〜 不穏なる予兆 〜
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴオオーーッ
睨み合う神井とラルフォート
「ふっ、滑稽」
「君は確かに今の戦いで力の覚醒はした様だ、だが、まだまだ歩き出したばかりのヒヨッコに過ぎない」
「自分と私の実力差が分からない程、愚かではあるまい。無理な背伸びは己の寿命をはやめることになる」
ズウウオオンッ
神井は、自身より遥かに巨大なラルフォートの霊力に気が付いていた。
随分この短期間で過酷な修行をした様だ、中々良いトレーナーがついたな、さしずめ、こないだの連合の男と言ったところか。
「ああ、そうそう北條によろしく伝えといておくれ、次は殺すとね」
タケルは正直、最初に初めて会ったラルフォートとは感じが少し違う気がしていた、絶対に自分達とは敵対関係にあると思っていたし、話など通じないイカれた奴のイメージがあったが、今日は幾分まともな感じで、なにより共闘するなどとは思いもよらなかった
ラルフォートは言いたい事を言って満足したのか、歩き出す
二人のもとから去ったラルフォートは外界を忘れ、自らの思考に埋没する
ああ、タケル君に関して思い当たる節があったが、どうやら私の読みは間違いないかも知れないな、そして神井君、彼の死臭漂う霊力を感じてようやく私は理解したよ
くっくっ、君達の只ならぬ正体を
とんでもない運命を持った二人……
悲劇 喜劇 悲劇
ああこの宇宙はなんと狂おしいのだろうか
私もこれまで相応に過酷な人生を歩んで来たが、彼等は私とは比にならないくらい残酷で、過酷な運命を背負っている模様
恐ろしい
ああ
恐ろしい
この先、彼等の歩かなければならない道の終着点は全く希望の無い地獄
ニヤリ
ニタアアアアアッ
口元が緩み笑う
ポタ ポタッ
それと同時に瞳からこぼれ落ちるのは、苦痛に歪む涙
あっはっは クックック……
笑顔と涙
相反する感情を同時に感じている、ああこの感情はおおよそ言葉では表現出来ない
げはははは
君達がこれから先どうなるか、大変興味がある
ああ 主よ
これは悲劇か?それとも喜劇?
素直に思うよ、私は彼等に産まれなくて良かったと…
また君達とは会うだろう
果たしてその時君達はどんな顔をしているだろう
まだ笑っていられるか?
それとも苦痛に歪み、地獄の業火に焼かれている苦悶の顔をしているか?
とても 楽しみだよ
クックック、あっはっは ポタッ ポタッ
ラルフォートのその顔には笑顔と苦悶の表情が同時に表れていた。
この時、このラルフォートと言う男が心の奥底で何を感じ、考えていたのかは現段階では不明
ラルフォートの去った後、神井は確かに感じていた、自身とラルフォートの実力差を
だが次の今と言うこの瞬間には、確かに今までとは違う感覚も新たに生まれていた
絶対に辿り着けない境地ではない
今の俺なら、いつか奴とて必ず
必ず 到達出来る
ズサッ
タケルは突然その場に気を失い倒れだす
「タケル大丈夫ウキか?」
多分覚醒した霊力に体力がついていかなかったウキ、すぐにマナにテレパシーで伝えるウキ
神井はタケルを見つめていた
こいつもかなりの霊力を放っていやがった、俺だけじゃなく奴も覚醒した様だな…
こいつただの雑魚ではない……一体何者なんだ?
神井はここまでタケルと関わってきて、この男が何処か自分に重なる所があるような気がしていた
無論神井は、そんな自分の考えを絶対に受け入れる事はなかった、ただ、不思議であった
全く気に食わないこいつが、側に居るのが前より嫌ではなくなってる様なそんな……
奴の才能に関しても、絶対に認めてすらいない筈なのに認めている様な何処か矛盾した気持ち
ふっ、まあ良い
貴様が強くなる様なら、いつか貴様もこの手で殺す事になるかも知れんな
今日はまだはやい……神井の左手には、この時、確かに確実な殺気がこもっていた
ふっ、この宇宙で頂点に立つのはこの俺
俺以外に強者は必要ない
その頃、ペドスドラコの別地区
「黒龍、リタを喰い殺せ」ペダは大きな声で叫んでいた
「さて、いよいよだな」動き出す黒龍は蛇の様な動きでリタに近付き、リタの顔を覗き込んだ
目の前に広がるのは龍の大きな顔
「最後に言い残す事はあるかね?」ギロリッ
「どうやって殺して欲しい?時間をかけてゆっくり身体を解体されるか、それとも灼熱の炎でじっくり炙って遊んでやろうか?」
リタの額から流れ落ちる汗
ズゴウウウウウウウウウウンッ
突然、黒龍は両手で腹をおさまえる「まさかっ」
「ぐぅおおええっ」口から何かを吐き出した
ドスンッ
黒龍の口から地面に落ちたのは光堂
「光堂、大丈夫か?」
「ああ、なんとかな、ここは俺がなんとかする、逃げるんだ」
「いや、そうはいかない、怪我をしてるじゃないか」
「かすり傷だ」
ゴゴゴゴゴゴオオーーッ
「笑かすなよ、二人共逃がすつもりはない」
「逃げるつもりはないさ」リタのその言葉と同時に黒龍は突如身を仰け反り、背後からの攻撃を躱した
「すまないリタ待たせたな」
「貴様っ」
黒龍の背後に姿を現したのは、白龍
「久しぶりだな黒龍、まさか貴様等がリタを狙っていたとはな」
その機に直ぐ様ペダの方に向かおうとする光堂
「なるほど、なるほど、連合の犬に白龍までお出ましか、こいつは少々面倒だな、黒龍、一旦引くぞ」
「ちっ、そうするか、すぐにまた決着をつけようぞ白龍」
そう言い黒龍は大きな口を開く
「リタ、光堂、伏せろ」
「ブラック ブレス」
真っ黒の黒炎が渦巻くような形で口から吐き出された。
「こいつは、やばいな、リタ 俺の近くにいろ、霊力で防御するしかない」光堂の両手が白い霊気に包まれる
「いや大丈夫だ」リタがほくそ笑む
「何?」
「ホワイトブレス」
白龍の口から吐き出される白い炎
二つの炎は相殺された
「グハハハハッ、あの頃より強くなっている様だな白龍、近い内に決着をつけようではないか」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴオオーーッ
「ふう〜ぅ」地面に座り込んだリタ
「光堂には謝ったのか?リタよ」
「ああ、もう済んでいる」光堂が白龍に言った
「これから、この惑星で起こるのはこんなものでは済まないかもしれないな」光堂は先程の戦闘で焼け焦げた跡を眺めていた
「ああ、龍神様がここに現れるその時、必ず何かが起こる」白龍の瞳もまた不穏な空気を感じ取っていた
その瞳は確実に知っていた
これからここで、これから先の宇宙の未来を揺るがす程の大きな出来事が必ず起こるであろうと……
その場にいる誰もが覚悟をしていた
これから宇宙全土を巻き込んで起ころうとしてる、とてつもなく巨大で大きな時代のうねり
先は全くの未知
宇宙はもう二度と引き返す事のできない、大きな変化を伴うパラダイムシフトの道に進んだと言う事を………
〜 アンブラインドワールド 〜




