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こい!俺の【王の冠(クラウン)】!!

カラマルクの南平原。

グランエル大陸の中心にある大きな平原であり、小動物も小型な魔物もゆったりくつろぐ平和な場所であった。

あった―――という過去形なのは、


「進撃!!進撃せよ!!」

「我らが王がついてくれる!」

「そっちは危険だ! 王達の戦いに巻き込まれるぞ! 距離を取れ!! 」


「滞空迎撃急げ! 所詮は蜥蜴だ!! 怯むな怯むな!!」

「ちょこまかと、こいつら!! 陣形を再編成せよ!!」

「後方より、マナ急上昇!!」

「亜人どもがっ! 魔法使い(ウィザード)隊打ち消せ!!」


大きな咆哮を上げ、空を駆ける竜に跨がる騎士(ドラゴンナイト)の部隊が上から魔法の雨を降らせ。

平原を縦横無尽に疾走する獣耳と尻尾をもつ軽装の戦士(ビーストウォリアー)が、敵対する相手を切り裂き。

部隊後方では急激に上昇するマナ濃度、エルフやハーフ種族達による大規模な魔法砲撃が行われようとしていた。

対するは、人族のみで構成された軍隊。

連携をとり、しっかりと対応していた。さらには相手よりも圧倒的に数が多く、押しヤられてはいるが今だ優勢なのは変わらない。


そう今ここには、数千の人の軍勢と他種族の戦いが起きていたのだ。


まさしく、ファンタジーな世界この上ない。

パソコンの画面越しに見ていた光景がリアルで体験できるとは思っても見なかった。

早くに死んで終わった人生だが、案外セカンドライフも悪くはない。

しかし、ここで戦っているのは本物の命。

蘇生の魔法も存在する世界だが、誰しもがそれを使えるわけではない。

それに、この戦いは共に戦う者の未来を勝ち取るための戦いでもある。

かくいう俺―禍月(まがつき) (しゅう)―も昔の価値観を引きずったまま、こんな戦場の最前線の一角にいるわけではない。

だから―――


「君たちはボクと同じ転生者だよね。あのとき一緒に飛ばされたよね?」


俺の前で、高校の制服を着るひょろっとした人物を前にしても、


「それは前世の話であり、今は俺達の国に攻め込もうとしている敵国の奴にしか見えないな」


そう冷たく返した。

慌てている俺と同じくらいの少年は、意味が分からないという顔をしていた。


「な? 何を言ってるんだよキミは!? 敵国!? ボクは勇者として召喚されたんだよ!君もそうだろ? そう……この大陸の勇者なんだ!! それに力もある【王の(クラウン)】だ」


少年の体を水色のオーラが覆い、頭に水色のメタリックカラーの王冠が出現した。


「そうさ、今は勇者だけど、いつかこの大陸をボクたちでまとめ上げれれば、平和はやって来るんだ。 そうしてボクが転生したみんなを導く英雄になる!!」


腕を広げ、そして言葉と共に身体の前で両手でガッツポーズをする少年。

な、わかるだろ? ボクに任せろよ? という顔を向けてくる。

ああ、おれの返答は決まっている。


「馬鹿じゃねーの? あと俺が呼び出されたのは勇者召喚陣じゃない」

「な!?」


俺も少年と同じく王冠を頭に出現させ、王冠と同色のオーラを身体に纏う。

しかし、なんで俺の色はこうも禍々しいかね。


「確かに、そうなったら平和かもしれないが、だからって反対する国家や種族の街を滅ぼすことはないだろう? 大体お前は国のお偉いがたに利用されていることがわかんねーのか? どうせ姫と婚約できるとか、言われたんだろう?」

「何故それを!?」


分かりやすく動揺すんなよ、こいつ絶対利用されてるわ。

なるほど、十華(とうか)会長が『大国ほど厄介』と言っていたのはこのためか……


「そういうのってさ、全部が上手く行った最後にさぁ……殺されるとおもうんだが?」

「嘘だ、ボクは信じないぞ! あんな禍々しい黒紫の色を纏うような奴の言うことなんて……」

「こ、この色は関係ないだろ!! 」


くっそ、俺が触れないでいた俺のオーラと王冠の色によくもケチをつけやがったな!

かっこいいじゃん!俺が選んだ訳じゃないけどさぁ!

それに仲間から畏怖の目を向けられたり、ひざまづかれたりするんだぞ!

俺への精神的ダメージ凄いよ!?


「だ、だが、ボクが攻め込んだ街は悪魔に乗っ取られたから、救いのために皆殺ししかないって! ないって!!」

「その街の連中にちゃんと話を聞いたのか? こっちに逃げてきた奴は言ってたぜ『水色の怖い化け物が襲ってくる』って」


膝から崩れ落ち、戦意喪失かと思ったらいきなり飛び上がり、力を【王の冠】を使いだした。

少年は背中に天使のような純白の翼を生やし空中に滞空している。

ちょっとした神々しさがあるのか、少年側の軍勢が、おおぉー、と声を上げる。


「いいや、騙されないぞ! そうやって精神的に俺を追い詰める【王の冠】が君の力だろ! その禍々しさが証拠だ!」

「おい、やめろ、ちょっと前まで、俺も『これ威圧する力じゃね?』とか思ってたから!精神的に来るんだよ!!」


少年側の兵士が、俺の纏っているオーラを見て後ずさりしてるの俺見ちまったんだからな!!

端から見ると水色のオーラを纏った天使と地面で禍々しいオーラを出す魔王みたいになってるんだけど。


「君は……いや、魔王! 国のため……そしてボクのために死んでくれ!!」

「そこは逆じゃね!? なんか私的な理由にしか聞こえなかったぞ!!」


少年は空中に浮かんだまま羽根を俺に向かって打ち出してくる。

確か会話する前に見たのと一緒だよな……物凄い勢いで地面を羽根で穿つやつだろ。

それが少年の【王の冠】―翼の王冠。


「みんなみんな、ぼろぞうきんのようになれぇ!!」


勇者の台詞じゃねぇよ!?

しかし、慌てることはない、あいつが持っているように俺も【王の冠】を持っているのだから。

冷静に、そして、俺の後ろで控えている戦いが好きじゃないけど、攻めてくるなら容赦しねーぞおら! っていうゲームの世界にしかいなかった異世界種族に被害がないように、全員を守れる力を……。


「こい!俺の【王の(クラウン)】よ!!」


この戦いの前か後ろか、いずれにしても異世界での俺たちの呼び名は良くて『何とかの王』悪くて『魔王』と呼ばれることとなった。


【王の冠】

No.154

能力名:『(ウイング)

ランク:B

特徴色:水色

説明:翼を生やし、空を飛んぶことが出来る能力。

純白の羽根がちょっとした神々しさを演出する。

操れる羽根は自らの翼だけである。

一般装備のアイアンメイルを楽に貫通し、毛羽で切り裂くことも出来る。

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