チャイナ・シンドローム(1979)――どっちの陣営か割り切れないじぶんに捧げる
え、今この時期にコレですか?? 空気読まないの? それとも読み過ぎ? アンタところでどういうつもりで? みたいな声がびしばしと脳内アンテナに届いておりますが皆様お元気でお過ごしでしょうか。オッス、おら、かっきー(親愛なるペイさんの真似wすんません)。
チャイナ・シンドロームということばはお聞きになった方も多いだろう。
ま、聞いたことない人は、痒いところに手が届くネットでテキトーに調べてほしい。
簡単に言うと、原子力発電所などで大規模な事故があり、炉心融解が起こった状況を、ブラックジョークとして揶揄したことばである。
もっとふつうには、メルトダウンということばもある。あんまり一般的には聞きたくないことばだけどね、え、そっちはよく知ってる? それはなんと哀しい現状だね。
いとこがフクシマの事故で避難を繰り返していたり、逆にあんがい近いところに原子力発電所があって(現在たぶん停止中)身近なところにそこで点検保守に従事している人がいる立場としては、賛成反対なんて話はしませんが。すみません。
原発の取材中ぐうぜん事故寸前の状況を見てしまい、その後事件に巻き込まれながらも真実を伝えようとする報道関係者(ジェーン・フォンダ、マイケル・ダグラス)と、始めは事実を隠そうとしながらも何が大切なのかに目覚め、自らの組織と闘う原発のスタッフ(ジャック・レモン)……そんな彼らの巨悪との闘いをサスペンスフルに描いた作品。
この映画を観たのはもう随分前だった。多分テレビ放映だったと思う。ジャック・レモンの吹き替えの声がまだ耳に残ってるし。
陰謀論大好きな私には、もう見どころ満載の映画だった。
ジャック・レモンももちろんだが、マイケル・ダグラスもよい味出してたなー。こっそりとカメラを回すシーンが特に、ぐっとこぶし握ってしまった。
この映画は確実に原子力産業に対するアンチ映画だろう、と思う。ラストのさばき方もアイロニーに満ちている。そして当時この映画を見た私は「だよねだよねー!」と大きくうなずいたものであった。
そして……年は過ぎ、いろいろと見聞きするにつれ、私も変わった。そしてしみじみ思ったよ。
だいたいにおいて、声が大きくなればなるほど、物事の真実は伝わりにくくなるものだ、と。
映画のとらえ方にも疑問がもてるくらい大人に、いや、ずるい年よりになってきたのかも。
そんなずるい大人だから言えるのだが、原子力産業についても、どちらが正しいかとは私はどうしても判定できない。
ただ単に、コスト、人やまわりの環境に対する安全性とうとうすべてを鑑み、どうしても(人が生きていく中での)収支が合わない、と思うものには心から応援できない、という立場で常に居続けたいと思っている。
完全にやめるというわけにはいかない、という確固たることばを聞くにつけ、「絶対反対」の強いシュプレヒコールを聞くにつけ、主義主張としてではなく、意地の張り合いではなく、単純に、『今後とも人が安全に心地よく生きていくには何を選んでいくのが最適か』が淡々と決めて行ければ、と切に思うのです。
強いメッセージ性も大切だと思う。それがひとつの選択肢となればよいと思っているし。
そして今日も、ジャック・レモンの切ない目線をどうしても思い出して悶々としてしまう、煮え切らない私なのでありました。
あ、ところで原発従事者の身内がある日淡々と言うには
「こないださー、針、振りきれちゃってさー、ヤバかったよー。でもあとで判ったんだけど、ハカリが壊れてたんだってさWW」
うん、やっぱ……何も言えねー。




