ep2-3
「んはぁ。凛……」
俺です。現在、酔ったノアちゃんに押し倒され体中を弄られているという非常に危険な状況に陥っています。
この状況を説明する為に遡ること五分前。
「凛。私もう我慢しない」
一曲歌い終わり、そろそろ時間だなーとか考えているとノアちゃんが真剣な表情でそんな事を言った。
「はい? え? ちょっ! のわあああああああ!? 」
飛びついてきたノアちゃんを辛うじて避ける。とある大泥棒のような飛び掛り方に物凄い驚いた。
「むぅ。逃がさない」
顔面をしたたかに打ちつけたにも関わらずすぐさま追いかけてくるノアちゃん。
「待った! タンマ! 落ち着いて! 」
コーナーに追い詰められた俺は必死の説得に掛かる。
「それは無理な相談」
くそう! 朧月は家に置いてきたんだった!
「じゃあいただきます」
「ぐはあ! 」
で、今の状況。遡った意味はそんなに無い気がするが、今はそれどころではない。
「凛。凛。かぷ」
「のののののののぉっ」
首筋に舌が這い回り、耳たぶをあまがみされたりとやられ放題である。
「美味しい。さすが凛」
「褒められても嬉しくねえええええ! いいから退いて! まじで! やばいから! 」
女の子とこんなに密着した経験のない俺である。当然、相棒はクライマックス状態。気付かれたら終わる。ってか絶対気付かれる。
「服。邪魔」
「うわわわわ! 」
肌がっ! ノアちゃんの真っ白な肌が!
しかし、今下腹部から手を離すわけにはいかない。つまり、抵抗できない。
「し、静まれ。静まるんだ俺の相棒。一瞬でいいからマジで」
俺の願いも虚しく甘ったるいノアちゃんの匂いに反応してさらにギンギラ☆状態。困った奴だぜ全く。
「? さっきからそこを押さえてるけどどうしたの? 」
ひぃ気付かれた!
「よーし! あっち向いてホイでもしようかノアちゃん! 」
そんな俺の言葉を無視して俺の手を外しに掛かるノアちゃん。ちょっ、力強っ。あ、あわわわわ!
「? え? これ、なに? 」
「……わ、わー。なんだこれー。病気かなー。おいしゃさんにいかなきゃー」
「まさか、凛って男の子なの? 」
俺の上に跨ったまま、首を傾げているノアちゃん。
はい、死んだー。社会的に一人死んだよ今。
「違うんだ。俺は変態なんかじゃないんだよ。むしろ常に紳士を意識してるくらいの紳士だから。ただこれには深い訳があってだね」
途端にノアちゃんの顔がただでさえ酔っているのに更に真っ赤になった。
「やだ。恥ずかしい」
いそいそと着衣を整えるノアちゃん。
「待って、今まで騙しててごめん、だけど通報だけはしないで。逮捕せんといて」
もう床に頭が沈むくらいの勢いで土下座する俺。必死である。
「? なんで謝るの? 」
?
「ふふふふ。私今すごい嬉しい。凛と子供作れるってわかった」
おや?
「正直、同性愛ってどうなんだろうって思ってたけど、これなら問題ない」
おやおやおや?
「えっと、つまり? 」
「大丈夫。他人に言ったりなんかしない。私達だけの秘密」
や
「やったああああ! マジでありがとう! 」
「ふふふ。惚れた弱み。と、いうわけで付き合って」
あれ? 今告白された? いや、待つんだ林崎凛。ノアちゃんは初めて出来た友達という対象によく分からない気持ちを抱いているに違いない。それを恋と勘違いしているのだろう。
「……お友達で」
と、いう事でコレが一番の選択だろう。物凄いもったいない気がするが、これもノアちゃんの為だ。
「むぅ。まだ好感度が足りない」
顎に手を当てて「むぅ」と唸っているノアちゃんにそろそろ出ようと声をかけてカラオケを出た。