レッド・オクトーバーを追え(1990年)――突っ込みながらも大好きな一本
はい、こんにちは、今日はレッドオクトーバーを追え、ですねっ。
という訳で淀川先生のはずんだ声が聴こえてきそうな(幻聴)、ロシア好き、ショーン・コネリー好き、スパイアクション好き、ミリタリーもの好き、潜水艦好き等々にはたまらん映画ですね。
で、アナタはどこ好き? と言われるとなぜかサム・ニールという。そしてスコット・グレン。
うわーんやっぱりオッサンが好きでごめんなさい。
知る人ぞ知る、トム・クランシー原作の「ジャック・ライアンもの」の一つ、残念ながらこのシリーズとしての「今そこにある危機」は未見だが、この映画は突っ込みどころも含め、すべてが愛おしくて何度も観ておりますわ。
冒頭から雪の河畔、水上に顔を出す巨大原子力潜水艦と出航を控える二人の短い(ロシア語での)会話、大海へ向けて旅立つ艦がだんだんと遠くなり、画面切り替えで潜水艦の脇から捉えたシーンからロシア語タイトル(正確には赤い十月はКрасный октябрьらしいのだが、まあそこは目をつぶって)、ソナーが一閃して英語に替わり……バックのロシア語のコーラスがまたぴったり合っている。
素人目で見て、この映画のけっこう買っている場面がロシア語→英語切り替えの工夫。たしか三か所くらいあっただろうか。ロシア語で読んでいた本が途中からさりげなく英語に換わり、そこから自然に会話が英語になっていた場面は、一番最初に観ていた時には数秒は気づかなかった(うん、単純なんだよ基本)。
曲も凝っていて、メインテーマとなるコーラス、これがロシア語で「ダースビーダーニャロージナ(さらば故郷よ)」と、いかにもソ連時代のテンションアゲアゲ用楽曲の転用かと思っていたら映画オリジナルらしい。
そして、潜水艦どうしの駆け引きとか、敵の魚雷に対峙した場面とか、人間どうしのドンパチにはないスリルに満ちている。潜水艦って、基本相手が見えてないわけだよね?? それを艦長自身の勘やデータなどから『敵』を認識して戦っていく……かつて『眼下の敵』とか『Uボート』という名作の数々を思い出してしまいましたわ。まあ、この映画には他要素も多いバラエティの風味もありましたが。
え、突っ込みどころはどこ、って? まあ色々ありますが、一番気になったのは、これはやっぱり『アメリカ(人)から見たソ連・ロシアのイメージとこうあって欲しいという願望』が目一杯詰め込まれた、ぶっちゃけ、アメリカバンザイ的なつくり全般かな。
第一、CIAとは言え、分析官のおっさんがここまで右往左往するんかいな? ソ連海軍の、特に艦長はじめ士官たちのカッコ良さと対比するような乗務員のとっぽさもいかにも。「わが艦長がスゲー!」とみんなで感動したりドキドキハラハラしたり、これはアメリカ人が「国家に忠実だがけっこう素朴(つーか単純)な」ロシア人を絵に描いたようなものなのか? とか。
初めて乗ったであろうレッド・オクトーバーでアメリカ人たちが適当に「運転」しちゃう場面とか。
しかし私の一番の突っ込みどころは、やはりラストのシーン。
「え? スタンリーの弟……兄貴よりもずっとデカイし……立派かも」
ライアンが終盤結構ドタバタしていて、ああ、ようやく身体を張ったのか、とひと安心。米ソの駆け引きと潜水艦内の息詰まる闘いだけで終わってしまうのではなく、こんな感じが確かにダイ・ハードにも通じているのかも、と感じながらその後「パトリオット・ゲーム」のハリソン=ライアンを見てうーん、やっぱりアレックス=ライアンはどこかニヤケ分析官のままでもいいのかも……って少し思った。
ちょっと盛り込み過ぎかな、って気もね。眼下の敵とか見てしまうと余計。まあ比べてはいけないのだが。
トム・クランシーはライアンのシリーズをかなり書いていたらしく、調べていたら彼の意外な将来を見つけてしまい……実は彼のことがますますよく分からなくなった私でした。
どうでもいいことだけど、ジェイムズ・アール・ジョーンズがやっぱりこういう偉い役にぴったり、と思ったら何と「パトリオット・ゲーム」にも同名の役で出ていて、他の人びとがまるで違っていたのに、彼は健在で安心しちゃったよ。
ライアンの奥さんなんて、再婚だろうか? っていう位、イメージも違ったのにね。
おっともう突っ込まないと決めて、ただこの映画を愛することとしよう。
あーまだコーラスが頭の中に回っているわー。だーすびだーにゃ。
キリがないので、このへんでいったん締めたいと思います。
今までたわごとに近い映画エッセイに、辛抱強くおつき合い頂きありがとうございました!!