ後だからか、引っ張り上げたらやたら軽く感じる。
二人は感情を殺してロロアを運んだ。
医務室に入ると並べ終えていたクマさんが待っていた。
ロロアを認めると、ハッと固唾をのみ。
「ロロア・・!!あぁ・・ロロア!!」
と、悲痛にぴょんぴょん跳ねた。
これで、ほぼ全てのパーツだ。
俺らは感情を必死になって殺しながらロロアちゃんを置いた。
レッドキラーは黙って帰ってしまった・・。
「ロロア・・!!私の最愛の愛娘!!!」
「ーーー・・!!」
それを聞いた瞬間ついに塞き止めていた感情が出てきて、ミーさん(ZM-300)はしゃがみこみ両手を合わせてナンマイダブと唱えながら、崩れ落ちた。
俺もロロアちゃんの前で頭を垂れて崩れる。
クマさんはヨロヨロしながら死出の門出のように、ボロボロになった冠をロロアちゃんにつけると頬にキスをした。
親子のような深い契りがある仲なのだろう・・俺はつくづく『これが戦なのか・・』と思った。
とりあえず、ミーさんが長持ち(長方形の長くて大きな箱)を持ってくると言う話になり。
俺は、ロロアちゃんの電解液や体液まみれの口を入念に拭いてあげると、Aタンクを染み込ませた脱脂綿を詰めてあげた。
クマさん曰く、ここまで破壊されているとバックアップ出来るか分からないらしく。
ロロアちゃんの親父さんが人間で、ロロアちゃんは娘でありロボットでもある為、急遽作戦に投入される事になった事をポツリポツリと語りだした。
生前ロロアちゃんは常々、この事件のニュースをテレビで観て心を痛めていて。
『人間やロボット達が助けを求めている!夢に見るの!』
と言っていたらしい・・。
どこまで優しい娘なんだロロアちゃんは・・。
「バックアップ出来たら、ロロアを普通の女の子にしてあげないと。」
クマさんが言った・・。
暫くの間。
「もってきやしたぜぇ!!」
沈黙をやぶり、ミーさんが長持ちをガラガラ押して持ってきた。
「ロロアちゃん良かったな!もうじき戦争がおわるってぇ話だぜ!?」
ミーさんはハァハァしながら言った。
「それは、どういう事です?」
クマさんが聞く。
「空軍の一派、ストリームマンが我々に味方する事が決まって、空中要塞『ホワイトスペクター』がこっちに向かってるって話だ!」
※※※※※※※※
「なに!?ホワイトスペクターがこっちに向かってるって!?」
「えぇ。待たせたわね。さらに追加の兵力5000が明日にでも到着するわ!これで特殊部隊は壊滅ね!」
「ふぅーー。最近、音沙汰がないから心配してたが、ちゃんと手をうってたんだな。」
キュラー(ホログラム)の吉報を聞いたパワーマンは、肩の荷が降りたように腰をかけた。
「大丈夫、私達はあなたを見捨てたりはしない!あと、悪い情報がある・・」
「なんだ?」
「軍神キグナスが向かってきている・・」
「なんだと!?あいつはバルバモンガに居るんじゃないのか!?」
「フォレストパークが壊滅して、軍がこちらに向かってきている!軍が欲しいのは民衆の支持!多分アルムシュアの戦いにメルヴィアの国民を参加させたいのよ。」
「なっ・・!!ぐぐ!!キグナスめっ!!」
第4次アルムシェアの戦い。
ちょうどその頃、地球の反対側の大陸バルバモンガでは。
地球を2分する軍同士の、200年にわたる戦いが行われていた。
アルム軍のある東側と、カルダ軍のある西軍。
この巨大な二大勢力は、もともとお互いの信仰している聖典の解釈の違いから戦争が始まり。
事の発端は、聖典の一節
『アルムが再び作られた子どもを放つ時、バルバモンガは新しい命を得る』の『アルムが再び作られた子』が、バルバモンガの先住民のアルムの民を指すのか。
それともバルバモンガを追われて空中都市を築いたカルダの民を指す言葉なのかで解釈が別れて対立していた。
そして、この世界規模の大戦をアルムシェア(アルムの息子達)の戦いと呼び。
200年経った現在も、聖なる大地バルバモンガを巡る戦いが行われ。
メルヴィアも一応はアルムの軍のいる連邦国に入っているものの軍事介入はしていなかった。
今もこうして会戦と休戦を繰り返しているのだが・・。
フォレストパークは壊滅したものの、フォレストマンを取り逃がす失敗。
ストリームマンの謀反により、軍上層部もいよいよ動き出したようだ。
アルム軍の軍神キグナスと、カルダ軍の将軍グロルダの一騎討ちは何度も繰り広げられ、引き分けを繰り返しているらしい・・。
キグナスはグロルダとの一騎討ちを終えると軍を息子達に任し、メルヴィアに艦隊と共に押し寄せているらしい。
「そ・の・キグナスがっ!ここにっ・・!!」
パワーマンの体がワナワナ震える。
「大丈夫よ、パワーマン。その為の強固な体じゃない!5000の兵力が集結したら一思いに特殊部隊を撃破。すぐさま転身して、兵力をまとめてストリームマンの到着に備えればいい。ホワイトスペクターのプラズマ砲があればキグナスの軍なんてあっと言う間よ。」
「なるほど・・こっちはこっちでテリンコと言う女が、ロロアの死体をかけた弔い合戦をしている。まずは、それをどうにかするか・・。」
※※※※※※※※
建物の奥から爆発音がして、メカニロボが走る音が聞こえた。
ミーさんは遠くを見ながら
「敵サンがロロアちゃんを返せ返せと叫んでるみてぇだ。最近激しいのは弔い合戦だからか。」
と言った。
「ロロアちゃんを返してやりましょう!ロロアちゃん!すぐに帰してやるからな!」
俺はロロアちゃんの頭を撫でると長持ちを閉めた。
ミーさんが長持ち棒を溝に通し二人で持てるようにする。
クマさんは長持ちの上に乗ると。
「お二人とも、よろしくお願いします。」
と言った。
また爆発音。
これは持ってたより近い。
「じゃあ担ぎますよ?」
「おうよ!」
「「せーの!!」」
「なーにやってんだバカチンがっ!!!」
持ち上げようとした矢先
体を埃だらけにしたブラックアイが扉を手動で開けて入ってきた。
ブラックアイは文字通り全身黒く。
袈裟とよばれる古の僧侶のような白い紋様が首から腹にかけてあり。
目は赤く、口の通風口も赤く喋るごとに点滅している。
「えっらい事になったぞ!!『ロロアを返せ』の怒号と一緒に人間達が攻めてきやがった!!いますぐ兵を!」
と、言った瞬間、ブラックアイの体がバチバチと砕けた!
破片や液体が顔に飛び散る。
ブラックアイは膝から崩れ落ちた瞬間に首が飛び、俺らの足下に転がった。
「ひゃあああ!」
思わずミーさんが飛び上がる。
飛び上がった瞬間に長持ちを落としてしまい、蓋が外れてロロアちゃんが飛び出した。
「私の名は、特殊部隊第7区・テリンコ!!ロロアを迎えに参上した!!手向かう奴は叩っ斬るぞ!!!」
そこには白い短髪をヤマアラシのように爆発させた女が居た。
鎧は幾度の攻撃を受けたのかボロボロで。
露出したブラの部分に『テリンコ』と書いてあった。
左手にストックを無理やり落としたスパークライフル。
右手に『井上隊』と書かれたサーベルを持っていた。
サーベルは電撃が入り、青い光を出しながら不気味な音を出して怪しく揺れる。
少しでも変な真似をしたら斬られちまいそうだ・・!
しかし、テリンコは発見した。
無惨にも転がるロロアちゃんだ。
「ロロアちゃん!!貴様ぁ!!」
「うわー!お助け!!」
テリンコがミーさんに斬りかかろうとしたので、ミーさんはとっさにクマさんを差し出した!
「ちょっ!うぉおい!テリンコさん!!やめて下さい!!彼らは味方です!!!」
「味方ぁ!?」
「私ですよ!テリンコさん!!ロロアのぬいぐるみのクマです!!ロロアの母です!!」
クマさんは体をバタバタさせると、ようやくテリンコは五月蝿かったサーベルの電撃をオフにした。
スパークライフルを肩に担ぎ、クマさんをマジマジと見る。
「テリンコさん!見つかりましたか!!早く出ましょう!!」
テリンコの胸についている電話が叫ぶ。
向こうでは守備隊と戦っているようだ。
「ロロアちゃんは出来る限り集めて長持ちに入れた。そちらで葬るなら、武装を解いて持ち帰らすよう味方に連絡する。いかがか?」
俺が恐る恐る言うと
テリンコは般若の形相でコクリと頷き、肩に担いだスパークライフルをそのまま後ろに撃った。
「ぎゃあ!!」
ステルス装備したブラックアイの頭を撃ち抜き、ステルス機能がなくなったブラックアイが大の字で倒れる。
その瞬間、廊下の角からコソコソと外骨格が触れあう音がした。
透明で見えないが沢山いるみたいだ。
「そ、そうと決まれば連絡っ!!」
ロロアちゃんを長持ちに戻したミーさんが、耳を押さえて連絡する。
テリンコはスパークライフルを棄てると。
サーベルに染み付いた潤滑液をサッと払い落として鞘にしまった。
ロロアちゃんが行かなくてもコイツが突っ込めば良かったんじゃないかとも一瞬思う。
「ご配慮ありがとう。有り難く頂戴する。」
テリンコは、原型の留めていない鎧を脱ぎ捨てると長持ちを持とうとした。
「いやいや無理ですぜ姉さん!!ロロアちゃん、やったら重くてあっしら二人で持とうとしたくらいなんですから!」
テリンコはイラッとしたように、長持ちの棒を引き抜くと、むんずと担いで背中に背負った。
「だ・か・ら!無理ですって」
「うるさい!!私の立てた作戦だ!私はロロアちゃんを奪回する使命がある!!」
テリンコは何度か転びそうになりながら牛歩のようにノシノシと進んだ。
その横に歩いていたクマさんが、こちらを見て。
「ありがとうございました。お世話になりました。」
と、深々とお辞儀をした。
ミーさんも俺も深々とお辞儀をする。
それは見えなくなるまで続いた・・。
上様直属の部隊。
戦闘用に作られた為、兵士や兵隊サンと呼ばれる。
ホワイトデビル
(一個師団を任された白い外骨格の兵士。知能もあり。冷酷かつ容赦はなく。好戦的。)
ブラックアイ
(一個連隊を任された黒い外骨格の兵士。黒い体に袈裟とよばれる白い模様がある。ステルス機能もあり、戦闘能力も高いので単体でも戦う)
レッドキラー
(一個中隊を束ねる赤い外骨格の兵士。赤に金色のラインが入っている。白兵戦にも長けるが、重機関銃を携行する。)
グリーンキラー
(事務を担当する緑の外骨格の兵士。メカニロボの心のケアとレッドキラーの叱責に耐える鋼のメンタルをもつ。消耗品の補充と清掃。予算が合わないと重機関銃を携行して戦場に駆り出される)




