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我輩さまと私  作者: 雪之
本編
21/50

5-X.級長連中と俺・説教

 あっという間に夏休みは終わるもんだ。

 登校初日。いつも通り始業式があって、いつも通り舞台上に上がらせられる。

 これって意味、あんのかなぁ……。

 だって見てみろよ、半分近くが机の下で宿題やってるぞ?

 だったら素直にその時間にしてやればいいのに。

 三年生は元から量が少ない上、ほぼ俺の家に居た刃の集中講義のお陰で完璧に終わってる。

 ……辛かったなぁ。

 学園祭、俺出れないし関係ないんだよな。

 刃も俺と同じく出れなくなったのは正直、悪い気がしてる。

 けど学園の決まりとか言われたら、逆らえないよな。


 級長室の空気の入れ替えをして刃が色々やって、やっぱ初日は慣れなくて疲れるよなーってことで食堂に行くことになった。

 んだけど……なんだ、これ?

 入ってすぐに騒がしい……つか、色めき立ってるって言うのか?


「おい刃、これなんだと思う?」


「どうせどっかの誰かが色恋沙汰でも起こしたんじゃないか」


 あー、それならこんな空気になりそうだな。

 新学期早々お盛んなこった。羨ましくなんてないからな!?

 強がりやがって、みたいな視線やめろよなっ!

 そんな刃の生暖かい視線を無視して別室に入ると、そこはまた違う意味で騒がしかった。


「黒峰様。音無嬢に対し、一体何をなさったのですか」


「何と言われても……何もしておらぬ」


「では何故、音無嬢はあんなにも怒っていたのですか。

 私に一般常識を教わるようにとのことでしたが、どういった経緯でそうなったのでしょう」


「それは……」


 黒峰が清水に説教されてる!?

 赤山と青川はそれをニヤニヤ眺めてて、白空サンと補助役は静かに飯食ってる。


「おいおいー、どしたん? すげー騒ぎになってっぞ?」


 ドアのところで立ち止まってたら、茶壁が来た。

 俺もよく分かんねーからとりあえずそれぞれ座って、聞き耳を立てるまでも無い話を聞くことにした。


「お心当たりは無いのですか?」


「心当たり……と言うなれば、先程のものかも知れぬ」


 清水が続きを促すと、渋々話し始めた。

 って……おい黒峰、それはさすがに無いだろ……。


「……つまり黒峰様は、音無嬢の了承もなしに抱擁し、服に手をかけたと仰るわけですね」


「……拒絶はされておらぬ。手をかけたと言っても、数個ボタンを外しただけだ」


「素肌に触れていますね?」


「それは、そうだが……何の問題がある?」


 清水の背後に紺色の魔力が見える……あれだ、青川と同じタイプだ。

 怒らすと地獄を見るタイプ。超怖ぇ。

 ついでに何故か白空サンもめっちゃ睨んでる。超怖ぇ!

 そりゃ、黒峰のやったことは……相手によっちゃ、アレだよな。

 でもなぁ……補助役でずっと一緒に居るんだろ? 愛とか情とか芽生えるもんじゃないの?

 芽生えたらいいよなぁ……。


「俺も女の子の補助役が欲しかった」


「お前の世話してくれる女子がいると思うのか?」


 思わねえよ、分かってるよ! 言ってみただけだよ!

 あーあ、あと一年遅く生まれてりゃ、咲を補助役に出来たのになぁ。


「では、不肖清水が黒峰様に……男女交際に関する一般常識をお教え致します。

 それを聞いた上で、音無嬢への行為をお考え下さい」


 それから清水の男女交際講座が始まったんだが……そこから?

 手を繋ぐとこから? 俺らいくつ? そんな段階?


「手を繋ぐだけでそのような……繋ぎ方による関係性などがあるのか」


 あー、いわゆる恋人つなぎな。

 確かにそれやってんの見ると、こいつら付き合ってんのか爆発しろこの野郎って思うな。


「抱擁は交際後期にするものなのか……」


 そうとも言えないけどな?

 まぁそこまですんなら付き合ってるって言ったほうがいいよな。


「それ以降にもすることがあるのかっ!?」


 なぁ黒峰……お前、もう少し娯楽に手を出したほうがいいぞ?

 魔術書ばっか読んでるから知識が偏るんだよ。思春期真っ只中の青少年だろ俺ら。


「……以上が、男女交際の一般常識における基礎です」


「これで基礎なのかっ!? 世間ではこのような珍妙で高度な規則が存在していたとは……」


 珍妙言うな、お前の頭の中のが珍妙だから。

 頭を抱えてる黒峰を眺めてると、隣のテーブルから笑い声が聞こえてきた。


「あー、すっげ、腹いてーっ!」


「茶壁さん、笑いすぎです」


「いやー、でも草薙くんも笑い堪えてるっしょ? 我慢はよくねーよ我慢は」


「笑うより呆れてるけどな」


 疎い以前の問題だ。子供かお前はって言いたくなるな。

 そんで、それをそこまで拒否されて無いってことは脈ありだろ? 爆発しろ!


「音無さんだっけ? いやー、そっちも大概鈍いよなー。

 どーなんのかね、あのカップルは」


「……黒峰家を考えれば、お互い鈍いままの方が幸せかもしれないですね」


 刃がぽつりと呟いて、俺も茶壁も口が塞がった。

 そう、だよなぁ……あの子、無色で普通の家の子だもんな。

 黒で黒峰で次期当主でってなったら……


「あの家じゃ、キツイだろうな」


「自分もそう思うわ」


 近親婚がベストで、さすがに現代でそれは無理だろってなったのに同じ色からしか探さないんだもんな。

 恋愛なんて、しないほうが楽だったり……するの、か?


「ふむ……では、本人の了承を得られるよう動けばよいのか?」


「音無嬢がいいと言えば、それがお二方の一般常識になるのではないでしょうか」


「……ならばそうしよう。為になった、感謝する」


 数日後、清水に自信満々に現状報告をした黒峰は……うん、ただのガキだなありゃ。

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