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"はちみつちゃん"

まごうことなき、フィクション。


お読みいただければ、幸いです。

父上、あまり高いところが得意ではないので止めてくれないか、吐きそうだ



"父"が私を『高い高い』しながら、時折「アーモ」という単語を出すことに気がついた。あまりにも頻発するそれを、「私の名前」なのではないかという仮説を立てる。


だが度重なる観察の末、"母"が私のことを「アーモ」と呼んだことはなかった。仮説は早々に、否定されることとなるだろう。


あまりにも父がアーモアーモと、口にするものだから勘違いをしたのだ。

紛らわしい野郎め。


そういえば父は母に向かっても「アーモ」という言葉を使っていたような気がする。


意味合い的には、「ハニー」とか「可愛い人」のような言葉だったのだろうか。


母の言葉を注意深く聴いていると、私の名前と思わしき単語は出ていなかったと思う。やはり私には"まだ"名前はないのか、"一生"名前がないのか。

製造番号ゼロワンエイト、とか付けられていたらちょっとばかし、否、とても嫌だな。



それより、数日後。


"この世界"に名付けがない、という仮説はついに否定された。私にも名前が与えられた、もしくは与えられる可能性はゼロではない。


近所の爺ちゃんが父と話をしているところに同席、父の腕に抱かれているので半ば強制的である。爺ちゃんは父に向かって「ニグラ」という言葉を頻発させていた。家に帰る途中、父を呼び止める人々も父に向かってニグラ、という単語を出している。


つまり父の名前は、「ニグラ」である可能性が高い。

これで私が父のことをニグラ、と呼び反応を見れば確証が得られるが産まれて間もない乳飲み子が、父親の名前を呼ぶのはかなり気味が悪い。

仕方なく母が父をニグラ、と呼ぶのを待とうと思う。日本とは異なる文化圏だ、夫婦はお互いを「お父さん」「お母さん」ではなく名前で呼びあっている可能性は高い。




その日の夜、父が母を怒らせたようで母は一か月間ほど父と口を利かなかった。

馬鹿か。

お読みいただきまして、ありがとうございました。

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