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哀愁(1940)――美男美女は何をしても絵になるという話

 恋愛ものが少ないですね、と?

 そんなこたぁ、ありませんぜ(急に下賤)。観てますよ、ええ、観てますとも。

 ま、積極的に見に行ってないっすが、ほどほどに。

 そんな中で、つい最近なぜか観たのがこちら。三回目くらいかな。

 や、特に好きだーというわけではないのだが、いったん観始めると、ドラマのアップダウンが今どきの昼ドラみたいで、けっこう面白い、いや、フキンシンですみません、でもやっぱり面白いのですわ(ヲィ)。そのくせ、全体的に上品でセンスのよい作りとなっている。


 ウォタルウ橋(1931・残念ながら未見)のリメイクとして作られたこちら。

 旧作のあらすじを併せて読む限りでは、どちらの映画もロンドンを舞台に、愛し合う二人が結ばれようとあがきながらも戦争(第一次世界大戦)の渦に巻き込まれ悲劇的な結末へと向っていく、という線では同じではあるが、リメイクのこちらの方が、女性の悲劇性がよりドラマチックに強調されている気がする。


 小さいながらも厳格なバレエ団に所属する『踊り子』のマイラは、ウォータールウ橋の上で空襲警報に遭った時、ぐうぜん出会った将校・ロイと恋に落ちる。

 ロイはとにかく、情熱的ではあるが向こうみずなイケイケ野郎でして。幼い頃の自慢のエピソードは「未来に向って跳べー」みたいに木から飛び降りて大けがを負った、という。

 そのまんまオトナになってしまった彼は、たぶん家柄のおかげもあるのだろうか(伯父さんのコネも?)大尉として前線への出発を待つ身でありながら、防空壕内では知り合ったばかりの(マイラ)に「なんか戦争ってワクワク☆」みたいに話しかけたり、惚れた娘見たさに上司との食事もほったらかしで劇場に行ったり、知り合ったら即結婚しよう! え?無理なの?すぐお願い牧師さん! と、とにかく前のめり感満載で、最初から最後まであんまりマイラの悩みについては真剣に問いかけようとしていない。

 それが悲劇を呼ぶ大きな原因でもあるのだが、能天気なボンボンぶりを余すところなく発揮している。


 それを、また甘いマスクのいい男が演じているからどこからどこまでも絵になるんだよねー。


 この人は、演技はあまりうまくないと噂されていながら自身でも

「男っぷりがよいことで映画に出ている、偉大な俳優ではない。将来もそうなることはないだろう」

 とあんがい自身をわきまえた発言をしていたとのこと(映画パンフより)。しかし特に下手というイメージもないかな。

 少なくもこの映画をみて言うならば(他での覚えがあまりない……)、一途にがむしゃらにマイラを愛したが、性格とか状況とかのせいで彼女のうわべだけしか気づいてやれなかった阿呆さが非常に巧くにじみ出ていた。まさに当たり役だった気がする。


 一方でマイラを演じたヴィヴィアン・リーがやはり素敵すぎる。

 真面目でお堅い顔から愛にとろけそうな婚約者としての笑顔、悲劇にひきつる表情、身を持ち崩した時の目つき、言い出せなくて絶望に打ちひしがれる姿、くるくるとめまぐるしく変わるドラマの中でどのシーンにおいてもぴったりとマイラ自身を演じており、しかもどの場面でも美しい。目を逸らすのが惜しくなるくらい。


 マイラの性格自体は、現代からみれば随分消極的で悲観的過ぎるとも取られそうだが。ロイ母の態度も、もっとマイラが強い性格だったら、受け止め方がまた変わってくるのでは……という微妙さだったし(演出的にはとても意地悪にみえるのだが、それはたぶん私たちがいつの間にか、マイラの目からその世界を眺めていたんじゃないか、と後で思えてきた)。


 お話の内容としては、全く今の時代に即しているとは言えず、若い連中が観れば「え? なんでそうなるの?」的なツッコミが多くなること必至だろうな。 

 「うちの母がステキなんだよー!」って力説するロイきも! とか、「どこの(家系の)レスター家の人?」みたいな発言とか時代錯誤じゃん! とか。

 しかし、当時の社会状況などを考えあわせて、確かにそんな時代を経て今の私らの時代があるんだなーとしみじみ感じるのもまた、一興だね。

 変わるものもあるし、変わらないものも確かに。


 この映画の中で私の推しベストなのが、マイラのルームメイト、キティだね。

 彼女はマイラに同情するあまり自ら安定した暮らしを棄ててしまうようなのだが、それを「いずれはそうなったのよ」とサバサバと受け止め、いつもマイラの味方であろうとする。

 もう一人、逆の意味で推しなのがこれも時代というのか風俗というのか、ロイの屋敷に帰る時に恋人たちが乗った馬車の後ろの人。執事か? 会話する二人の後ろ頭を終始不思議な笑みで眺めていたオジサマが何か印象的でした。近い、距離近いよ……


 キャンドルライトクラブでのワルツ『蛍の光』、これがまた素敵な演出で。そんなところもうっとり絵になるシーンだらけだったねえ。


 すでに古典だよね、考えたら観たことないかも、という人にもぜひ、お勧めでごんす。温故知新。

 密かに、現代ものとしてリメイクしてほしい気も……どんなふうになるのか、わくわくだぁ。

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