ep.14《真夜中戦闘。結構ピンチ》
おはようございますこんにちわこんばんわ!
ほっけです。
風邪をひいてしまい、39度の熱が出て、小説は書けず学校は行けずで散々な先週でした。
今回は少し長めになっております。
また、少し忙しい身ですので、今回の雑談はカットです。
次回からはしっかりと書きますので、よろしくお願いいたします。
それでは、どうぞ!
もうすでに辺りには夜のとばりが舞い降りており、雲一つない空には星がいくつも瞬き、月が白銀に輝いている。
そんな幻想的な情景の中、そのきれいな景色を全く楽しめていないのが、オレである。
「はぁ! ていっ! せいやぁ!」
草原を駆け抜け、後ろについてくるエネミーたちに少しずつダメージを与えながら、囲まれないように移動するのはとても難しい。
もし、今の状況でこの30体はゆうにいるエネミーたちに囲まれたとしたら……考えただけでもぞっとする。
その場合は、抵抗なんてあってないもの。
袋叩きにあって、HPバーは真っ黒に染まるだろう。
何より、痛みが存在するこの世界でオオカミやらネズミやらに体をひっかかれ、齧られるのはまったくもって遠慮したい。
そのため、オレは逃げる。
とにかく真っ暗に染まった草原をかけ、チャンスがあれば攻撃を仕掛け、追っ手を一体でも減らそうと努力する。
そんな感じでかれこれ30分ほどこのエネミーたちと戯れているのだが、数が全く減らない。
攻撃が低い《素手使い》の性能のせいもあるが、それよりもここはフィールドなのだ。
エネミーは自動的にポップし、プレイヤーをターゲットに捉えれば追ってくるのである。
つまり、倒してもエネミーは湧き続け、その感知範囲にオレが侵入し、また追っ手が増える。
この繰り返しなのだ。
『『『キキキィッ!!』』』
「うっ!? ちょっ! まとわりつくな!」
追いついたエネミーは攻撃してくる。
〔オオネズミ〕は集団で敵に飛びかかり、齧る、引っ掻くなどの攻撃で敵のHPを徐々に削ってくる。
そして、50センチほどもある大きなネズミが飛びかかってくるのだ。
正直言ってたまったものではない。
「は、な、れ、ろぉ!」
一匹ずつ、確実にエネミーを引きはがし、同時に【パンチ】や、《素手使い》のレベルが10になった時に習得した【グラップ】という技を駆使して敵のHPを削ってゆく。
倒しても走りながらでは剥ぎ取りもできない。
取得できるのは経験値だけだ。
「コイツでラストか……【グラップ】、【パンチ】」
体に引っ付く最後の〔オオネズミ〕の胴体を【グラップ】を発動させた左手でつかみ、その効果で継続的にダメージを与えていく。
さらに右手で【パンチ】を発動させ、ネズミの弱点部位である腹を何度も殴打する。
「おらおらおらおらぁ!!」
『キィッ!? キ……キィ……』
何度も殴り続けていると、HPがなくなったのかオレの手の中でぐったりとしてしまった。
これだけ大きなネズミだとそれなりの重量があると思われるのだが、【グラップ】を発動させているおかげか感じる重さは緩和されてるようだった。
さて、倒したこのネズミ。剥ぎ取ってもいいのだが……。
「これで……どうだぁ!!」
掴んでいるネズミを、後ろの集団めがけて『投擲』する。
それが先頭の〔ゴブリン〕の一体に命中して倒れ、後続している〔おおかみ〕や〔オオネズミ〕などを巻き込んでドミノ倒しになってゆく。
意外な成果に驚くが、倒れなかった十数体がまだ追ってきているので油断はできない。
「でも……そろそろ流石に疲れてきたな……」
戦闘開始から約30分、基本的にいくら走っても疲れないはずのこの世界の体だが、死と隣り合わせの戦闘で集中しすぎているせいか、さすがに精神的疲労を感じ始める。
しかし、手を抜いて速度が遅くなれば格好の的になってしまう。
「くっそ! いつになったら終わるんだ!」
そう叫んでも追いかけっこは終わらない。
そして、オレは重大なミスを犯していることに気が付いていなかった。
何度にもわたる攻防や、敵から逃げるために幾度となく行った進路転換。
それによってオレはフィールドの奥へ奥へと足を踏み入れてしまっていたらしい。
「……やっべ、やっちまった」
気が付いたときには時すでに遅し。
マップを確認しても、オレが通った箇所しかマッピングされていないため、自分がフィールドのどこにいるのかがわからない。
確認できることは、ここがエリアから遠く離れてしまった場所だということと……目の前に絶壁があるということだ。
「これは……さすがに超えられないな」
目の前に存在するのは高さ十数メートルという崖。
しかも目立った岩肌もなく、ロッククライムするのも難しそうだ。
そして、その壁によって通せんぼされたオレは……
「ま、こうなるよねぇ……」
目の前に広がる大規模のエネミーの集合。
数は50、いや60を超え、そのメンツはナイフを持った緑の肌の亜人や、赤い目の真っ黒いオオカミ。そして普通では考えられないほど大きなネズミである。
それらのエネミーは、崖を背にするオレを取り囲むように広がり、簡単には逃がしてくれなさそうだ。
……いよいよ、腹をくくるしかないかな。
勝算は限りなく低い。
ルーは現在別行動で、二分割したもう片割れの対処をしているだろう。
HPバーは先ほどから減り続ける一方でイエローに染まっている。
戦闘開始時はうまく敵をかく乱して別れることができたが……一刻も早く合流しなければ。
しかし、この数をトレインしたまま合流すればどちらの負担も跳ね上がってしまう。
しかも現在は逃げられないこの状況。つまり、戦うしかない。
「一発モロに貰えば終了の戦闘。面白い」
こうなったら覚悟を決めよう。
イカレ野郎は、本当に死んでしまう可能性もないことはない、と言っていた。
戦わなければ死ぬだけである。
『『『ギャギャギャギャッ!!』』』
『『『グルルル……』』』
『『『キキキィッ!!』』』
敵はすでに戦闘準備万端。
ナイフや歯をギラつかせ、その眼でオレをしっかりと見据えている。
狩りの目だ。威嚇の声も相まって、正直、とても怖く感じる。
「でも、こっちもやるしかないんだ」
アイテムポーチから取り出した〈低級ポーション〉を口に含み、その苦い青色の液体を嚥下する。
この世界では、何かしらのアクションを取らず、体を休めているとHPは少しずつではあるが、自然回復する。
〈低級ポーション〉などのアイテムは、これを急速に行うことができる。
〈低級ポーション〉の場合は、現在の最高HPの20%を急速に回復することができ、さらにその後、10%分の回復スピードを速めることができる。
オレは計2本の〈低級ポーション〉を飲み終え、HPが80%を超えたところで戦闘の体制をとる。
残りのポーションは2本。
これがなくなる前に勝負を決めなければ。
両手に【パンチ】を発動させ、できるだけ大きなダメージを与えられるように行動パターンを整理する。
相手はレベルが幾分か下なので、数発のクリーンヒットで倒すことができるだろう。
つまり、一体ずつ、的確に、素早く倒していく。
これしかない。
「……そろそろ行くか」
エネミーは皆体を震わせ、そろそろ我慢の限界のようだ。
それじゃあそろそろ、始めますか!
『『ギィ!』』
まず飛び出してきたのは先頭、正面にいた〔ゴブリン〕2体。
それに続いて後ろのエネミーたちも動き出した。
「ふッ! セイッ!」
〔ゴブリン〕は【パンチ】によって吹っ飛び、オレはそれでも倒れない2体に【キック】追加で浴びせる。
それでも倒れないが、他のエネミーの接近があるため、一旦ターゲットを変更。
ちょうど飛びかかって来た〔オオネズミ〕の1匹を右手でつかみ、他のを手で振り払いつつ、〔おおかみ〕に向かって掴んだ〔オオネズミ〕を投擲する。
ここで、『投擲』について説明しよう。
投擲は、一般的にスキル《投擲》や、劣化版であれば《投剣使い》などうぃ取得することで使えるようになる常時発動系のスキルだ。
効果は、『物を投げることができる、また、投げたものにダメージ判定が付与される』というもの。
つまり、投げたものにダメージ判定が付き、その判定は、投げられた物と標的物のどちらにも反映される。
エネミーを投げることで、投げたエネミーと当たったエネミーの両方にダメージを与えることができるのだ。
《投擲》を取得していれば、もっと早く、威力のある投擲技が取得できるらしいが、今はそんなことを悔いても仕方がない。
来た敵を掴み、牽制しつつ他の敵に向かって投げ、隙があれば猛襲をかける。
そんなことを数回繰り返す。
そしてとうとう
『『ギャギャ……』』
断末魔とともに、静かに倒れる〔ゴブリン〕。
崖を背にしての戦闘を開始してから約15分が経過した頃、逃げながら地味に与えてきた蓄積ダメージが重なって、そろそろHPが限界のエネミーも増えてきたようだった。
それなら……少しだけ無茶してみようか?
「おらおらぁ!! せいっはぁっ! せいやぁ!」
敵に突っ込み、【パンチ】【キック】を駆使してダメージを稼ぎ、数体のエネミーを倒すことに成功した。
このままいけば他のエネミーも倒せる……!
「せいっ!! ……ガッ!?」
突如、背中に走る衝撃、まるで背中を鋸で切られたような、そんな痛みが背中を走り、突如襲う圧倒的重量。
痛む背中を無理やり、何者かに押さえつけられ、のしかかられているような感覚。
(な、なに!?)
慌てて振り向くと、そこには1体の〔おおかみ〕の姿。
オオカミの顔の位置はちょうどオレの顔の上あたり、口を開けているせいで見える牙に恐怖心があおられるが、今はそれどころではない。
おそらく、この〔おおかみ〕がオレの背中を引き裂き、更にのしかかることで動きを封じたのだ。
そしてオレの上に乗っている〔おおかみ〕は、その大きくて鋭利な牙が生えそろっている口を大きく開き、それをオレの顔に近づける。
赤い咥内と、白く輝く牙が視界を埋め尽くし、圧倒的な恐怖心がオレを襲う。
「うっ……やめ、ろぉ!!」
無理やり、痛む背中に無理を言わせて体をひねり、〔おおかみ〕の体勢を崩しつつも噛みつかれそうになった顔は右腕でガードした。
そのまま右腕に噛みついている〔おおかみ〕に数発【パンチ】を見舞い、口を離したところで【キック】で蹴り飛ばし、息の根を止める。
しかし今の攻撃によって、オレのHPはイエローに染まってしまった。
しかも、更に恐れていたことがオレの体に起こる。
「痛っ! くっそぉ……」
攻撃を受けた背中と噛みつかれた右腕がジクジクと痛み、思うように動かない。
だが、そんな悠長なことを言っていると、今なお迫りくるエネミーたちの格好の的になってしまう。
……いや、こうして貌まれてしまっている時点ですでに格好の的なのだが。
閑話休題
ダメージを受けても少しずつであれば一発は軽かったのだが、大きなダメージを一度に受けてしまうとかなりキツイものがある。
しかも今回はルーがいるわけでもなく、援護なしで大ダメージを受けてしまった。
休む暇もなく、無慈悲な攻撃がオレを襲う。
右、左、正面からの同時攻撃。
たまに上からの飛びかかり攻撃も混ぜながら、攻撃の雨がオレを襲う。
オレはといえば、攻撃を受けてしまった右腕と背中を庇いながら、何とか攻撃をかいくぐり、またそらしていく。
しかしそんな防御法が通じるはずもなく、掠る攻撃によってジリジリとHPが削られてゆく。
遠距離系の攻撃がなかっただけましだと思いたいが、このままだとジリ貧もいいところだ。
なすすべも無いまま、オレはただ削られていくHPバーの値を少しでも多く残すため、できる限りの回避行動をとる。
数分後、オレのHPはオレンジに陥り、あと少しでレッドにまで至りそうだ。
必死に抵抗し、あれから十数体の敵を屠ることができたが、それも攻撃を受けながらの反撃だったので、討伐しようとするたびに少なくないダメージをもらってしまった。
そんな中、敵の動きが止まった。
いや、正確には『攻撃が止まった』と言った方がいいのだろう。
今まで連続してきた攻撃の反動として、設定されたスタンの時間がエネミーを一瞬の間だけ拘束していたのだ。
これを好機と見るや否や、オレは動きの止まったエネミーから距離を取り、アイテムポーチから〈初級ポーション〉を取り出して飲む。
残っていた2本のポーションを飲みきり、HPが一瞬で半分以上回復する。
(回復完了……これで、なんとかなるか。でも……)
戦闘開始時には50体ほどいて、途中トレインした分も含めれば100体近く相手にとったエネミーたちも、残り20体ほど。
HPが半分以上残っているのであれば問題なく相手にとれる、しかしさっきのレッドに近い状態のままだったら、数発のクリーンヒットでゲームオーバーまで予想ができる。
さっきの状況が非常に危なかったことを再確認して、ゾッとした。
『ガウ!』
「……もう再開か」
気が付くと、先ほどまで動きを止めていたエネミーたちはジリジリとオレとの距離を詰めていた。
どうやら休憩時間はもう終了のようだ。
先ほどのポーションのおかげで少しではあるが、特にひどかった背中と右腕の痛みも治まったようだ。
ポーションには、鎮痛効果がある。
元々の仕様では間違いなくなかった効果だろうから、ヒューズが勝手に付け足したのだろう。
「さあ……はじめようかぁ!!」
『ギャン!?』
攻撃を開始したエネミーたちの動きを観察し、一眼最初に飛びかかって来た〔おおかみ〕に、その攻撃に合わせるようにして【パンチ】を放つ。
攻撃を外部からの攻撃によって強制終了させられて、動きを止める〔おおかみ〕に、思いっきり【キック】を放つ。
青く光を放つ右脚が黒い体躯の横腹にめり込み、オレの体よりデカい体が吹っ飛ぶ。
吹っ飛んでいった先で動きを止めたオオカミを確認しながら、再び視線を正面の団体に合わせ、次の攻撃の波を見る。
しかし敵もすぐには攻撃を行わず、こちらの様子をうかがっているようだ。
(このまま死んだら……ちゃんとリスポーンできるのだろうか? いや、アイツはそのまま永久退場の可能性もあると言っていた。ここで死ぬわけにはいかない!)
最悪の可能性を考えてそれを否定しつつ、再び激化する戦闘に臨むのだった。
☆
すっかり夜が更け、真っ暗になった草原の上で獣や亜人たちと戦闘を繰り広げる。
そしてとうとう、エネミーの数が数えるほどにまで減り、あと一歩というところまできた。
あと少し。あと少しで終わるんだ。
「おらぁ!!」
『『『キュィ……』』』
放たれた【キック】によって、花火のように打ちあがった〔オオネズミ〕がそのHPを0にしたようだ。
これで〔オオネズミ〕は全滅。残るは〔ゴブリン〕と〔おおかみ〕がそれぞれ5体ずつ。
何とか先が見えてきた。
『『ウォーーーン!!』』
遠吠えを上げながら突撃してくるオオカミ2体の攻撃をかわし、背後から【パンチ】【キック】のコンボを見舞う。
さすがにこの大きなおおかみはまだ、掴むことができないようなので、【グラップ】が通用しない。
そのコンボによって1体を屍に変えたが、もう1体は攻撃終了のモーションから復帰して逃げてしまった。
突然、エネミーの動きに変化が起きた。
今までは数体ずつが何回か波のように押し寄せてくる攻撃だったはずなのだが、突然総攻撃を繰り出してきたのだ。
ゴブリンはナイフを構えて、おおかみは牙を剥いて飛びかかってくる。
目の前がエネミーで埋まり、前後左右の全方位からの攻撃。
まともだったら間違いなく避けられないだろう
ズン……
エネミーたちがそれぞれの攻撃で着地した時のSEが響き、辺りが一瞬静寂する。
エネミーたちに感情や思考回路があったのなら、間違いなく『やったか!?』と思ったことだろう。
しかし、そのエネミーたちの8つの着地音の後、その背後にもうひとつ、『スタッ』という着地音が響いた。
「……危ないなぁ。いきなり総攻撃とか焦るからやめてくれ……よっ!!」
エネミーたちの背後に着地したオレは、その右手に掴んでいたゴブリンを敵陣に【投擲】する。
その攻撃によってエネミーたちはボウリングのピンのように倒れ、そこに突撃して更なる追撃を見舞う。
そしてようやく、すべてのエネミーがその息の根を止めた。
「よし、やっと終わった! ……でも最後のはすこし危なかったな」
とりあえず近くにいるエネミーに〈剥ぎ取りナイフ〉を当てつつ、先ほどのエネミーたちが最後に見せた総攻撃を思い出す。
最後、総攻撃の際、オレは前後左右すべての退路を断たれた。
しかも、HPが半分に近かったので、すべての攻撃を受けてしまったらHPを大きく削られ、その中に一回でもクリティカルヒットが含まれていれば死んでいた可能性もある。
そんな中、唯一開いていた退路が……上だった。
オレは最後の手段として《跳躍》スキルの技、【ジャンプ】を発動した。
勢いよく3メートルほど垂直に飛び上がったオレは、すれ違いざまに攻撃してきた〔ゴブリン〕の内の1体を【グラップ】しつつ、そのジャンプが最高地点に達したところで背後の崖を蹴り、攻撃を終了したエネミーたちの背後に着地したのだ。
とっさの思い付きで、ほとんど考えずに取った回避行動だったが成功して本当に良かった。
「……さて、ルーを追っかけないと」
マップに表示されているルーの位置を示す青いポインターを発見し、その方向に走り出す。
途中にあったエネミーの死骸はすれ違いざまに〈剥ぎ取りナイフ〉を当てて、剥ぎ取り作業をする。
ルーのHPは見たところ半分ほど。先ほど確認したときより増えているのは、一回レベルアップしたからだろう。
どちらにしても急いで合流しよう。
「オレが行くまで死ぬなよ、ルー……」
願いながら、マップ上に表示されている青い点に向かって、オレはひたすら走るのだった。
ありがとうございました!
作「今回は雑談なしで」
ル「リアル忙しいの?」
作「まあね(白目)」
ル「ま、まあ、がんばって!」
作「ありがとー」
作・ル「それでは、ありがとうございました。次回もまた、よろしくお願いします!!」




