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抵抗(レジスタンス)-死刑囚の手記より-(1956)――寡黙かつ強じんなモノクロ

 突然ですが。

 単純作業は好きですか?


 私はねー、けっこう好きなんですねえ。例えば、裸電球の下で糊刷毛片手に封筒作りとか、DVDパッケージの解体分別作業とか、畑の石拾いとか。

 内容が地味で単調な作業というものは、映画で観る機会はあまりないのですが。

 しかーし、その単純作業の果てに何か大きな目的を抱えているのだとしたら?

 大きな希望の先を目指し、単純作業を延々と続ける、ということがあまりにもドラマチックでしかもかっこいい、としたら?


 この映画をメッチャ簡単に説明すると

「スプーンで延々と穴を削る」

 話なのだが(え?)、その否応なしの手作り感、大きな目的に向けた作業への個人的埋没感、孤独とそれに耐えていく強い意志という点など、作品の背景である戦争とレジスタンス活動を十二分に表現しているように思えた。

 音響や音楽などの『飾り付け』もあまりなく、俳優さんも当時買ったパンフレットによると全員素人さんとあったので、映画演出としてはきるだけリアルに寄せたかったのだろうか、と感じた。

 特に主役のフランソワ・ルテリエが(当時)哲学科の学生さんだった、というのが妙にカッコよく思えた。目配りとかが自然で、しかもメヂカラが強い。まさに『レジスタンス』を想起させる寡黙さ、強さとしたたかさを体現したような演技だなあ、とすっかり夢中になって見守っていたね。


 ちょっと昔のことになるが、たまたま映画館で観る機会があった。

 その時は前知識なしで観に入ったせいで、いったいこの話がどう転ぶのか全然見当もつかず、かなりドキドキしたなあ。

 淡々と黙々とリアルな描写が続くのだがまったく退屈せず、逆に、常に緊張しながら事の顛末を見守り続けてしまった。周りの観客も息を詰めている様子が伝わってきた。

 いつ見つかるのではないか、いつ処刑されるのでは? 裏切り者が出るのでは?

 主人公と同じくらい、私たちもモノクロの画面内に囚われ、息を詰めてしまっていた。

 モノクロならではの白と黒との響き合いが美しんだよなー、また。


 そしてついに訪れるラスト、そしてエンドロール。

 たぶん観ていた人たちみんないっせいに、はぁ~と大きくため息をついて立ちあがった、のでは。

 うちの親が若い頃、やはりよく映画を観に行ったという話をしたものだが、時代劇や任侠映画などが終わると、たいがいみんな力が入り過ぎて、映画館から次々と肩をいからせて風切りながら帰っていく、という話を聞いたものだった。

 多分、この館から出てきた人びとも密かにぐっとこぶしを握り締めながら表に出てきたのではないかなぁ。


 過度な演技や派手な演出というものは見られないが、深く静かに感動する作品でした。


 脱獄を試みるお話は映画の中にも数多くあるし、それぞれの作品に良さはあると思うが、リアリティ追求という点とコツコツ加減というところでも私はこの映画を激しく、いや、淡々とお勧めします。


 そして更に感じるのは……長い時を経てもなお、人の思いにはあまり違いはないのだなあ、とね。

 良いものは、良いのです。

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