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我輩さまと私  作者: 雪之
本編
15/50

4-1.電車

 多くの制限がある学園でも、夏休みは存在する。

 在学中は許可なく一般社会に出ることが許されない為、決められた範囲にしか出歩けない。

 けど、普段校舎と食堂と寮のどれかにしか居れない身にとって、制限があっても出歩けるのは嬉しいことらしい。


 夏休みが始まって一週間。

 特にやることもないからと宿題をこなしていたら、いつの間にやら終わってしまった。

 少なからずあった魔力操作や歴史の記述問題に関しては、我輩さまから半強制的に受けていた個人指導のおかげか、すんなり解けた。

 一年生だからか、大した量は無いのかもしれない。


 隣近所のクラスメイトはみんな、学園に申請を出して外出している。

 配布資料によると、学園所有の施設で親族と過ごせるらしい。

 海や山や川や、日程の制限はあれどテーマパークまで。

 よくもまあここまで揃えたものだ。

 義務教育を終えたばかりの人間を半強制的に集めたのだから、それ相応の待遇をしないといけないと思っているのかもしれない。

 それでも学園外に出ない生徒は少ないながらも居て、教師も居る。

 そうなれば校舎も食堂も、もちろんながら寮もいつも通りに開かれている。


 もう夜と言っていい時間だけど、日が高いせいでまだ夕方のようだ。

 軽く身支度を整えてから外に出ると、むありと蒸し暑い空気に襲われ、すぐさま食堂へ入ればそこは再び冷房の効いた心地よい温度だ。

 片手で足りるだけの生徒が食事を摂る中、私も今日の夕飯を受け取る。

 冷しゃぶとサラダと冷奴、ご飯にお味噌汁。夏らしく、温めなおしが必要なく。

 常に人が溢れる普段とは違うメニューは、最初は新鮮だったものの数日経てば慣れてしまった。

 言ってしまえば少し手を抜いているのだろう。当たり前だ、寮内にはいつもの一割程度しか居ないのだから。

 それでもいつも居る席に座り、いつも通りに食べる。

 きっと今日だって別室は開いているのだろう。

 だからといって、一人で入るつもりはないし、この料理ならどこでも一緒だろう。


 夏休みに入る前、茜先輩とお茶をした時に聞いた話によると、茜先輩はずっと家に居るそうだ。

 なんでも、それぞれの家は学園の手が触れられないらしい。

 考えてみれば当たり前だろう。存在自体が魔力持ちの集合体なんだから。

 制限するしないの前に、学園よりも魔力に精通している場所だ。


 ということは、我輩さまも家に帰っているんだろう。

 日々飛んでくる薄墨色の魔力や、部屋に入る度飛んでくるぷーさんが少し懐かしい。

 クラスメイトも居なく、我輩さまも居ない。

 そう思うと、この場所で私は本当に一人きりなんだ。

 だからといって他の組に近付いたりはしないけど。

 もそもそと食べ進めればすぐに終わり、部屋でも飲める冷たいお茶をわざわざ取りに行くこともない。

 食器を片付け部屋に戻ろうと立ち上がると、食堂の入口から真っ黒な姿が入ってきた。


「む、小娘か」


 真夏でも変わらない、真っ黒なローブ。

 フードを目深に被って、横には真っ黒な毛の塊。


「我輩さま、居たんですか?」


「久々に手が空いたものでな、戻ってきた。小娘よ、ついてこい」


 返事を待たずにすたすたと歩いていった先は、別室だった。

 食事をしている他の生徒からの視線を気にしつつ追いかけ、黒い布のかかった椅子に座る。

 最初にお茶を持ってきてくれた人に食事を済ませたことを伝えると、我輩さまの分だけ運ばれた。

 メニューは一緒なはずなのに、やっぱりこの部屋の中だと違う物に見える。

 火を通して時間が経った冷しゃぶでもなく、小分けにしてラップをかけられていたサラダでもなく、水分の染み出た冷奴でもなく。


「なんだ、食べたのではなかったのか」


「……食べました」


 私の視線に気付いたのか、我輩さまは首をかしげた。

 作り立てというのは大事なんだな……。


「して、小娘よ。この数日何をしておった」


「宿題です」


「出かけぬのか」


「行きたい場所もないので」


 他に誰も居ないからか、プラズマさんが私の膝の上でくつろいでる。

 つやつやの毛皮を撫でると、普段とは違うものの気持ちがいい。

 漆黒兎、だったか。クラスメイトに聞いた話だと、小さなキーホルダーサイズでも結構な値段のする高級品だそうだ。

 この触り心地のよさも納得できる。


「我輩さまはどうしていたんですか?」


「家と、それに連なる場所へ顔出しだ。

 長期の休みでなければ時間が取れぬからな」


 食事しつつの話によると、黒峰家としての仕事だそうだ。

 歴史のある家ともなれば縁は広く、本家の人間にお目見えしたいという人間も多く。

 かといっておいそれと当主が赴くわけにもいかず、かといって全てを受け入れるわけにもいかない。

 そして白羽の矢が立つのが我輩さまだ。

 当主が必要と判断した会合なり面会なりに出席する日々だそうだ。


「一応の場所は巡ったが、まだまだ出てくるであろうな……」


「ぷ……」


 多分、気の進まない面会に辟易しているのだろう。

 普段よりも疲れた様子で、プラズマさんもくたりとしている。

 毎日毎日部屋にこもりきりの私には、到底真似できない。


「明日は本家に顔出しだ。いい加減、車での移動も飽きてきた」


「電車で行けばいいじゃないですか。駅、遠いんですか?」


「駅は……あるにはあるが」


 食事を終え、箸を置いたその表情は、前にも見た気まずいものだった。

 ああ、なるほど。


「乗ったことないですか」


「……電車は、見たことはある。しかし乗る機会は無かったな」


 闇の本家の息子ともなれば、そうそう一般庶民の集う場所に行く機会がなかったのだろう。

 魔力持ちというだけで隔離される社会だ。所有量の多い子供ならば尚のこと離されるだろうし、何より触れ合う必要もなかったのかもしれない。

 青の補助役……清水さんも言っていた。一般社会の常識に乏しいと。

 でもまぁ、車で運んでくれるならそれはそれで楽だろう。

 私は逆に、自家用車に乗ったことがない。

 移動はもっぱら、公共交通機関か徒歩だ。


「小娘は、電車に乗ったことがあるのか?」


「はい。ここに来る時も、山の麓の駅まで電車で来ました」


 幸い駅から学園までのバスが出ていた。路線バスではなく、学園所有のだったけど。

 普段は敷地外に出てはいけない決まりだから、必要もないだろう。

 駅だって今時、無人駅だったくらいだ。


「ふむ……。

 小娘よ、明日の朝一番に出てくるのだ」


「は?」


「日帰り故、荷物はさほど必要なかろう。制服はやめておけ、外では目立つからな」


「それはどういう……」


「そして目的地はこの駅だ」


 空中で指を動かすと、薄墨色の文字が浮かび上がる。

 聞き覚えの無い駅名だけど、短いから覚えやすい。


「外出手続きはしておく。移動の際は小娘に任せる」


 それだけ言って、すたすたと出て行った。

 これは……ここからさっきの駅までの、道案内をしろということか?

 乗ったことがない電車に、経験者と共に乗ると。

 なんだか小学校の遠足のようだ。

 確か、動物園に行ったのだったか。記憶が定かではないけど。

 ああ言われては拒否はできないのだろう。それに、明日はますます予定が無い。

 ならば付き合うのもありだろう。

 ……思えば、入学から今まで、キャンプ以外で学園外に出るのは初めてだ。

 制服は駄目とのことだから、私服か。

 普段どのような格好をしていたのか思い出せず、少ない荷物をひっくり返すことになってしまったのは、どう考えても我輩さまのせいだ。


 翌朝。

 どうにか探り当てた私服を着て、小さな鞄に最低限の荷物を詰めて。

 外出準備が整ったところで部屋を出た。

 まだ早い時間だし、そもそも寮内の人数が少ないから誰ともすれ違わない。

 共有部分においてあるパソコンの電源を入れ、路線図の確認をする。

 細かい文字の中から目的の場所を見つけると、線を辿り乗換駅を携帯端末のメモに取った。

 目的の駅の数駅隣に有名な海水浴場の地名があったから、海沿いなのだろう。

 到着まで何時間かかるのやら。

 なんといっても、ここから最寄り駅までだって結構な時間がかかるのだ。

 我輩さまは外出手続きをしてくれると言っていたけど、駅までの移動手段はどうするつもりなんだろう。

 徒歩? いや、無理だ。


 そんな不安に駆られ始めた時、薄墨色の魔力が飛んできた。

 共有部分は男女の寮の合流地点だから、ここに居れば会うと思っていたのに。

 パソコンの電源を落とし、鞄を持って玄関に行くと、そこには一台の車が停まっていた。


「おはよう、音無さん」


 運転席から顔を出したのは、たびたび見かける青の先生。

 後部座席を見ると、フルスモークのガラスの奥に影が見えた。


「駅まで送ることになったんだ。乗って」


 助手席を指差され、それに従いドアを開ける。

 車のことはよく分からないけど、色とか、シートとか、なんとなく高そうだ。

 先生の車なのか学園の車なのか、どちらにしても景気のいいことだ。

 座ってシートベルトを締めると動き出し、学園の堅牢な門をくぐった。

 音も振動も少ないからこそ続く沈黙。

 外の風景はただただ森だし、先生は運転に集中してるし。

 手持ち無沙汰でミラーを見ると、その奥に黒い姿が映っていた。


 喪服のような真っ黒なスーツ。

 スーツと揃いの真っ黒なネクタイ。

 黒に近いグレーのシャツ。

 真っ黒な髪に、真っ黒な瞳と紫の虹彩。

 それと対照的な、真っ白な肌。

 長い脚は広い車内の運転席に届きそうな程で、緩く組まれていた。


「……何だ、小娘」


 まじまじと観察していたら、ふいに視線が向けられた。

 いつも目元を隠している長い前髪は、今日は軽く横に流されている。

 

「美人ですね」


「何のことだ?」


 なんでもないと答え、沈黙のまま走ること数十分。

 車どころか人の気配すらない駅に辿りついた。

 改札のまん前に停車してくれ、下りる前に注意事項を知らされる。

 まず、この外出は黒峰家に対しての特例であり、私は我輩さまの指示に絶対に従うこと。

 次に、学園と黒峰家の敷地外では魔力を使わないこと。

 そして、携帯端末は発信機の役割にもなっているから、出来る限り手放さないこと。

 最後に、帰る時は一報入れること。


「お家の人が送ってくれるようならそれでもいいけど、連絡は絶対。

 何時になってもいいから、必ずするように」


 一際念を押され、何度も返事をしてようやく納得がいったのか、何度もこちらを振り返りながら戻っていった。

 なんだこの過保護な感じは。


「本家の者がこのように外出することなど無いからな。教員としても、気を遣うのであろう」


 そう言うなり、すたすたと改札を通り抜けた。

 違う、そうじゃない。


「我輩さま、切符買ってないです。入っちゃ駄目です」


「入る時に何かするのか?」


「タクシーじゃないんですから。とりあえず乗り換え駅まで買いましょう。

 販売機は使ったことありますよね?」


 無言で渋い顔をされたから、使ったことが無いのだろう。

 どこまで一般社会から隔絶されているんだ。

 そういえば学園内にも無かったか。ほとんど支給だし、他は売店だし。

 切符の販売機に小銭を入れ、光ったボタンを押すというありきたりな操作でさえおっかなびっくりしていた。

 そんなことをしつつ無人改札を通り、すぐ目の前のホームに立つとすぐ、一日数本しか来ない電車が迫ってきた。

 田舎の山の麓のこの駅は、線路は単線、車両は四両。ついでに開閉はそれぞれが扉の横にあるボタンを押して行う。

 プシュっと音を立てながら開き、乗り込む。

 ここより更に山奥から来た電車に客は居ず、先頭車両の運転席の近くという、前方が見える位置に座ってみた。


「電車とは……様々な作法が必要なのだな」


「ここは無人駅ですからこの程度ですけど、他の駅はもっと違いますよ」


「何!? あれ以上何をするというのだ」


「その都度教えますから、我輩さまは怖がらず指示に従ってください」


 少し不満気ながらも頷いたので、あとは目的の駅に着くのを待つだけだ。

 山と山の間を通る電車の窓は、林と田舎を交互に映し出している。

 田舎だな、と思うだけの私とは違い、我輩さまはそわそわと目線だけを彷徨わせていた。

 電車の中や運転席の中、そしてその先に敷かれた線路。

 興味は尽きないらしい。


「人も居ませんし、近くから覗いても怒られませんよ」


「な、何を言う。我輩はそんなものに興味など……」


 そう言いつつも、目線は線路に釘付けだ。

 初めて乗るのだからはしゃいで当たり前なのに、なんで変に我慢するんだろう。


「ほら、来てください。次の駅から人が増えますから、見れなくなりますよ」


 立ち上がって我輩さまの手を取ると、素直に引っ張られてくれた。

 そのまま運転席の横にある窓の前に立ち、すぐ隣に招く。

 木々を縫って走る風景は、真夏だからか新緑が眩しく、きれいだ。

 電車が好きな人にとってはたまらない風景だというのを、クラスメイトから聞いたことがある。

 朝が早いお陰で人は居ないけど、いわく、鉄の名所だとか。よく分からないけど。


「ふむ……いい景色だ」


 がたんがたんと直線を進み、遠くに駅が見えてきた。

 予想通りホームにはちらほらと人の姿があったので、早めに座っておく。

 どの位置に座らせるか悩んだけど、この電車なら大して混まないし、問題は無いだろう。

 八人掛けを二人で使うくらいの人数で、混雑とは無縁だ。

 電車を下りる時にボタンを押させてみると、可哀想なほどうろたえ、面白いほど驚いていた。

 ただ、問題はここから。

 乗り換えの駅は多くの路線が乗り入れる、いわゆるターミナル駅だ。

 一人でならば何の問題も無いけど、我輩さまと一緒となるとどうなることか。


「こ、小娘……何だ、これは……」


「路線が変わりますので、ここで乗り換えます。人が多いのではぐれないでください」


「な、何故こんなにも人間が居るのだ……」


「通勤ラッシュですから。学生が居ないだけ、少ないほうですよ」


 スーツ姿の人間がひしめき合う駅構内に、脚が進まないようだ。

 無理に割り入ろうものなら衝突の恐れがあるし、それで揉め事が起こったら面倒だ。

 きっと電車が来たばかりだろうから、落ち着くまで端っこで待つとしよう。

 周りより頭一つ分背の高い我輩さまなら、息苦しくなることも無いだろうし。


『――――』


 ざわめきの中からこちらに聞こえる、小さな声。

 何事かと思うと、それは若い女性のものだった。


『かっこいい』


『背、高い』


『素敵』


 なるほど、そうか。我輩さまは美人じゃなく格好いいなのか。

 人ごみに辟易している表情でも人目を集めるようだ。

 クラスメイトが言っていたように背も高い。


『声かけてみる?』


『迷ってるのかも』


 友人同士なのか、黄色い小声ではしゃぐ声。私の姿は見えないらしい。

 さて、どうするか……。

 何より、我輩さまには聞こえているのか?


「小娘……ここは空気が悪い。先があるならば急ぎ行け」


「先もなにも、まだ一割くらいしか進んでません」


「何……!? なんと遠いのだ……信じられん」


「車のほうが楽ですよ。今からでも戻りますか?」


 ここからなら、学園前の駅に戻って車を手配するほうが早いだろう。

 電車に乗るという目的も果たせたのだし、無理することはない。


「……いや、行く。小娘よ、行くのだ」


「はぁ……じゃあ、ついてきてください」


 頑固だ。けど、行くと言うなら行こう。

 人が少なくなったタイミングで歩き出すと、意を決したように歩き出した。

 ……のは、いいんだけど。

 

「こ、小娘、待て……」


 歩いてすぐに人を避けきれず止まり、早足になり、止まり……ぶつからないのが奇跡と思えるくらいの歩きっぷりだった。

 これはもう、一人で歩かせるのは不安でしかないだろう。


「我輩さま、手を出してください。離しちゃ駄目ですよ」


「う、うむ……」


 数歩戻り、我輩さまの手を取ってまた歩き出す。

 目的のホームまで辿り着くと、すぐに電車が入ってきた。

 大量の人間を吐き出し、出来た隙間に無理矢理入り込む。

 この路線では終点まで乗るから、扉の近くより奥まで行ったほうがいいだろう。

 我輩さまの腕を抱えて進み、車両の中心部のつり革に捕まらせる。

 と同時、ゆっくりと電車は走り出した。

 林の混じった市街地から、都心部へ。

 停車駅の少ない電車だから速度は速く、さっきの電車と違って景色を楽しむというのは難しいかもしれない。

 初めての満員電車でそれどころではないだろうけど。

 私はまたしても聞こえる黄色い小声に悩まされ、かといって人と居るのに聴覚を弱めるのもどうかと思い、黙って我慢することにした。

 この声量なら本人にも聞こえていそうだけど、押し合いへし合いの車内で反応する余裕はなさそうだ。


 人間が下り、乗り、進み、止まり。

 それを十数回繰り返しただろうか。

 ようやく乗り換えをする終点の駅に辿り着き、久しぶりに外の空気を吸い込んだ。

 効きすぎる冷房と、人間の汗とそれを誤魔化す為の香料とで、私の嗅覚は限界に近い。

 いっそ閉じてしまおうかと思ったけど、我輩さまだって同じ思いなのだからと我慢したのが間違いだったか。

 どっと降りたタイミングを外し、ホームが少し空いてから次のホームへ向かう。

 時間は通勤ラッシュを過ぎたくらい。ホームの屋根をはみ出して突き刺さる日差しが痛い。


「小娘よ……まだ着かぬのか」


「あと二本ですね。次からはあまり混まないと思いますよ」


「遠い……」


 手を引くとぐったりとしながら続き、また次の電車へ。

 最後の乗り換えの時は何本か見送り、その駅が始発のものを選んで乗った。

 あとは目的の駅まで座っているだけ。

 久々の遠出に少し疲れたけど、我輩さまはそれ以上だろう。

 座った途端に背もたれに寄りかかり、大きなため息をついた。


「魔力を持たぬ者はこんなにも苦労するのか……」


「いえ、学園生でも電車は普通に乗りますよ」


「なんという……」


「帰りは車で帰ったらどうですか? 私は送り届けたら一人で帰りますから」


「……ならぬ。我輩の用が済むまで待っておれ」


 多分、家まで一緒に行くことは無いだろう。

 ということは、駅前に何か時間を潰せる場所があるのだろうか。

 最悪、数駅戻って海水浴場でも眺めていればいいか。


「小娘よ、手を出すのだ」


 片手で目元を被い、残ったほうをこっちに差し出される。

 いつものようにその手を握ると、ぱたりと力が抜けた。


「我輩は疲れた」


「まだ着いてもいませんよ」


「朝が早かったのだ」


 そういえば、早めに身支度を済ませたはずなのに、もっと早かったんだったか。


「お疲れ様です……?」


「……しかし、よい経験をしている。故に、これでよいのだ」


「はぁ……」


 手の平からは、相変わらず温かい温度が伝わってくる。

 今日はぷーさんは留守番だけど、一人で何をしているんだろうか。

 次に会った時、たくさん遊んであげよう。

 我輩さまは本当に疲れているようで、目元を被ったまま黙ってしまった。

 眠ってはいないようだけど、そっとしておこう。

 がたんがたんと揺れる電車は都心部から住宅街を進み、そしてトンネルに入った。


 窓の外は真っ暗で。右隣も真っ黒で。

 外の雰囲気が変わったのが分かったのだろう、我輩さまの目が開き、トンネルを抜けるのをじっと待つ。

 長い長い、暗い暗いトンネルは、ようやく終わるようだ。

 端から差し込む光が大きくなり、視界が一気に開けた。


「うみ……」


 青い、青。

 空も青くて、海も青くて。

 浮かぶ雲と太陽は白くて。

 視界は青と白で埋め尽くされた。


「なんだ、海は初めてか」


 トンネルには興味があったようだけど、広がる景色には特に感動は無いらしい。

 それもそうか、地元なんだから。

 それにしても、我輩さまに海って……なんだかイメージに合わない。

 多分、この真っ白な肌のせいだろう。

 岩場はだんだんと砂浜に移り変わり、それに比例して人の姿が増え始めた。

 様々な色の水着は青と白だけだった視界を侵食し、もはや虹色だ。

 色の強さが頂点に達したところで電車は止まり、車内に居たほとんどの人間がそこで下りていった。

 妙に浮かれた雰囲気の人々は、海水浴客だったらしい。

 日焼け止めの甘ったるい匂いだけを残し、電車は再び走り出した。


「そういえば、家から見えたな。遠くにだったが」


「我輩さまは、海に入るんですか?」


「……入った記憶はあまりないな。海に近いとは言っても、家は森の奥なのだ」


 海の近くだけど森の奥。聞くと不思議な場所だ。

 降りてみれば分かるだろうかと考えていると、ようやく目的の駅の名前が読み上げられた。



 降りたところは、学園前の駅ほどではないけど小さな駅だった。

 それでも自動改札機はあるし、駅員さんも居る。

 改札機を通る時に一悶着あったものの、これはもう、仕方がないだろう。

 一つしかない出口を出ると、高い建物が無いからか、はたまた日が上ってしまっているからか、どこもかしこも日差しに照らされていた。

 嗅覚をどうこうする必要が無いくらいに嗅ぎなれない香りが漂ってきて、嫌が追うにも海の存在を主張されている。

 近くに見える木々は、我輩さまの言う森の一端だろうか。

 その方向へすたすたと歩き始め、遅れないようそれに続く。


「我輩さま、傘を」


「傘?」


 小さな鞄に入れておいた折り畳みの日傘を歩きながら広げ、手渡す。

 真っ黒な服装で炎天下を歩いたら、きっと身体によくないだろう。あと、日焼けが痛そうだ。


「これは小娘の物だろう」


「私は平気です。肌を出してないので」


 散々悩んだ服装は、ワンピースにカーディガンにタイツと、とてもシンプルなものだ。

 肌を出さず、けど暑くないというのは加減が難しいけど、今日は成功した。


「……どちらも顔は出ているであろう。こちらに来い」


 傘と一緒に手を引かれ、横にぴたりと並ばされる。

 大きめの日傘はすっぽりと影を作り、そこでようやく、顔がひりついているのに気付いた。


「少し歩くからな。小娘はしばし、そこで待っておれ」


 どこか、時間を潰せる場所に案内してくれるのか。

 見慣れぬ場所で自分で探すのも大変だろうから、教えてくれるならそれに越したことは無い。

 手を繋ぎ、傘を差し、横に並んで歩く。

 今日は我輩さまだけでなく、私にとっても初めてのことが出来てしまったようだ。


 アスファルトの道をしばらく歩くと、砂利を踏み固めた道に変わっていった。

 そこはさっき見えた木々の手前で、小さな家が建っていた。

 木目が目立つその建物は、ガラスの入った扉により何かのお店だと伺える。

 迷いなく進み扉に手をかけると、チリンと鈴の音を鳴らしながら開いた。


「いらっしゃい」


 喫茶店だろうか。

 外見と同じように木の家具が目立ち、椅子とテーブルがいくつか置かれている。

 キッチンの中には年配の男性が立っていて、その前には女性も居た。


「久しいな」


「まあま、ぼっちゃん!」


「おお……立派になって!」


 ぼっちゃん……小さな子供を呼ぶような言葉は、こんなにも育っている我輩さまには似合わないけど、きっとずっと前からの呼び名なのだろう。

 我輩さまも気を悪くすることなく、むしろ気を緩めているように感じた。


「今日は本家に行っている間、この娘を預かって欲しい」


「まあま、可愛らしいお嬢さん!」


 視線が集中してるのが分かり、日傘をたたんでいるのに上手く留められない。

 なんだ、この変な感じは。


「小娘よ。夕刻には戻る故、それまで待っているように」


「はぁ……」


「では、行ってくる」


 チリンと鈴を鳴らして出るのに続くと、そこにはいつの間にか真っ黒な馬車が止まっていた。

 黒い馬に黒い箱、黒い運転手?

 黒々しい、無駄に。

 慣れた様子で乗り込み、馬のいななきと共に走り出した。

 あれはきっとお尻が痛くなるやつだ、振動がすごい。


「…………」


 あっという間に置いてきぼりになってしまったが、どうしようか……。

 ここに居るようにって話だけど、本当にいいのかな。

 試しに中に入ると一番奥の席に案内してくれて、扇風機をこちらに向けてくれた。


「暑かったでしょう? ちょっと待っててね」


 にこにこと笑顔を絶やさない女性……いや、もうお婆さんと言ってもいい年齢か。

 その言葉に、キッチンのお爺さんが何か作業を始めた。

 店内は冷房はかかっていない様子なのに、なぜか涼しい。

 窓という窓が開いていて、真っ白なカーテンが揺れているから風がよく通るのか。

 木と、土と、塩気と。

 たくさんの匂いが風に乗ってくる。


「はい、お待ちどうさま」


「ありがとうございます」


 お婆さんが持ってきてくれたのは、ピンク色の飲み物だった。

 足付きの丸いガラスコップに、生クリームが飾られている。

 甘い匂いと見た目で、多分、中身が分かった。


「いちごみるくですか?」


「そうそう、ぼっちゃんが昔から好きな物なの」


 我輩さまの好きな物……この、いちごみるくが。

 ストローで一口吸うと、甘い牛乳の味と、甘酸っぱい苺の味と、柔らかい生クリームの味とが広がる。

 市販の物とは全然違う、手作り感のある味だ。


「ぼっちゃんが女の子を連れてくるだなんてねえ……嬉しいわあ」


「電車で向かうと言われ、案内役になっただけです」


「まあま、電車で? 案内役をさせるくらいだから、仲がいいのねえ」


 仲がいいかと言われると困るけど、学園内では一番一緒に過ごしているから否定まではしないでいいだろう。

 向かいの椅子に浅く腰掛けるお婆さんは、さっきからずっとにこにこしている。

 変にマイナスなことを言わないほうがいい。


「お嬢さんとぼっちゃんは、恋仲かしら?」


 ストローに口をつけていたから、突然の言葉に息を吹き込んでごぼりと音を立ててしまった。

 こぼれなかったからよかったものの、すごく行儀が悪いことをしてしまった。

 それにしても、恋仲。どう見てもそうは見えないだろうに。


「学園内で、級長と補助役という関係です」


「まあま、残念だわ。ついにぼっちゃんに春が来たと思ったのに」


「多分、そういう相手は居ないかと……」


 授業中は知らないけど、放課後はほとんど私と一緒に居る。

 たまに黒の生徒が来るものの業務連絡しかしないし、個人的に話している姿を見かけたことはない。

 茜先輩とは相変わらずじゃれ合う様な言い合いをしているけど、焔さんとの関係を大事にしているから我輩さまとはそうはならないだろう。多分。


「それでも、こんな遠くまで一緒に来るのだから、仲が悪いわけではないのね」


「まぁ……はい。いいほうだと、思います」


「相合傘をするくらいだものねえ」


 また吹いてしまった。

 そういう事を言われるたびに、妙に頭の中が熱くなってしまっているのは、熱中症なのだろうか。

 冷たい物で身体を冷やそう。

 にこにことこちらを見るお婆さんと、仕方ないなと笑っているお爺さんと。

 この二人は、我輩さまとはどんな関係なんだろう。

 ぼっちゃんと呼ぶということは、小さい頃からの付き合いなのかもしれない。


「あの、わ……先輩とお付き合い、長いんですか?」


「ああ、そうねえ。ぼっちゃんが小さい頃からよく知っているわ。

 話、聞きたい?」


「興味はあります」


 どうせ夕方まで待てと言われているんだ。

 暇つぶしできるような物を持ってきているわけでもないし、話をしてくれると言うなら聞いておこう。

 正面の椅子に深く腰掛け直し、エプロンをぽんとはたいてから話を始めた。


「ぼっちゃんの家は、そこの森を抜けた崖の上に建っているんだけどね……」


 我輩さまの家。黒の本家、黒峰家は、海沿いの崖のてっぺんに建っているらしい。

 その手前は薄暗い森が広がり、部外者の立ち入りを拒んでいる。

 唯一伸びる道の先には、古くからこの喫茶店が建っていた。

 本家へ向かう人が、馬車を待つための休憩場所にもなっていたのだろう。

 あまり客足のありそうな場所では無く、静かに佇んでいる。


「遠く黒峰の血を引いている家系でねえ、代々このお店を守っているわ」


 そんなお婆さんは、我輩さまが生まれる頃、黒峰家で侍女として働いていたらしい。

 その流れで我輩さまと、その母親の世話を任されていたとか。

 古い言葉で言えば乳母、だろうか。

 もはや小さい頃からとかいう次元ではなかったらしい。

 そしてお婆さん自身の結婚により仕事を辞め、この喫茶店を継いだそうだ。

 その時我輩さまは言葉を覚えた頃。既に黒の本家という立場に沿った教育をされていたらしい。

 勉強も、振舞いも、言葉遣いも、より黒に沿うよう。

 我輩さまの口調は、そんなに昔からだったのか。通りでしっくりくるはずだ。


「それからしばらくしてねえ、夕方いきなりお客が来たの」


 日が沈むとめっきり人の気配がなくなるらしく、夕方には店じまいを始めるそうだ。

 波と風の音しかしないような場所に突然、木々を激しく揺らす音が響いた。

 野犬や猪かと思って警戒したけど、そこから転がり出てきたのは一人の少年だった。

 真っ黒な服を木の葉や土で汚し、真っ白な顔に泥がこびりついた少年。

 ほんの子供の頃だけ見ていたけど、お婆さんにはすぐに分かったらしい。我輩さまだと。


『ぼっちゃん? どうしたのですか』


『……さんぽだ』


『奥様はこのことを、御存知ですか?』


『我輩はもうひとりでであるける』


『まあま、言ってないのですか。ひとまず入りましょう、夜の森は危ないですから』


 口を固く結びながらも従い、夫婦しか居ない店内に入り、促されるまま椅子に腰掛けた。

 たった四歳くらいの少年が、一人で歩けるような山道ではないらしい。

 布巾で顔を拭い、服の汚れをはたき、ようやく見れた姿になってから今度は傷の手当。

 小枝や鋭い葉で切ったであろう切り傷が、無数にあった。


『本家に連絡しますから、ここで待っていましょうね』


『……お前たちも、我輩をあそこにしばりつけるのか』


『滅相もございません。ただ、ぼっちゃんのお家はあちらなのですよ』


『……もう、いやだ。黒の家なんて、きらいだ』


 くしゃりと顔を歪め、歯を必死に食いしばっているのに、涙は流さなかったらしい。

 黒の本家、黒峰のただ一人の子供。幼少の頃から重責が圧し掛かっていたようだ。

 それで逃げ出すのは、当たり前のことだろう。


『みんな、僕を、わかさまって、よぶ。僕が、くろみねの子供だから?

 だからそうとしかよばないの?』


『旦那様も奥様も、名前で呼んでくださるでしょう?』


『父上と、母上だけ。じきとうしゅだから、わかさまだって、みんないうんだ』


 つっかえつっかえの言葉によると、本家の中で特別扱いされていることが不満なのだろう。

 しかし、家の中には大人しか居ず、そして大人にとって我輩さまは当主の唯一の御子息だ。

 そうやすやすと親しげに接することは出来なかっただろう。


『だから、僕は、もう、もどらない。いやだ、もどりたくない』


『ぼっちゃん……』


 それきり黙って俯いてしまい、お婆さんがどうしていいかと悩んでいると、お爺さんがグラスを置いた。

 ピンク色で、クリームが乗っていて、甘酸っぱい匂いのする飲み物。


『なに、これ?』


『いちごみるくですよ。お飲みください、美味しいですぞ』


 ちらと見て不審そうに手を伸ばし、ほんの少しだけストローを吸い上げる。

 口に入った途端にぱっと表情が変わり、ごくごくと飲み始めた。


『おいしい! なんだこれは!』


 一気に飲んでしまい、もう一杯欲しいとねだられたものの、そう何杯も飲んではお腹を壊してしまうだろう。

 その為、一つの約束をした。


『今日はこれでおしまい。また来た時に、ご馳走しましょう』


 そう言うと、ガラガラと大きな音を響かせながら来た真っ黒な馬車から、一人の女性が飛び込んできた。

 黒峰家の嫁。我輩さまのお母さん。

 叱り、抱きしめ、涙をこぼし、また叱り。

 自分のしでかしたことを理解したのだろう、きちんと謝り、そして二人で帰っていった。



「それからねえ、きちんと奥様の許可を取ってから下りてくるようになったの。

 これを飲んで、たまに周りを歩いたりもしたわ。

 電車を見て、乗りたいってせがまれた時は困ってしまったけど」


 さすがにそう遠くまで連れて行くことは憚られたのだろう。

 そして家に居る限り、電車に乗る必要は無かっただろう。


「だからね、ぼっちゃんを電車に乗せてくれて、ありがとうねえ」


「私は、そんな……」


 半分飲んだグラスは汗をかき、中の氷が水の層を作り始めた。

 ストローに触れると氷が動き、ゆらりと混じる。

 不思議な気持ちだ。

 子供だった我輩さまが、居た場所。

 そこに居るのが、なぜだか嬉しい。

 理由は分からない。けど、胸の辺りの体温があがっているようだ。


「そうそう、裏に浜辺があるのよ。

 人が来ないから水もきれいだし、もし行きたかったら言ってちょうだい。

 なんなら水着もあるわ」


「いえ、水着は、ちょっと……」


「まあま、そうね。ぼっちゃんに一番に見せないといけないものねえ」


「ちがっ……いえ、見せたくないので」


 お婆さんのからかいを含んだ言葉に困ったものの、浜辺があるというならば見てみたい。

 話している間に日が少し傾き、この時間なら浜辺は影になっているらしい。

 一応日傘と、折りたたみの椅子を借りて、案内された裏口から外に出る。

 ここから一本道らしい。

 別に個人の所有地ではないけど、崖と森とに囲まれた場所は店からしか来られないそうだ。

 波に削られて窪んだ形になっているから、海を伝って部外者が来ることもない。

 だからここは、小さい頃の我輩さまが、時たま居た場所だそうだ。


 砂利道に白い砂が混じり始め、足取りがおぼつかなくなる。

 私も運動は苦手なほうだけど、初めての足場では想像以上に足が取られてしまう。

 転ばないよう足元をじっと見ながら歩いていると、ふいに砂利が無くなった。

 さらさらと不安定な砂地は一面に広がっていて、その先に、真っ青なものがあった。


 空と海、波と雲。それに太陽。

 青い、白い、眩しい。

 あと多分、潮の香り。

 海の魚が漂わせるもの。

 胸いっぱいに空気を吸い込み、香りを楽しむ。

 空気中に塩分が溶けているのだろうか? 口で吸い込むと少ししょっぱい気がする。


 白い浜辺に白い波が押し寄せ、戻っていく。

 その度に砂は水を含み、そして染み込ませる。

 それが幾度と無く繰り返され、小さな泡がしゅわしゅわと弾ける音と、じわりじわりと水が砂の隙間に落ちる音とが聞こえる。 


「……海だ」


 水から離れた木陰に椅子を置き、砂の足場で倒れないように気をつけながら座る。

 今日は真夏日なんだから、暑いは暑い。

 なのに、不思議と不快じゃない。

 五感はそのままなのに、たくさんの情報が入ってくる。

 波の音、風の音、木の葉の音。

 足元の砂を蹴ってみると、さらさらと宙に舞い散った。

 それが風に乗ってこっちに飛んできたのには驚いたけど、偶然入ってしまった砂粒ですらしょっぱい。


「海って、すごい」


 一人で呟き、それが妙に響いてしまう。

 窪地だからというのもあるけど、きっと他に音がないからだろう。

 ここでならいくらでも居られる気がする。

 我輩さまもそうだったのか。それとも、そうでなかったのか。

 本人に聞いたら答えてくれるだろうか?

 小さな我輩さまは、何を思ってここに居たんだろう。


 知りたい。我輩さまのこと、もっと知りたい。

 なんでこんなことを思うんだろう。

 他人は他人で自分は自分で、必要な事柄だけ知っていればいいと思っていたのに。

 今は我輩さまのことが、たくさん知りたい。


 太陽はゆっくりと傾き、木の陰が長く伸びていく。

 椅子を置いた場所の影は濃くなり、風と相まってとても涼しく感じる。

 ゆったりと腰掛け目を閉じると、一際大きく聞こえる音。

 ざざん、さわさわ、しゅわしゅわ。

 計算されたかのような音色は、気分をだんだんと鎮めてくれる。

 我輩さまが出かけてからそこまで時間は経っていないから、帰ってくるまでは時間があるだろう。

 少し、眠ってしまおうか。級長の部屋でもこんなことをしていたが、今回はぷーさんが居ない。

 物足りなさを感じつつも、意識を手放せばすぐ、眠りはやってきた。

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