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復活の日(1980)――よくも悪くも当時の集大成

 近ごろずっと観直したく思っていた作品のひとつ。


 ここでひとつ質問ですが。

 角川映画、というとどんなイメージをお持ちですか?


 カドカワ映画、というと

 うわー懐かしい、と思うか、うん最近見たよ、というのか。

 あざとい、という人もあり、前評判ほどではない、という意見あり、キャッチコピーに惹かれた、主題曲がよかった、出演者が魅力的……などなど。

 観た人の数だけ、評価も分かれるのでは? 

 そして作品の幅の広さ、関わるメディアの膨大さなどからも、話題作りには事欠かないという感じだなあ。


 今作を見直しをしてみたいと思った理由は何なのか?

 近ごろ評判の真田丸で活躍中の草刈正雄の、まだ演技が棒だった頃の初々しさが見たくて?

 多岐川裕美の富士額を拝みたくて?

 当時の風俗が色濃く残った画面を再確認したくて?

 例えば、病院の黒電話とか、看護婦(あくまでも『師』ではない)さんのナースキャップとか、アキラくんが寝ていた部屋の襖に貼られたウルトラマンの絵とか、クリープのボトルとか、ヨシズミが飲んでいるダイドーブレンドとか、貧乳っぽいトップレスな人びとが踊り狂うディスコ(?)とか。

 ジャニス・イアンの主題歌「You are Love」が耳から離れなくて?

(曲のことを言えば、作中でアルゼンチンの隊員がピアノ弾き語りしていた大いなる河よ、という曲が心に沁みたなあ)

 チャック・コナーズ、ジョージ・ケネディ、グレン・フォード、オリヴィア・ハッセー、日本の俳優でも緒方拳、丘みつ子、小林稔侍、千葉真一など豪華キャストをみたくて?

 まあ、私はロバート・ヴォーンがおいしい役で出ているというだけでご飯三杯行けましたけどね。すまんねヒネたオヤジフェチで。


 今回、再観賞して色んな意味の懐かしさを心ゆくまで味わいました。

 出てくる黒電話だけではなく、時代ゆえの世界観などにも大いに感じることが多かったかな。


 今回、中三むすめが一緒にこの映画を観たのだが、実は彼女、図書室で『復活の日』ジュニア版をたまたま読んでいたのだという。

 ジュニア版は原作(やこの映画)と色々違う面も多かったらしく、特に違うのが、「生き残った女性」に対する扱いは、ジェンダー面からも何かと配慮されていたらしい。

 また、映画では生き残ったのは863人とされていたのも、「少なっ!! 一万人じゃなかった?」とすぐに反応した。


 今観ると、特に気になった点――生き残り女性に対して「種の保存のための人類の最重要資源」というとらえ方をしていて、それが止むを得ないという方向で描かれていて、うん、時代だなあ、と感じてしまったね。

 また、全世界的な問題なのだがどうしても「狭い世界の中」でのドラマ展開となってしまうのは、観客にいかに共感してもらうかという点では仕方ないのかなあ、と思った。

 

 それでも、米国だけでなくソ連に対してもある程度「全人類的」に平等に描いていたのは、原作者の小松左京がSFというものを揺るぎないラージスケールでとらえようとした証拠なのかな、と。

 今となっては、「セリフまわしが大仰で説明のテンポが遅い」「その割に滅亡はあっさりと語られている」点など細かく突っ込みどころも多いのだが、当時としては、最凶ウィルスに対峙する人類という地球規模の災厄を真面目に追いかけた超大作、というイメージが強く、パンデミックの恐ろしさでインパクト強い場面も多くて、かなり手に汗握ってしまう映画ではあった。


 そしてなぜか(他にも多い例なのかも知れないが)名のある役者が揃った場面などでは、絶対に姿がカブらない、つまり『絵になる場面』が常に意識されていた、ということに今回改めて気づいてしまった。

 専門用語で何と言うのか分からず失礼。しかし前の人物がセリフを言っている間に後ろの人物がさりげなく人と人との間に移動して気づくと一枚絵になっている……何となく舞台劇を思わせるんだよなあ。だからセリフまわしも大仰だし、常に誰もがカメラ(観客)を意識しているという感覚が強かったのかもしれない。


 当時のカドカワ超大作の様式美に満ちた、カドカワスタイルの一角を成す重要な一作だったのだろうなあ。

 まあ、後から知ったことだが、南極ロケや現地での立ち往生などでかなり予算をくってしまい、その後の路線変更のひとつの原因となったらしいのだが(当時の映画雑誌にも、船が流氷の中で立ち往生して騒ぎになった、と書かれていた)。


 今回、色々と懐かしみながら観たのだが、これを現代の設定で再映画化してくれないかなー、とふと感じたりもしましたよ。

 どんなふうに変わっていくのか、妄想するのもまた、楽しいかもね。

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