表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/6

仮面はデンジャー

表通りの人を避けながら進む俺と十華会長は、街で売っている武器、服、装飾品、雑貨など珍しいものに眼を奪われながら、仮面の人の後を付いていく。途中二回程、見失ったが仮面の人の周りに不自然に人が寄り付いていなかったため直ぐに見つけることが出来た。

まぁ、異様だもんな、ボロボロのローブだし。

そうして歩いていると、ふとあるモノに目が止まった。


「……思ったんですどさ」

「ん、どうしたんだい?」

「奴隷って結構需要あるんだなぁ……と」

「ふむ、奴隷か……」


歩きながら見つけた店は、大きな鉄格子がいくつか並び、その中に男性や女性が入れられていた。

彼らの手足と首には重そうな枷がつけられている。

けして裸同然というわけではないが、質素な作りのボロくて生地が薄そうな服を着ていた。

彼らは生気が無い者もいれば、力こぶをアピールしたり、プロポーションを美しく見せたりと自らを売り出す者までいた。

そんな奴隷の檻の外では、番号を呼ぶ声と数値を叫ぶ声が聞こえていて活気があった。


『13番、 300 G(ゴールド)!!』

『13番、 300 G と 50 S(シルバー)

『あいよ、もういないかい? 体力系のスキル持ちだよ!!』

『なに!? 13番、 400 G !!』


そんな光景を横目に俺達は通り過ぎる。

ちょっと実際目の当たりにすると引いてしまいそうになるが、ああやって街の表通りに店を構えられていることから真っ当な商売なのかもしれない。

しかし、どことなく嫌なものを見たどんよりとした気持ちになる。


「この光景とさっきの出来事を比べると、何故だかこっちの方が心にくる」

「そうか……だがどうすることも私達には出来ないぞ」

「そりゃぁ、わかりますけど」


人が人を売り買いするのが身近になかったからか、嫌悪感が半端無い。

元気でノリノリの人間の奴隷と違い、生気を感じなく焦点があっていないように見える眼で俯いている奴隷に指を差した。


「あれを見るとどうしても……」

「ふむ、もしやエルフか?」

「あ、十華会長もそう思います? ああやって、他種族が売られる光景はファンタジー小説を読む俺からすると、どうみても無理矢理にしか見えないんだよなぁ」


そう、俺が指差したのは、人ばかりの中にポツリといる耳が長く淡い金色の髪を持つ少年だ。

少年の胸にある番号は『13番』今まさに競りに掛けられているのだ。

あの生気のない絶望した目は、どうしても正規の手順を踏んでいないように思う。

手順がどんなのかは知らないが……


『それにエルフだから年もまだまだ現役だよ! これからが働き盛りだ!!』

『13番、 700 G!!』


値段がどう決まっているのか分からないが……また高騰していく。

奴隷商人が商売が上手いのかどんどん上がっているようだ。


すると、周りも気になるのか足を止めて、どんどんと人だかりが大きくなっていく。

通りすぎた筈の俺達もいつの間にか足を止めて見入ってしまった。


「確かに……あの少年の状態から見ると無理矢理のように見えてくるなぁ」

「ですよね、でも誰も周りは気にしてないんですよ?」

「ふむ、そういう世界なのだろうな」


十華会長も俺が気になっていることを理解したようだ。

しかし、二人顔を見合わせるがお互いに出来ることは何もなく、無力感に囚われてしまう。

すると、


「はぁ……ついてこいと言ったのに」


俺と十華会長の後ろに、ボロ切れになった漆黒のローブではなく、真新しい同じローブを纏う仮面の人がいた。

スペアのローブだろうか?

それと、仮面の人は今まで持っていなかったモノを肩から下げていた。

バットケースを太く、そして長くした筒状の入れ物を持っていたのだ。

何が入っているのか気になるが、それよりも、


「あの子って正規の手順なのかな?」

「ん? ああ……あれか」


俺が指差した少年を仮面の人が視界に捉える。

もしかしたら、悪党に捕まってしまった結果なのでは、と内心思っていた俺達は仮面の人の言葉に唖然とする。


「私が100年前に捕まえた【殺人妖精(キリング・リング)】の幹部の一人だな……同族殺し、人殺しなどしていたこの国の指名手配犯だ」

「……はぁ!?」

「いや、どう見てもそんなヤツには見えないが……それにあの顔―――」


十華会長のいう通りか弱い感じがするし、それにそんなやつを売買するのもどうかしている。

というか、仮面の人って人間じゃないのか!?

この仮面の人って実は危ないんじゃ……と警戒する。

仮面の人から少し離れ、ごくりと唾をのむ。

仮面の人は、


「む? 心外だな……私は人間だし、あれはちゃんと記憶とそっち系の能力は消しているから安全だ」


むしろ償いのチャンスをやったんだぞ? と呟き、肩を竦めて再び歩き出す。

いや、しかしそうなると裏通りでの戦闘とか殺人妖精を無力化とか、仮面の人の実力半端ないな!!

下手に逆らうと殺されるかもしれない。

そう思ったが、なぜかそれは絶対にないと思う自分がいた。

少年から視線を切り、後ろをついていく。

あの少年は忘れよう。

少年と言う歳じゃなかったし。

しかし初めてのエルフが殺人鬼とはな。

そういえば、


「さっきはぐれたときに、もう預かり処ってのに行ってきた……とか?」

「ああ、行ってきた。 隣が武器屋だから付いてくれば良かったものを」

「すいません! もう一回いきません?」

「……用はない」


先程の話を聞いた後でも後腐れなく会話を続ける俺の後ろには、難しい顔をして十華会長が付いてきている。

十華会長は俺達の会話に参加せず、ずっと考え込んでいるようだ。

まぁもし会話に加わったとしても、二人の相性の悪さからどちらかが喧嘩を売りピリピリした空気になりそうだなぁ。

と思わないことも、ない。


「それが預けていたものですか? 何が入ってるんです?」


仮面の人は肩に掛けた太く長いケースを優しい手つきで撫でながら、


「……古き親友を、ね」

「お、おまわりさーん!!」


俺の叫びに周りを歩いていた人がビクッとなった。

すいませんといい、ペコペコと周りに頭を下げていると、クスクスと笑う声。

許すまじ、忍者(仮)からの出来事のコンボでもう精神的にキツいんだから、そういう冗談止めて欲しいな。ホントにまったく。

しかし、妖艶な声色でそう言われると冗談に聞こえないな……

そもそも性別はどっちだろ?

まぁいいか。


「……さっきの冗談だよね?」

「さぁ、どうだろうな」


再び歩き出して15分。

仮面の人が足を止めた。

仮面の人の正面にあるのは、この世界の服屋だろうか。

取り扱っているのは服だけじゃなく、全身を覆える鎧や、金属で出来た靴、頭に被る兜、それに盾なんかもある。


「ここって……」

「そう、防具屋だ」


服を買うって、つまり防具を買うってことなんだな!

おっしゃぁ!

内心大喜びだぜ!

しかし、大事なことに気がついた。


「あ、金が……」


目に見えてテンションが下がって行く俺に、仮面の人物はため息を付く。


「まぁ、そういう買い物はまた今度だな。 今は注文のモノを取りに来ただけだ」


ずーんとなる俺を放置して、店の中に入り店長……いやガタイの良いオッサンから紙袋を受け取っていた。


「さて、これで一通り問題も解決するだろう」


仮面の人は、俺と今まで黙って付いてきていた十華会長を見た。

十華会長は今度は神の書を開いている。

何かあったのだろうか?


「そろそろ詳しい話をするべきだと思わないか?」


その問いかけは俺達二人に言ったのだろうか、いや、十華会長に向かって言っている気がする。

十華会長は視線をあげる。


「確かに、聞きたいことも出来たしな」


あれ? 俺空気になりそう。


俺達はまた仮面の人に付いていき『カメリア亭』という宿屋に入っていった。

どうやらここで一晩明かすらしい。





【奴隷商人】

様々な奴隷を取り扱う商人。

他種族を無理矢理捕まえたり、売買することは禁じられている。

正式に国からの認可が降りた場合のみ売買ができる。

今回のような殺人鬼などがあたる。

また、他種族を密に取引する【闇奴隷商人】なるものも存在する。

こちらは見つけ次第、生死を問わず捕まえる許可が降りている。

しかし、既に売買されてしまうと、契約書を燃やさない限り奴隷として扱われる。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ