ep.18《共闘、そして強制イベント開始!?》
お久しぶりです。失踪しかけていたほっけです。
最新話をupさせていただきます。
今回は少し長めになっていて、次話からの伏線や設定が満載のお話になりました。そして、書き方を少し変えてみたのですが、いかがでしょうか?
さて、相変わらず読みにくい文章で申し訳ありませんが、それでも読んでいってくだされば嬉しいです!
それでは、どうぞ!
(2016/2/15 内容を修正しました)
~sideルナ~
「さて、剥ぎ取ってから次行こうか」
オレがそう言い放つと、ケイとフィアがどこか引き攣ったような笑みを浮かべ、こっちを見る。何かあったのだろうか。
「いや、お前なぁ……さすがにぶっ壊れすぎだろ……」
「……?」
ケイが言う言葉の意味が分からず、辺りを見渡す。オレ達の周囲には動かなくなった大きな芋虫がゴロゴロと転がっており、その数はゆうに20体を超えている。ここが森の中でなく、また昼間であったなら非常にグロテスクな光景になっていただろうが、現状だと木々の間に挟まっているような感じなので、ギリギリセーフのはずだ。
それでは、何が「ぶっ壊れ」なのだろうか。
「お兄ちゃん、ケイ兄が言いたいのは、お兄ちゃんが強すぎるって話だよ」
ちなみに、この芋虫たちを一掃したのは、オレだ。普段なら1度に1・2匹しか出てこないはずの芋虫たちだが、パーティを組んでいるせいか5匹ほど同時に出現し、そいつらを倒している間に次の集団がエンカウントしてきたのだ。
そんな連続の乱入戦闘だったが、相手は予備動作と隙が大きく、動きが遅い芋虫たち。ルーが牽制し、オレがいつものペースで一匹ずつ倒していった。ルーも単体で芋虫と戦えるくらいには強くなっているので後半は常に1対1の状態が続いたが、攻撃はすべて躱せるのでダメージは受けてない。ケイとフィアは後ろでポカンと状況を眺めていただけだった。
オレに言わせてみれば、こんなものは日常茶飯事で、いつも通り単体撃破しているので、何が強いかといわれても全く分からないのである。
「はぁ? こんな攻撃力も防御力もないスキル持っていてどこが強いっていうんだ」
「こんなに短時間で〔ワーム〕を倒せるやつが強くないわけがないだろう。オレなら少なくとも1匹数分かかる」
オレは1匹数十秒から、調子良くコンボが決まった時には数秒で倒せる。確かにペースはこっちの方が圧倒的に速いのか……。
「でもな? コレっていわゆる嵌めプレイだから、やろうと思えばだれでもできるよ。ひっくり返して腹パンしてれば倒せるもん」
「なんだよ『もん』って。それに、あんなデカいやつをひっくり返せる方がどうかしてるんだよ。どんなチート使ってるんだ」
「チートっていうか……《掴み》?」
制限解除系スキル《掴み》は、特定の技を発動しているときに対象の重量をある程度無視できる。それによってオレは芋虫を何匹もひっくり返せるわけだ。オレの場合は《素手使い》に《掴み》が内蔵されているため、それが可能になる。
また、芋虫はひっくり返すと数秒間無力化でき、弱点である「腹」を見せる羽目になる。弱点に攻撃・不意打ちなどの行為は防御無視攻撃判定、いわゆる『クリティカルヒット』の対象となる。『防御無視攻撃』、それによってオレは防御力の高い芋虫を素早く葬ることができるのだ。
実際、アイツらは防御力が高くてもHPが高いわけではない。
言ってしまえば、「どんな攻撃でもダメージは1だが、HPが12しかない」のようなエネミーなのだ
「はぁ……やっぱりお前は訳わからん」
「なにその言い方!? さすがにイラッとくるよ!?」
「どっちにしても私とケイ兄は《掴み》を持ってても武器があるから使えないけどね」
そんな会話を繰り返しながら剥ぎ取り作業を続けていく。エネミーは剥ぎ取ってもイェンのみしか入手できない場合があるが、今回は運よくすべてのエネミーからアイテムを入手することができた。
「お、〈スキルオーブ〉……。次は何取ろうかな」
最後の1匹の剥ぎ取りをしたところで〈スキルオーブ〉入手のアナウンスが流れた。これで所持しているスキルオーブは2つ。新しいスキルを取得することができる。
「サブ職人はもうとっているんだよな。じゃあ戦闘系スキルでも取れば?」
ケイとフィアにはオレのスキルのことや近況、出会ったエネミーの簡単な討伐方法や弱点部位などを報告した。もちろんルーのことも。最初は驚いていた2人だったが、パーティメンバーにルーの名前があることで納得がいったのか、〔オオネズミ〕が出たときにはしっかり共闘できていた。また2人もオレに情報をくれた。≪攻略組≫の事もそうだが、【森林】と【草原】以外のフィールドのことや、攻略の状況など。情報の交換は攻略の要になる。しておいて損はないはずだ。
さて、戦闘系スキルと一概に言っても多数存在し、その膨大な一覧を今見る気にもなれない。しかも、「武器が装備できない」という非常に厳しい制約のため、それらを読み飛ばさなければならない。《素手使い》に合ったスキルを探すのは非常に面倒なのだ。
「えー、何かおすすめってある?」
「お兄ちゃんの【パンチ】とか【キック】は打撃系だから、《昏倒付与》とか《ふっ飛ばし》? 私は重量系だから《重撃》が入るけど、速さは残したいでしょ?」
フィアのアドバイスになるほどとうなずく。
フィアの提案した2つは特性を付与できるスキルで、《昏倒》は状態異常【気絶】を引き起こしやすくなり、《ふっ飛ばし》は攻撃に【ノックバック】を付与して敵の行動を阻害したり自分のペースに持っていきやすくなる。
どちらも面白いスキルだが、今急いで決めるようなものでもないだろう。
「まあ、追々決めるよ。アドバイスありがと」
「……ところで最初の戦闘の時から思っていたんだけどさ、お前どういう『ステ振り』してんの? レベルは同じくらいなのに、パワーがおかしい気がする」
ケイの口から出てきた『ステ振り』という言葉。
これは『ステータス振り分け』の略語で、ゲームによってはプレイヤーの自由な方向にキャラクターを強化できるゲームもある。
そういうゲームだと、例えば『攻撃力特化』とかいう無茶なステータスにすることも可能なのだ。基本システムとしては、レベルアップ及び一定の条件を満たすことでボーナスポイントを取得することができ、それを使って自分のステータスを好きな方向に伸ばすことができる。
しかし、この【To-Arms】にそんなシステムがあることをオレは初めて耳にした。何せ、レベルアップをすると同時にステータスの上昇はあったのだから。
「……? ステ振りってこのゲームに実装されてるのか? 今まではレベルアップしたら少しずつ強化されていたからそういうのは無いものだと思ってたけど……」
「はぁ? ステータスが自動で強化なんてされるわけがないだろう? レベルアップで増えるのはHPとボーナスポイントだけのはず。何か勘違いしているんじゃないか?」
「そんなことはないと思うけど…………ほれ、ここ見て」
メニューからステータスのウィンドウを開き、可視化(他の人も見ることができる)状態にしてからケイに確認させる。
正五角形で水色半透明のそのウィンドウは、それぞれの頂点に向けて中心から伸びていくし様だ。
【To-Arms】には5つの基本ステータスがあり、『ATK』『DEF』『AGI』『TEC』『LUK』という感じに分かれている。
また、初期ステータスは基本的に全て1に統一されている。
オレの現在のステータスは、ATK、AGIにほとんどのポイントが割り振られていて、TEC、LUKに少しずつ、DEFに関しては0になっている。
しかし、しっかりとステータスが振り分けられていることを示している。
上昇している数値を合計してみると20。なにを基準にして振られているのかはわからないが、しっかりと振られている。
「……な? ちゃんと振られてるだろ? ちなみにオレは一回も操作したことありません」
「…………いや、お兄ちゃん。これ、ちゃんと振れてない。すでに振ってあるのは他のボーナスポイントだよ」
「は? どういう意味だよ?」
「よく見て、お兄ちゃんのステータスについてるのは……例えばATKだと、ATK-1(+8)ってなってるでしょ? このカッコの中に振られているのは、プレイヤーレベルのボーナスポイントじゃないの」
「プレイヤーレベルのボーナスポイントって?」
「私たちはレベルが5上がるごとに同じようにボーナスポイントが5もらえているの。だから、今お兄ちゃんのレベルが19だから、振られているステータスポイントは15じゃないとおかしい」
「フィアちゃんの言う通り。ほら、俺のステータスだ」
ケイの現在のプレイヤーレベルは21。可視化されたステータス画面には合計20のポイントが振られ、構成はATKに重点を置き、DEF・AGI・TECにもまんべんなく振られている。LUKには少な目だが。
さらに、カッコの中に合計6ポイント分、別にポイントが振られている。
「でも、さっきのフィアの説明だと20ポイントじゃないとおかしくないか?」
「《槍使い》の恩恵だな。《槍使い》はレベル10ごとにボーナスポイントが1、自動で振られる。オレの《槍使い》は62だから、6ポイント追加されてるんだよ。ちなみに、この《~使い》系のスキルのボーナスポイントは、スキル構成で『メイン』に設定してないと反映されないし、振られるポイントはあらかじめ決まっているらしい。」
だとすると、オレのステータスは……?
「……ルナ、右上にある『+』っていうボタンをタップしてみろ」
「これ? うわぁ!? なんだこれ!?」
何かに気づいたような表情をしたケイが、オレのステータスウィンドウに移っている小さな『+』という表示の場所を示してきた。
今まで気が付かなかったアイコンだったが、押せといわれるままに押してみると、ウィンドウのレイアウトはそのままに、右上に『残りボーナスポイント』と『振られたボーナスポイント』という表示が出てきた。
さらにステータスを示す棒グラフを横にしたようなものの隣に、それぞれ『+』『-』のアイコンが出現し、ステータスのバーも動かすことができるようだった。
「……やっぱりか。ルナ、お前は何かしらのスキルがあってそれがレベルアップすることで、余分にボーナスポイントが贈られていて、それが今まで自動で振られていたんだ。プレイヤーレベルの分はしっかり残ってるだろう?」
確かに『残りボーナスポイント』の数値は15になっており、現在のオレのレベルが19なので計算が合う。
だとするとこのすでに振られているポイントは……。
「まあ、大体その勝手に振られたポイントの出所もわかるけどな」
「《素手使い》……でしょ、ケイ兄? 武器も防具も装備できず、性能もずば抜けているわけではない。そんな不公平なスキルを運営が作るわけない」
「ああ、俺もそう思う。他の《使い》スキルもレベルアップごとにボーナスポイントがあったんだ。ルナ、お前《素手使い》の説明は最後まで呼んだか?」
慌ててウィンドウを閉じ、スキルのウィンドウを開いて確認する。
【《素手使い》Lv.52
攻撃種:打撃
武器・腕防具・足防具の装備不可。
技を二つ同時に展開可能。(発動は同時不可)
スキルレベルが5上昇するたびにボーナスポイントを自動で2追加。
【習得技】
パンチ・キック・グラップ・ツインパンチ・ラウンドハウス・フォールアックス・ウェーブスプレッド】
そこには、こう書かれていた。『スキルレベルが5上昇するたびにボーナスポイントを2追加』。
最初、確認したときには間違いなくこういう項目はなかった。おそらくあとから追加されたのだろう。おそらくレベルが5に到達したときに。
「書いてあったね、お兄ちゃん」
「うん」
「説明はしっかり読もうね」
「……うん」
何も言い返せなかった。
~~~~~~
「……何にしても《素手使い》は実質、ほかの《使い》スキルの4倍ポイントがもらえる。武器が装備できないデメリットはここで解消する気だったのか? でも、そうだとすると余計にルナの圧倒的な攻撃力が不思議になったな。ATKはオレより低く、武器も持ってないのに、なんであの硬い〔コクーンワーム〕を速攻で倒せる?」
確かに他の《使い》スキルは10レベルにつき1ポイント。《素手使い》は5レベルにつき1ポイントなので、ステータスだけで言えば将来的に圧倒できるだろう。しかしそれでも「武器」や「防具」の差は大きい。そこはプレイヤー次第というわけか。
疑問が解決し、フィアに説教されて軽くへこんでいるオレに向かってケイが先ほどの質問を繰り返す。そもそもこの『ステ振り』の論争はこの言動から始まったのだ。
「ちなみに、腕・足防具も装備出来ないらしいけどな。あぁ、簡単にいうと『慣れ』だなぁ……な、ルー」
『ウォウ!』
オレの隣を歩いているルーが一鳴きして答える。今はもう、オレが立っていても頭が肘の上くらいの位置にある。
今、体長1メートルくらいだから、もう少し大きければオレくらい乗せられるんじゃないか?
ワシワシと頭を掻いてやると、目を細めてリラックスしているようだ。やっぱコイツ可愛い。
「さっきも説明したけど、ひっくり返して腹を攻撃すると防御無視の2倍攻撃ができる。オレはそこに敵を倒せるギリギリの攻撃を時間内でしてるだけ。あとは順序とリズムを間違えなければ倒せる」
「ひっくり返すのがまず無理なんだよ。それに、敵の表皮が硬くて槍だとまともにダメージが行かない」
「じゃあ、TEC上げて目でも狙ったら? あそこも弱点部位だし」
「目を攻撃すると怒るんだよあいつら……」
「うーん、じゃあさ……」
そんな芋虫の攻略法を模索しながら、オレ達は目的地に向かって歩きだす。
気が付けば、山脈との距離はかなり近づいていた。
~~~~~~
「……お、あれじゃないか?」
オレの後ろにいるケイが声を上げる。指を指す方を見ると、確かにゴツゴツした岩肌にぽっかりと人数人分の穴が開いており、そこからオレンジ色の光が漏れだしているのが見えた。
オレ達はとっくに森を抜け、山脈に差し掛かったのだが、肝心の光っていた洞穴が見当たらなかったのだ。
そのせいで山の岩肌に沿って探索していたのだが、ようやくそれらしきものが見つかった。
「さて、それじゃあ今回の目的を果たしますか」
コリを解すように肩を回しながらケイが言う。
今回の目的を2人にはすでに話しており、予想では会話の後アイテム収集クエストが発生して、クリアすると何かしらのアイテムがもらえるのではないかということだ。
オレ達は今までの戦闘で〈ポーション〉をできるだけ節約してきたので、突発的に戦闘が起こったとしてもある程度なら対処できるだろう。
何せ、こっちにはこのゲーム内での現状1・2位が付いているのだから。
「なんにしても行ってみなきゃ分からないからなぁ……とにかく行こう」
そのケイの言葉を皮切りに、洞窟へ向かってオレらは歩き出す。
今まで通り、オレとルーが先陣を切って洞穴の中へ足を踏み入れ、後ろの2人がそれに続く。
洞窟内部は外からも見えた通り、左右の通路に松明のようなものが設置されており、煌々とオレンジ色の輝きを放ち、周囲を照らしている。
通常であったらしばらくすると松明は消費されてしまうのだが、フィールド内部の設備にカウントされるのか、燃え尽きることはなさそうだ。
ちなみに回収できるか試してみたが、接触不可オブジェクトに設定されているせいで触ろうとすると電子的なバリアにおおわれており、プレイヤーには触れない仕組みになっていた。
このようなズルはさせないということらしい。
「…………ぁぁ……」
「……ん?」
微かに今人の声がしたような気がした。ニークの言っていたNPCがこの先にいるのかもしれない。
「どうしたの、お兄ちゃん?」
「いや、何か聞こえたような気がして。もしかすると目的の人がいるのかもな」
「いなかったら完全に骨折り損だけどな!」
「ケイ、そういうことは言わないでくれ。考えないようにしてるんだから」
そして次の一歩を踏み出そうとした刹那、
「うわぁぁぁぁあああ!! 誰か! 助けてくれぇぇええ!!」
「「「!!!」」」
間違いなくこの奥から聞こえた、演技には思えない切羽詰まった悲鳴。オレが振り返ると二人は少し驚いた顔をしていたが、すぐに真剣な表情に戻り、オレとアイコンタクトをかわす。二人ともこの状況を想定してここまで来ていた。覚悟は決まっていたはず。
「……急ごう。走るぞ!!」
「おう!」「うん!」
先ほどケイに教えてもらったステータス振りを行ったことで更にスピードが増し、攻撃力も上がったオレが真っ先に飛び出し、それにルーが並走する。
続いてケイが走り、AGIにあまりステータスを振っていないフィアは少し遅れてはいるが、全力で地を駆ける。
オレの場合はATKとAGIにステータスのほとんどを振っている上、装備は鎧などの重いものではなく、ただの〈ワンピース〉である。
そのため、レベルが劣っているとはいえ3人の中では1番の速力を持っている。
隣を余裕層に並走しているルーと比べてしまったらいけない、コイツはプレイヤーじゃない。
洞穴は一本道で、少し進むごとに悲鳴は大きくなる。
声は中年の男性のようだが、戦闘が起こっているとなるとNPCのHPがどれだけ持つのかが心配だ。
急がないと。
「ごめん、ケイ、先に行く!」
「おう! 追いつくまで持ちこたえろ!」
「その頃には終わってる!」
後ろを走るケイを気にして少し速度を落としていたが、急ぐ決心をし、先に行く旨を伝える。
了解をもらったところで捨て台詞を吐き、ルーの背中をポンとたたいてから速度を上げていく。
オレは、リアルでは絶対に出せないスピードで疾走している。
この疾走感は味わってしまうと癖になりそうだ、リアルとの別離、完全なバーチャルの世界だからこそできる芸当である。
「誰かぁぁあああ!」
「……っ! 見えたッ!」
《視覚強化》を全開にして、視力を格段に上昇させ、同時に暗視の効果もできるだけ上げる。
すると洞窟の奥で黒い四足の獣と取っ組み合いになっている人影を確認することができた。
見えるということはそんなに距離はない。
オレはさらに速度を上げ、正真正銘全速力で洞窟を駆け抜ける。
口から息が漏れ、呼吸が荒くなる。
リアルなら間違いなく筋肉痛確定どころか肉離れになってもおかしくないほどに全力で足を動かしながら、相変わらず隣を走っているルーに指示を出す。
「はぁ…はぁ…ッ、ルー! 先行ってエネミー倒しといて!」
『ウォウ!』
ルーは少しだけ速度を上げ、オレの先を走っていく。
こっちも全力なんだけどまだ負けるとか、ルーのスペックがちょっとおかしい気がする。
そして、ルーが黒い獣に突っ込むのが見え、そのまま押し倒すのを確認してからオレも現場に到着し、突然の乱入で戸惑っているのか、フリーズしているNPCに話しかける。
「あの……ッ!」
しかしNPCが振り向いた瞬間、言おうとしていた言葉が出なくなってしまう。
理由は簡単で、オレがコミュ障なのが原因だ。
今まで、ゲームの中でさえ必要最低限の人としか関わってこなかったオレは、初めて出会う男性を前にして緊張し、話すことができなくなってしまう。
目を合わせているのもつらくなり、口をパクパクさせていると、NPCが突然しゃべりだした。
「あなたたちは助けに来てくれたのですか!? ありがとうございます! あのエネミーが急に襲ってきて……」
そこまで話したところでオレの目の前に半透明のウィンドウが表示される。
【【緊急NPCクエスト-突然の襲撃者から守って!】が発生しました。】
しかしいままでのNPCクエストと違ってYes/Noの質問はなく、自動的に決定してしまったようだ。いわゆる強制参加イベントなのだろう。
会話が続かないだけマシだと思いつつも、現状を確認する。
ルーの方を見ると、おそらく〔おおかみ〕と戦っている。
レベル的には低いようで、すぐに倒せそうだった。
しかし【森林フィールド】に〔おおかみ〕がいることが問題なのだ。
アレは、【草原フィールド】のみで確認できているエネミーのはず。
特定条件下で出現するのかもしれないが、いずれにしろ不明な点が多い。
しかも、不安なのがその奥。ルーが戦っている通路の奥の岩壁にヒビが走っていて、なにか良くないことが起こる前触れにしか思えない。
NPCの男性に触れないように誘導し、NPCと〔おおかみ〕の間に入りつつ、そのヒビから離れる。
すると背後から、2人分の足音が聞こえてきた、おそらくアイツらだろう。
「ルナ! 何が起こった! いきなりクエストのウィンドウが……」
「たぶん強制イベント。内容はこのNPCを守ること。敵はたった今ルーが倒したけど、クエストクリアじゃなってことは、まだ何かある。」
背後から聞こえたケイの声に返答する。振り返ると追いついてNPCの背後に立つケイと、そのさらに奥から走ってくるフィアの姿が見えた。
そして、追いついたフィアが一番最初に発した言葉は、
「お兄ちゃん! なにかが追ってくる!」
「ッ!? ……あれは!?」
『追ってくる』という言葉に反応し、一度解除した《視覚強化》を再起動する。
一気に辺りが明るくなり、フィアの後ろからこちらに迫ってくるモノを確認した。
ソレは、〔おおかみ〕と同じく【草原フィールド】でしか確認されていないはずの小人型エネミー。
「……〔ゴブリン〕!」
「な!? 〔ゴブリン〕は【草原フィールド】だけのはずだろう!?」
「さっきもルーが〔おおかみ〕を一匹倒した。何が起こっているのかはわからないが、とにかくあの集団を蹴散らそう。こんな狭い洞窟だと危険すぎる!」
「了解。フィアちゃん、〔ゴブリン〕は何体?」
「足音の数的に……6体!」
オレの目でも同じように確認できた。
フィアは索敵系の《聴覚察知》を取得している。
働くのは索敵のみだが、聴覚は全方位をカバーできるので、慣れれば周囲数十メートルにいるプレイヤーやエネミーの数や種類、行動や位置などがリアルタイムで把握できるようになるらしい。
「そんだけならオレが、「いや、今回は俺が行く」……ケイ?」
オレが行こうとしたら、ケイに止められてしまった。
「今まで道中ほとんどお前に任せっきりだったからな。今回は俺が行く」
突き攻撃が主流の槍と、硬い表皮を持つ〔ワーム〕は相性が悪かったため、〔オオネズミ〕以外ではあまり参加していなかったケイ。相手が〔ゴブリン〕となれば自分のペースで戦うことができる。不安要素と言えばこの洞窟の中で長い槍を振り回せるのかということだが……。
「じゃあ任せる」
「おう! 俺のカッコイイところ、ちゃんと見ててくれよな!」
「なんだそれ」と言おうとした頃にはすでにケイは駆け出し、10メートルほど離れたところにいた〔ゴブリン〕の集団に接近していた。おそらく、1体数秒の速さで屠ってしまうだろう。こう考えるとやはり「武器」の恩恵は大きい。それに外に出るためには、できるだけ早く退路を確保しなければならないので、良い人選だったのかな。
さて、ケイが〔ゴブリン〕達と戦いつつ出口の方へ押し戻しているのを確認してから、残ったフィアとルーに指示を出す。
「このままあのヒビに注意しながら後退しよう。出口まで行けばかなり楽になるはず……」
「お、おい。アレを見てくれ!」
「!!」
出している途中、急にNPCがしゃべり出し、何事かと指さす方を確認すると、先ほどのヒビが大きくなり、更に向こう側から硬いものがぶつかっているような音が響いて来ていた。
明らかにエネミーの乱入フラグ、回避するためには急いで出口まで退避するしかない。
しかしまだ退路が整っていない以上、このフラグは回避できない。
「くっそ、ルー!」
『ヴォウ!』
「オレ達と壁の間に入って待機、エネミーが出現したら戦闘お願い。……穂花!」
「はい!」
「ルーがきつそうだったらオレも出る。その間、このNPCと一緒に出口を目指してくれ!」
「わかった!」
(……さあ、くるならこい。なんとしても対処してやる)
やがて、ヒビはどんどんと広がっていき、最後にはガラガラと音を立てて崩れ去った。そして、そこから飛び出してきたのは〔ゴブリン〕。
……それだけなら対処できたのだが。
「なにこの数!? 10……20……まだまだ奥にいっぱいいる!」
フィアが悲鳴のように言う。
オレの目にもすでに飛び出してきた十数体の〔ゴブリン〕が映っており、フィアの「察知」が本当なら崩れ去った壁の奥にはその倍以上のゴブリンたちが潜んでいるのだろう。
数日前、同じような数のエネミーとエンカウントしたことがあるが、今回は状況が違う。
要人を守りながら、無駄に飛び回ることのできない狭い洞窟の中で、波のように押し寄せてくるゴブリンと戦うのはかなり困難だ。
「穂花! NPCを連れて全力で下がれ! ケイが終わってなかったらできるだけ早く対処しろ!」
「お兄ちゃんは!?」
「……ここはオレが引き受ける! オレに構わず先に行け!」
「……ッ!」
フィアとNPCが遠ざかっていくのがわかる。そして、目の前には魔物の大群。
オレの任務は、こいつらを抑えてNPCが出口につくのを待つこと。
正直、危険要素がありすぎるがやるしかない。
ついでに言えば、生涯で言ってみたかったセリフランキングの上位に入る言葉を言うことができたのは少しうれしかった。
ルーはすでに戦闘を開始し、数匹を一度に相手にしている。オレはその横からすり抜けてきた奴らを余すことなく狩っていくのみ。
「久しぶりに滾ってきたなぁ……。さぁ、始めようか!!」
ありがとうございました。
今回は雑談をお休みさせていただきます。次回の投稿はできるだけ早めにしたいと思っています。
休んでいる間に大体のアウトラインは考えられたので、あまり脱線はしないように頑張ります。
それでは改めて、ありがとうございました!
次回もよろしくお願いします。




