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襲撃者はニンジャー

「こっちだ……ついてこい」

「お?…… すげぇぇぇぇ!!!」

「ふむ、これは……また」


未だに素っ気なく話す俺達の召喚者に連れられ、どデカイ城から出てきた俺達は目の前に広がる光景に興奮した。

こいつはすごい。

俺の表現力が乏しすぎて上手く言えないが、まさに異世界の大都市、ゲームをしているときに何度も画面の向こう側に見てきた街並みが広がっていたのだ。

きっと遠くに見える壁は魔物とか敵国とかの対策だろう。

大きさも馬鹿デカイ、あれだよ、どこぞの大きな巨人でも頭とか出ない程高い。

それが見渡す限りぐるっとここにある城を取り囲んでいる。

というか、城も後ろ向いて思ったがとてつもなく巨大だ。

首が痛くなるほど見上げるレベルだった。

まぁ、すごいのは城と壁だけじゃなくて、街にある大きな建物も興奮だ。


「十華会長見ました!? あっちにある……ほら」

「ん? ああ、すごいな。 武装した人が出入りしているのは……ギルドか?」

「あっちは大鐘楼! あそこはゲームでいう教会だな! きっと!!」

「お、おぉ、そうだな」

「すごいぞ、異世界! 神……いい仕事したな」


城が一際高い丘にあったために、城から城下町に降りるのにぐるぐると螺旋階段のように城の周りにある道を歩いたため、街全体が見渡すことが出来た。

もう、大興奮だった。

そんな俺に、十華会長は初めは一緒になって盛り上がっていたが、途中から冷めたのか俺の返答を片手間で返している気がする。

なぜだ? ロマンはここにあるのに………


しばらく、いや、結構歩いてやっと街の入り口が見えてきた。

本当に大きな街だな………

道中、無言で俺たちの先頭をあるく仮面の人物は、時折俺達の様子を伺うくらいで会話には参加しなかった。それはそうか、この世界で暮らしていたら当たり前の景色に感動も湧かないものか。


「あ……仮面さん、仮面の人? 仮面の君?」

「………」


ん~、なんて呼べば良いんだ? いや、そもそも男か女か分かんないしなぁ、身長は会長と同じくらいで、何処と無く身体の線も細いから女ぽいんだけど……ビシッとしてるしなぁ、細マッチョのニヒルなイケメンさんかもしれないし、どう呼べば良いのだろうか。


話しかけようとして、相手をなんて呼べばいいか迷っていると、仮面をした人が肩をすくめた。


「好きに呼ぶといいが、変なあだ名を付けたら……」

「つけたら?」

「後で祟るからな」

「……どう呼べと?」


仮面の人の雰囲気が冗談じゃなかったんだけど……

俺が困っていると、


「おい、へんてこ仮面。 歩くついでにこの街の説明とかしたらどうだ? 」


案外不親切だな。 と鼻で笑い十華会長は喧嘩腰だった。

だから、なんでこの人は仮面の人に喧嘩売ってるの!?


しかし、へんてこ仮面と言われた仮面の人は、なぜか十華会長に憐れみの視線を送っている気がする。


「ああ、きっとそう……なんだろうな―――」

「?」


十華会長は、売り言葉に買い言葉ではないが、なにか言い返してくると思っていたらしく、予想と違う反応に首を傾げていた。

いや、でもさ、その仮面別にへんてこじゃないと思う。

変わっているだけで……

何て言うのかな、真実が見えそうな仮面と言えばいいのか。

まぁ、口に出さない方が良いよな。


「確かに、歩きながら情報収集することは一理あるが……」


街に入った俺たちは人が一番多い通りを避け、裏へ裏へと進んでいく。

街はパレードでもしているのか、装飾がすごいし、人もギュウギュウだった。

なるべく人がいない方へと進んでいく仮面の人の後を付いていきながら、後ろを振り返ると、表と裏の様に雰囲気が全く違うことに気がつく。

空気が変わったことをなんとなく感じ取った。

十華会長も黙った俺の前を歩く。


「しかし、それは時と場合による……こういう大国は厄介でね」


仮面の人、十華会長、俺の順番で裏道を進んでいく。

ごくりと息を呑む。

ヒリヒリと肌を刺激する感覚に鳥肌が立ちそうだ……いや、きっと立っているだろう。


「王とその家臣に話が通っていても……」


仮面の人物は行き止まりまで来て足を止める。

俺達もそろって足を止めると、異様に緊張が高まって来た気がする。


「誰もが支持しているわけではないからな」


よくわかんないけど、襲われたら十華会長だけでも身を挺して庇おう。

この世界は、異世界で法律とか関係ない世界だし、ゲームとかでも悪どい連中が大勢住まう世界だ。

盗賊や、ゴロツキに襲われでもしたらどうする。

もし、もしだ。 黒くて綺麗で艶がある髪を持ち、スラッとした美人の十華会長がそんな最低な連中に捕まりでもしたら、間違いなくR18の展開に持ち込まれて、あんなことやこんなことされて、最後には奴隷商にポイっとされるに違いない。

そのときには、きっと俺はサードライフに突入しているだろうけど。

そんな展開はごめんだ!


冷や汗を掻きながら、十華会長の顔色を伺う。

きっと俺と同じでビビって動けないだろう。


「ふむ、つまり……大臣の中でお前、いや、私達か……存在が邪魔と思っている奴がいると?」

「さすが―――だ。察しが良いな」


十華会長は顎に手を当て思案していた。

十華会長は見た目普段通りというか、ビビってすらいなかった。

……あれ、これ俺だけ深刻に感じちゃっただけなのか? 違うだろ? ピンチだよな今。

殺気っていうのを肌で感じるし、じゃりじゃりと摺り足が聞こえてくる。

これ、接近しているな。

あと左右の建物の影に何か金属の光ってるの見えるんだが……


「お前に誉められるとなぜか虚しい気持ちになるな」

「それは誉めた私も同じだ」


この状況でこいつら―――


「なんでそんなに冷静なんだよ! ほら見ろよ! 俺の後ろ見ろよ」


俺の訴えに仮面の人物と十華会長がやっと振り返った。

俺は怖いけど左右をキョロキョロと確認していた。


すると、


「落ち着け、慌てることはない」

「おまっ、無理だろ!!」

「ん? そうか、電車の男共の劣情の視線より小気味良いが? 」

「普段どんな電車乗ってんだよ!?」


なんだ!? こんな針の筵な視線に馴れてるとか嘘だろ。

俺は十華会長の前に立ち、振り返った。


そこには、いかついゴロツキが―――いなかった。


「へ?」


俺の間抜けな声がシンと静まるこの場に響く。


「……」

「……」


俺達を囲っていたのは、全身を黒一色の衣装で覆う変な連中だった。

額当てもしているし、忍者っぽい雰囲気だ。

………。

はは、忍者なんて現代にいる分けがない。

なんだコスプレ集団のようだ。


しかし、突き刺さる視線の刺々しさはなんなんだ?


「………誘い込まれたというわけか?」


無言を保っていた忍者(仮)が話しかけてきた。

ん? 誘い込む?


仮面の人は漆黒のローブをばさりと翻す。


「当たり前でだろう? そうなることは『知っていた』からな」

「チッ……殺れ!」


目の前にいた忍者(仮)達が一斉に俺達に襲い掛かってきた。

ふざけんな!こっちは身体能力が人並みなんだぞ!

魔法もスキルも使えないんだぞ!!


「会長下がって!!」

「ああ、君も下がるんだ!!」


十華会長を庇って敵対していたら、その十華会長に首根っこを捕まれ引っ張られてしまう。

なんとかバランスを崩さずにいれたが、なぜ引っ張ったのかを問い詰める前に、その答えが飛来して地面に刺さった。


「て、ちょっ、手裏剣!?」

「ふむ、異世界なら魔法じゃないのか?」

「冷静に分析してる場合じゃないぞ!? 野郎、投げてきやがった!!」

「しかし、盾がないぞ?」

「くっ、お、俺が盾になるから!!」

「しかし、それでは……あ、そういえば」


やばいやばいって!

一応俺達を守るために仮面の人が交戦してるんだけど、数が違いすぎる。

仮面の人がこっちを狙えないように斜線に入って戦ってるが、幾つかは抜けてくるし、狙いが甘いのか、足元とか、顔の横とかに刺さるくらいで済んでいるが、いつ当たっても可笑しくない状況だ。

十華会長は後ろでごそごそなにしてんの!?


視線を前に戻すと、忍者(仮)達の半数が地面に倒れ伏している。

すげぇ、仮面の人がやったんだよな?

仮面の人は、リーダーぽい先程話しかけてきた人物と残りのメンバー全員で戦っていた。


「チッ、貴様さっきから奇妙な術かスキルを使いおって!」

「これなら避けれまいっ」


忍者(仮)リーダーが腰に差した小太刀を抜き、仮面の人に斬りかかる。

仮面の人は上手く避けているが、周りから飛んでくる手裏剣も相まってローブを裂かれていく。

見た感じ結構な傷を負っている筈だが、パフォーマンスが全然落ちない。

逆に攻撃している忍者(仮)達が息切れを起こし、目に見えて動きが鈍っていた。

だんだんとマラソン後の選手のようになっているように見える。

動きが鈍くなっていく忍者達に手を触れていく。

なぜかそれだけで倒れていく忍者達。

最後に仮面の人は、ぜぇぜぇ言っている忍者(仮)リーダーに気安く手を肩においた。


「殺す気で来たんだ、もちろん分かってるな?」


すると、忍者(仮)リーダーの体がビクビクとなり、仮面の人を信じられないモノを見る目をして、ぐったりと地面に倒れた。

もう、ピクリとも動かない。

殺したのだろうか?

……いや、そうだろう。

殺したんだ。

倒れ伏すのは14人。

どれもが動かない。

そう、そうだ、ここは異世界。

ここが現実。

ここで第二の人生を生きていかなくてはならないんだ。

あっちの世界の感覚でいると命取りになることは間違いないだろう。

そんな気がする。


死体になった忍者(仮)から視線を上げ、それを行った仮面の人に声を掛けようとすると視界が何かに遮られた。

なにかをいう前にキンっという金属音と、その後に『ぐあっ』という悲鳴が聞こえた。


「ふむ、やはり、この本は盾になるな」

「……え、あ、ありがとう」


傷ひとつない、そう言って俺の視界を覆った神から配られた書物を十華会長が外した。

俺は足元に転がる苦無を見つけ、すぐ理解する。

どうやら、今のがなければ俺は死んでいたようだ。

その現実にぞっとする。

しかも、命に替えても守るつもりが逆に守られてしまった。

そうか、俺は本を盾にするなんて考えもしなかった。

いや、そもそも本の事をすっかり忘れていたくらいだ。

十華会長には感謝しきれない。

当然、戦ってくれた仮面の人もだけど。


「その行動は『知らなかった』」

「や、やめ、」


仮面の人は脇腹を押さえる15人目の忍者(仮)の頭に手を置いて話しかけてる。

脇腹には手裏剣が三枚刺さっていた。

仮面の人が拾って投げたのだろうか。


「あ―――」


忍者(仮)が糸が切れた人形のようにその場に倒れた。

仮面の人はボロボロになったローブを翻して振り返る。

穴あきローブから覗く手足は露出がない。

忍者とはまた違った感じの黒ずくめの衣装を着ていた。

腰元にある黒いベルトの金具だけが光って見える。


「今のを見たな?」

「え? ああ、うん」

「問題があったのか?」


頷く俺と、気になることがあるのか? と問う十華会長。


「いや、見たならいい」


仮面の人物は踵を返し歩き出す。

きっと仮面の人は、俺達にこの世界がいままでと違うことを教えたかったのだろう。

それに目の前で人の命を奪う行為を目の当たりにしたが、仮面の人に対して嫌悪感や、恐怖なんかは全く感じなかった。


「あ、ちょっと、もう追っ手なんて無いんだろ? そうだよな!?」

「しかし、このままでいいのか? 」

「追っ手は私の国内に着くまであるだろうな、そいつらはあとで連中が回収する放っておけ」


手をヒラヒラと向ける適当な返事をし、スタスタと歩いていく。

今度は表通りに出るようだ。


「君とお前の服装が目立つ、服屋とあとは預かり処に行く」

「まぁ、そうか制服だし」

「……」


十華会長から、お前も似たり寄ったりだがな、という毒舌の呟きが俺には聞こえたがスルーしておく。


今度はどこに行くのかを教えてくれた。

もしかしたら、いままでは監視でもされていたのかもしれない。

それにしても、異世界の服か……楽しみだな!

いや、男なら武器やにも言ってみたいが……


「お前呼ばわりか……おい、預かり処ってなんだ?」


むっとした顔をしながら仮面の人の後を追う十華会長。

この二人ホントに相性悪いな……


「……………ハッ、分からないのか?」

「こいつっ」

「まぁまぁ、ついてけば分かるって!!」


なんとか、仲良くやってくれないものか……

ため息を吐きながら付いていく



【ウェスウォール王国】

グランエル大陸の大国の一つ。

大陸の西端に位置する国家。

国境はドでかい壁で覆われている。

中心部にあるウェスウォール城からの景色は絶景である。

また、兵の上にあるため国内すべてを見回せる。

移動に時間が掛かるため転移魔法が使える魔法使いが常駐している。

城下町から国境まで徒歩で約2日の道のりがある。


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