表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
我輩さまと私  作者: 雪之
本編
25/50

5-X.級長連中と俺・学園祭

 準備に追われつつ始まった学園祭。

 午前中に赤から茶までの組の出し物を見て、昼休憩で弁当が配られた。

 食堂で食べりゃいいのにって思ったが、部外者がわんさか居る状態で生徒に自由行動させないってのが理由らしい。

 まぁ……馬鹿は衝突するしな。

 俺ん家は親父と一番上の兄ちゃんが、いわゆるVIP席に居るはずだ。

 ちゃんとスーツ着てるよな? うっかり農作業着のまま来てないよな?

 心配しつつ弁当を食べ終え、午前の審査表の見直しをしてる間に刃がごみ捨てに行ってくれた。


「今日は真面目に働いてるから、雑用はオレがやってやる」


 とか言われた。何この格差社会。

 周りを見てみると茶壁も同じ感じで、一人で椅子に座ったままだ。

 一応やることは済んだし、暇そうだから話しかけてみるか。


「よう、茶壁」


「おう、緑原」


 元から空いてる席に座ってペットボトルのお茶を飲みつつ、空っぽの舞台を眺める。

 午前中最後の、茶の組の出し物の残滓が残ってた。

 うん、すげー魔力だよな。三年生の一クラス分の魔力なんて、この日以外なかなか見れないよな。


「茶の出し物、すごかったな」


「あー……だな」


「おいおいどうしたよ? なんか複雑そうだな」


「自分としては嬉しいんけどさ……すごすぎて、一位取りそうで」


「それっていいこと……」


 あ、違う。こいつにとっては違うか。

 茶が一位になったら、自動的に級長の評価に組み入れられる。

 てなると、茶壁としては嬉しくないのかもしれない。


「個人だったら、ほんと、すげーって思うしさすが自分の組だなって思えるんだけどなー」


「家……ごたついてるんだっけか?」


「……やっぱ、知ってるよなー」


 茶壁ん家は、兄ちゃんと茶壁の二人兄弟だそうだ。まぁ、ありがちだよな。

 そんでもって、茶壁本家。父親が当主。ってなると……跡継ぎ問題が発生する。

 順当にいけば兄ちゃんのはずなんだが、如何せん弟が優秀すぎた。

 兄ちゃんだって決して駄目なわけじゃない、茶壁が出来すぎなんだ。

 だから茶壁は、学園に入ってから功績をあげないよう、目に留まらないよう動いてるように見える。


「兄貴でいいと思うんだよなー……自分、兄貴好きだし」


「仲、いいんだな」


「んー……最近はちょっと駄目だな。兄貴も自分のこと意識してるっぽいし。

 だからこんな下らん騒動、終わらしてほしいよなー。

 いっそ、何か問題でも起こしてみんのも悪くないかも」


 上がたくさん居る俺にはなんとも分からないが、仲のいいはずの兄弟から距離を置かれるってのは……ちょっと、嫌だな。


「今日……親父と兄貴、来てないといいなー……」


 残念ながら来てるだろうな。ってのは、茶壁だって分かってるよな。

 なんとも言えないでいると、茶壁の補助役と刃が帰って来た。

 あと半日、ついでに俺らのメイン、頑張るかぁ。


 後夜祭の時間に、俺は級長室に居る。

 だって考えてもみろよ? 学校行事ってのはラブイベントの宝庫だろ?

 なのにいっつも刃が張り付いてるからそういうのできないだろ?

 どうしても変わらないなら、そんなん見ても目の毒だろ?

 だからいい、ここで眺めててやるっ!


「お前、歪んでるな」


「おめーに言われたくねえよっ!!

 そっちこそ彼女とか作んねーのかよ!」


「こんなに手のかかる級長が居るのに、そんなのできるか」


 ぐ……確かに刃が居なきゃ俺の学園生活は著しくレベルが下がる。

 でもだからってよおっ!


「ほら、教員の出し物始まったぞ」


 窓から見えるのは、校庭に集まった先生がそれぞれ魔力を打ち上げるっていう、打ち上げ花火みたいな出し物だ。

 さっきの級長の誓いもよかったが、これもいいよな。


「そういえば黒の二人、すごかったよな……」


「あそこまでやられれば、もはや呆れるしかないな」


 舞台上で恋人つなぎとか、アピールしまくりだろ。わざわざ手袋まで外してよ。

 どうみても黒峰の暴走だったけどな! あんまり強引だと嫌われるんじゃね?

 

「今頃どうしてんだかな。怒られてるといいのにな爆発しろ」


「一年生が黒峰さんを怒れるわけないだろ。馬鹿なこと言うなよ」


「うっせーな、ちょっとくらい僻ませろよ」


 窓の外では絶え間なくぱんぱん上がってるし、ちらほら生徒も出てきた。

 あー、何組かいちゃついてんぞこの野郎。

 校舎の中の連中も、影で見えてるからな? 隠れてるつもりだろ? 残念でしたっ!!

 いつもは人の居ない部屋でも今日は……って、あれ? あそこ、なんの部屋だっけ?


「おい刃、あそこの部屋って何だ?」


「うん? ああ、あそこは……」


 え? なに、なんで止まる?

 もしかして幽霊でもいんの!? ちょ、それは嫌だぞ俺っ!!!

 見たいけど見たくない! どうする俺っ!?


「…………なぁ稔、飯行こう。な、さっさと」


「え? ちょっとおい、さっきの部屋は」


「そんな部屋あったか? お前の気のせいだろ」


「は? いやおい、あるだろ? 見えるだろ!?」


「見えないな、何のことだかな」


「え、ちょ……マジかよ!? 見えるって言えよ! 俺見たのなにっ!?」


「疲れてるんだろ。ほら、さっさと行くぞ」


 もしかして俺、学園祭の幽霊とかいうの見た?

 うわやべぇ! 俺呪われるっ!?


「見えたのばれたら本当に呪われるだろうな……」


「幽霊、こっち気付いてないよな? な!?」


「黒の二人はやっぱり仲いいよな」


「今はそんなんどーでもいいからっ!」


 なんで刃はこんなに平然としてんだ!?

 別の日の明るい時間にその場所を見てみたが、やっぱり窓の中は一切見えなかった。

 マジで幽霊か……どうしよう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ