ep2-2
「おまたせ」
家族にアイスを届け、自宅の前で待ってもらっていたノアちゃんの元へやってきた。
「……ん。じゃあ、どこにいく? 」
「うーん。私はどこでもいいんだけど、ノアちゃんは? 」
「……よし。じゃああそこに行く」
いきなり手を握られて100%チェリーな俺は心拍数が跳ね上がったが、平静を装いつつ付いて行く。
「カラオケか」
さっきの奴等もカラオケに行こうとか言ってたな。どうでもいいけど。
「……私の美声を聞けるのは凛だけ」
「うん。ちょくちょくナルシストだよね君」
いや、まぁいいんだけど。っていうか以外だな。ノアちゃんの雰囲気的にこういう所には来た事ないかと思ってた。
「……私はここの店員にマキシマム・ザ・ソロモンとあだ名を付けられるくらいに通っている」
マキシマム・ザ・ソロモン? ソロモン? ああ、独り者をもじったのかな? とんでもない悪口じゃね? それ
「ま、まぁいいや。とりあえず飲み物頼もう。私はウーロン茶にするけどノアちゃんは? 」
「……凛と同じでいいよ」
壁にかけてある受話器でウーロン茶を頼んだ。
「……凛から歌って欲しい」
「私から? えーっと、じゃあ何歌おうかな」
俺は男子高校生にして男声より女声ボーカルの歌のほうが歌いやすいという残念な声をしている。(本当に変声期迎えたの? ってレベル)なので洋介などとカラオケに行くのは物凄いバカにされるから嫌だったのだが、今は俺を男だと知っている人はいないので全力で楽しめる。
「お待たせしましたー。ウーロン茶です」
曲を選んでいると店員がお茶を運んできてくれた。
「ありがとうございますー。いただきます」ゴクリ
……ん? まぁいいか
「よし。喉も潤ったところで、まずはせいぶつががりから行くかな! 」
「……いえーい」
ノアちゃんがとてつもない無表情でマラカスを振っているのが物凄くシュールだと思った。
「うー。なんか身体が熱い」
なんだこれ。まるでアルコールを摂取した時のようなこの感じ。
なんだか楽しい気分にもなってきたし。
「粉あああああああああゆきいいいいいいいい!!! 」
ほら、ノアちゃんなんかもう机の上に立って熱唱してるもん。普段のキャラどっかいってるもん。
「クンクン。うーむ。やっぱりこれウーロンハイだな」
一口目であれ? とは思ったのだがまぁいいやとスルーしたのが仇になった。
「ふふふ。次は何を歌おうかな」
しかし、ノアちゃんは伊達にマキシマム・ザ・ソロモンの称号を冠している訳ではなかった。流行のJ-POP、アニソン、ロック、演歌とレパートリーが豊富なのだ。しかもめちゃくちゃ上手い。
「凛は歌わない? 」
ウーロンハイをガツガツ飲みつつ俺にマイクを差し出してきたノアちゃん。
「うん。ノアちゃんの歌聞きたいな」
実際はもう喉が痛いので歌えないのである。
「わかった」
しっかし凄いな。俺の三倍は歌ってるのにまだ来たばかりの時と同じ調子で歌ってるぞ。