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砦のワルツ  作者: ゆう
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第3話 『出会い』

第3話 『出会い』


ちょうど時計の針がてっぺんを指した頃、3人は暗い地下道からビルの裏路地に出ていた。


そこはエリア5でも特別な条例によって、日々違法な営業を続ける夜の店が連なる場所である。


かつてバブル時代に建てられた立派なビルも、今やその面影はなく、まるで行き場を無くしたネズミの住処であるような雰囲気さえあった。


ユウト『やっと出たと思ったらよりによってシナン区かよ』


志穂『なんか静かな街ね』


明美『ここは夜の街だから昼間はみんな寝てるのよ』


明美の言うとおりシナン区では若者を始め、ホームレスでさえも昼間は街に出ていなかった。


ユウト『とにかく端末とIDSLを探さないと』


2015年の緊急鎖国政策により全ての光回線は回収され、今は古くからのIDSLのみが残っていた。


フリーのWi-Fi環境も今や閉鎖的ネットワークとなっていた。


明美『ほんとにごめんね。タケがあんなやつだったなんて』


ユウト『今さらどうしようもないよ』


ユウト『それより、端末を扱っている店はあるか?』


明美『シナン区に優秀な元SEのやってるパソコンショップがあるって聞いたことがある』


志穂『その店ってさ、もしかしてあれ?』


志穂は路地の突き当たりにある小さな店を指差す。


ユウト『なんだよあれ…』


その店の看板には大きな星を用いた国旗が描かれていた。


志穂『某国の国旗だね…』


明美『とにかくここならいろいろそろうはずだから行ってみない?』


明美が先陣を切る。


ピンポンパンポーン


店主『……』


ユウト『あのー、パソコン置いてますか?』


店主『…』


店主は黙ったままである。


明美『なんか様子がおかしいよ…』


志穂が一点を指差した。


志穂『あれ!』


ユウト『まさか!』


店主の額からは黒ずんだ血が流れている。


明美『誰かにヤられたんだ』


ユウトが近づき様子を伺う。


ユウト『死後2時間てところか』


ユウト『もしかしたら俺たちがマンホールを抜けてここに来ることを誰かに読まれていたかもしれない』


明美『だとしたらこの異様な光景も納得できるね』


店内のパソコンは全て破壊されていた。


志穂『どうしよう…。プログラムを起動しないと…』


ユウト『とにかくここは危険だ、移動しよう』


3人は今は亡き店主に頭を下げ店を出る。


明美『ねえ見て、ホームレスの人がなにか言いたいみたい』


3人の20メートルほど先、一人のホームレスが路地に轢いたダンボールの上で3人に手招きしている。


ユウト『なんだろうな』


3人はホームレスの元へ進む。


ホームレス『お主らが来ることは分かっておった』


ホームレス『お主らを案内するようにと頼まれておる』


ユウト『どこに連れて行くって言うんだよ』


ホームレス『ふはは…』


ホームレス『ついて来れば分かるであろう』


そう言うとホームレスは歩き出した。


3人はホームレスの後を続く。


日も傾きかけたシナン区で3人は、運命を開くホームレスと出会った。


このホームレスが何者かは、この時3人は知る由も無かった。



第3話 『出会い』完

第4話 『グランドゼロ』

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