〜 カーテン 〜
「こっ コードー?こうどう?(光堂)」
「あっ、あんた一体誰なんだよ?それになんだよ、その全身白で統一されたその格好はよ、それよりここは?あと何なんだよさっきの奴らは?」
「ふぅー」
その奇妙な男は歩き出す
「まっ まて近寄るな、お前が安心出来る人間だと俺に証明しろ」
すると、自らを光堂と名乗った男は、誰も居ない方に向かい、一人喋り出したのだ。
「聞いてるか?任務報告をする。次元の狭間に落ち、かけ離れたパラレルワールドに飛び込んだ一人の日本人の男を無事確保、元のタイムライン上に送り返す」
「なっ、なんだよお前、誰に喋ってやがるんだ?」
光堂と名乗る男が、俺の顔を覗き込み、こんな事を呟いた。
「次はこうはならない、もし地獄の様な場所に来たくなきゃ、少しは心を改めろ。良いな?」
「はっ、はい」
ビュゥワンッ
響き渡る高い音域の音と共に、光堂の目の前に居た男は姿を消した。
光堂は赤黒い空を見上げる
この地獄の様な世界の周波数に簡単に人が移行してしまう様になっている…
「これから少々大変な事になるな」
「聴いてるか?ホルロ?コードー任務を開始する」
〜 アンブラインドワールド 〜
時は2023年
日本の東京に位置する、高校に通う一人の男に舞台は移る
「また、タケル(読みやすさの為カタカナ表記とする)の奴、学校サボってるぜ」
「あいつは自由で良いよな、将来の事なんて考えてないんだぜきっと」
「俺たちは勉強しなきゃ、明日テストだぜ」
その男の名は本城たける、世間で言う、不真面目とレッテルされるであろう、後は、ごく平凡な高校三年生
今日は、学校をサボり、公園のベンチで眠っていた。
彼は月に何度か、こうしてサボったり、遅刻して行く事がある
本人曰く、たまに自分のしたい様に行動を取ると、こうなってしまうらしい
サボると言う、こそばゆい小さな罪悪感を眺めつつも、青い空に目をやった
「綺麗だなぁ」
その時だった。
公園の中で突然声が響き渡る「何だよお前、中坊のくせに俺ら高校生に歯向かうのかよ?」
「でっ、でも、今お金無いですし」
タケルは違う方向を向き、目をつむる
「ったく、カツアゲかよ」
面倒事はごめんだな、知らんぷり、知らんぷり。
「なんだと?ちょっとこっち来いよ」
ふぅ〜〜
10分後、タケルは公園の真ん中で傷をつくり倒れていた。
「助けてくれてありがとうございます」
「助けたんじゃねー、あいつらがうるさかったから気に食わなかっただけだ、それに助けられてねーじゃねーか、俺はこのありさまだしよ」
「痛ててて、それにしてもあいつら容赦ねぇな」
公園の隅、その光景を見つめる一人の男の姿
「あいつが本城タケルねぇ」全身白一色の格好をする男は空を見上げた。
「ありがとう、あのっ、僕、もう行きますね」
「ああ、もう絡まれんなよ」
「はいっ」男は嬉しそうに微笑んでいた。
そんな男の反応を見てタケルは自身の怪我の痛みが、少し和らいだ様な気がした。
「さて、俺も学校でも行くかな」
しっかりした硬さのあるであろう靴底と硬いアスファルトが力強く、触れ合う音がした。
次の瞬間
目の前に立つのは、少し変わった形の白いハット帽子の様な帽子、白のロングコート、ロングコートの片側には四つの、大きさと、色の違う、円が描かれている。
なんだこいつ?
「本城タケルだな」
また変な奴があらわれたな、もう関わらないでおくか
「いや、人違いですよ」
「それはない、お前にはこれから大きな役割がある」
「役割?」
「宇宙に遍満する沢山の存在と地球を繋げ、いや、お前はそれ以上に、宇宙や地球に数居る闇に支配された神々を相手にする事になる」
あっちゃー頭イってるよこいつ
「あの、とりあえず学校行かなきゃいけないんで、サヨナラ」
タケルは全速力で公園を去って行った。
光堂は何も無い空間を見つめながら、喋りだす
「昔の自分を見てる様でなんとも面倒な任務だな。それより、この辺りの霊気があまり良い感じがしない。少し速めに動く事にする」
その頃、タケルは学校に向かい歩いていた。
「しっかし、さっきの奴、頭イってたな、なんだか今日はロクな事が起こりゃしねぇ、まだ学校のがマシだぜ」
「は?」
「あれ?」タケルは突如足を止め、空を見上げながら、ぽかんと大口を開けていた。
「なんだよあの大きな円盤は?あれはUFOか?」
タケルは、目の前を普通の顔をして歩いている、おじさんに慌てて話しかける
「おじさん空見てくれよ、あの大きな円盤見てくれよ」
「円盤?何言ってるんだ。何にもないじゃないか、からかわないでくださいよ」
「え?」
すると曲がり角の先から声が。
「お前にしか見えてない、俺に出会った事で、お前の周波数が乱れ、見えない世界と同調してるからだ」
それは先程の公園で出会った男
タケルは完全無視で、聞こえてない振りをして歩きだす。「俺、今日疲れてんだな、きっとそうだ」
ふぅー
「お前の意識は盲目か?」
「なんだと」
「実際見えているのにも関わらず、頭で判断し、理解出来る現実以外は消去する」
「この世はお前の頭じゃ理解出来ない世界で溢れてるって言うのによ」
「タケルと言ったな、そのまま学校に向かえば沢山の人間が犠牲になる」
「この先で一体の死霊がお前を待つからだ」
「俺はお前に忠告しに来た」
「死霊だと?そんなもんが居るわけねーだろ、目にも見えないものが存在するわけねーだろ」
タケルは再び歩きだす
光堂は止めなかった。
なにが死霊だよ、怖がらせやがって。
タケルの額からは、滝の様に滴り落ちる汗が、何故だか止まらずに流れていた。
光堂は目の前に広がる空を見つめている
「嫌な空だ」
先ほどタケルに見えていたのは一機のUFO、だが光堂の視界に映っている景色は全く違っていたのだ。
空は真っ黒な不気味な円盤の大群で埋め尽くされていた。
〜 アンブラインドワールド 〜