アンブラインドワールド 〜 序章 〜
ああ つまらねぇ 人生なんて 本当にクソみてぇなもんだ。
やってらんねえよ 楽しい事なんて何一つねぇ
なんで毎日働かなきゃなんねえんだ
今の社会も、人間も、こんな地球も、どうでもいいよ
ああ なにもかもがクソだ やってらんねぇ
ビュウワアンッ
次の瞬間
辺りに聞いた事の無い、低く、鈍い響きの音が鳴った。
それは産まれてからこのかた、おおよそ聞いた事の無い奇妙で重みのある音
え?
なんだ、今の音、気のせいか?
ドンッ
「って」
痛てぇなタコが、何処見て歩いてんだ。
そう叫ぼうとしたが、体格の良い男を見て、男は言葉を心の内にとどめた。
ギロリ
「何処見て歩いてんだ、タコだと?殺すぞ」
「え?」
なんで俺の心の声がバレてる?
「え?」嘘だろ
なんでっ、なんでコイツ、ナイフ出してんだよ。
たったこれだけの事で・・・
「殺す」
クスクス クスクス
なんだょ あの三人組のババア こっち見て笑ってんじゃねえぞ、止めてくれよ。
「え? え? え?」
なんであのババア達、包丁持ってんだよ。
「死ねよガキ」
「うわぁぁぁあああっ」
ハァ ハァ ハァ
一体なんなんだよ、あいつらオカシイだろ。
入っちゃ行けねぇ危険な地域にでも来ちまったのか?
笑わせるな、ここは日本だぜ、こんな危ない場所聞いた事ねぇぞ
それに、ここは俺が昔から住む地元、頻繁に通る、日常通りの道、そんな訳がない。 なにかがおかしい…
そう、あそこに交番がある
とにかく交番だ。
「お巡りさん、オカシイ連中が居るんだ。ナイフ持って俺を殺そうと」
尖った形の影が視界に入る
「嘘だろ」
警官は手に握るナイフを放り投げた
「じゃあ、そのナイフで殺し合えば良いだろう」
おいっ おいっ おいっ イかれてるよ こいつも
「あっはっはっはっは」
「うわぁぁああっ」逃げなきゃ 逃げなきゃどっか他の所に。
一体なんなんだよ、いくら何でもおかしいじゃねえか。
あの細い路地に逃げ込もう
ハァ ハァ ハァ ハァ
ドォォン
目の前に立っていた一人の男に勢い良くぶつかった。
無表情で近付いてくる男
「うわぁぁあっ」
なっ
今度は一体なんなんだよ
こっ、こいつは一体?
格好からして一番やばそうなヤツじゃねえか。
白いハット帽子に、白いロングコート、白い革靴
帽子の下から覗く、濃い眉毛と、全てを見透かす様な力強い瞳
なんだよ 一体なんなんだよ ここは。
すぐに逃げようとする男の背後に声が響く
「待てよ」
「見るとこ日本人だな」
「なっ、なんなんだよ あんたは」
「俺か?」
「コードー」
「日本人なら、こっちで良いな」
「俺の名は光堂」
〜 アンブラインドワールド 〜 序章