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ギリギリ!  作者: 抹茶いぬ
第二章【俺、いきなりピンチ】
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ep2-1

 俺がここ剣聖女学院に入学してから三日が経った。クラスの皆とも打ち解け、女らしい言葉遣いもだんだんと慣れてきたと思う。ただ、一つ気がかりな事がある。


「ノアちゃん? ま、また私の名前をそんなに書いてるの? 」


 そう、それは座席がお隣さんであるノア・ウィンターちゃんである。


「……うん。大切な友達の名前」


 この子は授業中、一心不乱にノートに何かを書いていて、内容を見せてもらうとそこにはビッシリと俺の名前が書き連ねてあるのだ。


 これは気にするなという方が無理だろう。


「……はふ」


「な、なに? 」


 そして時々このように艶かしい視線で俺を見つめてくるのだ。


「……凛。可愛い」


 もしかしたらとんでもない人物と友達になってしまったのではないだろうか。いや、きっと初めての友達だからどう接したらいいのか分からないのだろう。


「あ、ありがとう。ノアちゃんも可愛いよ」


「……ふふ。両想い」


 雪のように白い頬を赤く染めながら嬉しそうなノアちゃん。両想いて……


「凛ちゃん。ウィンターさん。次移動教室だよー」


「あ、うん。そうだったね」


 授業に必要な道具を取り出して席を立つ。


「ほら。行こうノアちゃん」


「……うん」


 俺の袖をちょいとつまんで後ろを付いてくるノアちゃん。


 うーむ。これはこれで可愛いのだが、ちょっと心配だな。俺が来る前はどんな感じだったのだろうか。










「ほへ? ふぃっひ? はのほはね」


「いいから。口の中の物を飲み込んでから喋れ」


 夕飯の時に白雪にノアちゃんの事を聞いてみた。


「うんむ。うぃっちかー。あの子はね、すっごい大人しいけど、剣は凄い強いよ。まさに天才」


 うぃっち? ああ、ウィンターだからか。


「まぁ悪い子じゃないんだろうけど、私達が話しかけても一言くらいしか喋ってくれないからね。よくわかんないんだ。それにほら、あの子すっごい可愛いっていうか、綺麗っていうか、儚い感じがするじゃん? だから話しかけにくいってのもあるよね」


 まぁ確かにこの三日間で俺以外の子と話している姿は見たことないな。


「だから結構皆驚いてるよ。うぃっちが笑ってる所なんて始めて見たし」


 うん。ノアちゃんは一日の大半を無表情で過ごしてるもんな。


「どんな手を使ってあんなに仲良くなったの? 」


「いや、特別な事をしたつもりはないんだがなぁ」


 初めて会った時から結構話せたよな。ああ、でもこんなに人と話したのは初めて的な事を言ってたような。


「まぁ仲良くしてあげてね。正体がバレない程度に。うはは」


「ああ、そうだな」


 ちょっと変だけどいい子に違いない。うん。きっとそうだよ。


「あー。なんかアイス食いたいな。買ってくるか」


 女装用のウィッグを装着する。もしも街中で会長とエンカウントしたら大変だからな。


「あ、じゃあ私のもお願い」


「私もー」


「俺も」


 誰一人一緒に行く気がないっていうね。まぁいいけども。












「ありがとうございましたー」


 男性店員の視線と挙動がトラウマになりそうだが、無事に買い物を終えた。


「ねーいーじゃん。俺ら寂しいのよ」


「君みたいな子がいてくれればめちゃくちゃ華やかになるじゃん? 」


「……だが断る」


 コンビニを出た直後ノアちゃんが二人組の男に絡まれていた。よくもまぁ帯刀した女の子に絡めるよな。


「……いい加減にしないと錆にする」


「ははは。またまた、人間を切る度胸なんかないでしょ? 」


 あー。あいつらやばいな。このまま放置しておいたら切られるぞ。


「……」


 無言で柄に手をかけるノアちゃん。


「はいストップストップ! ノアちゃん、落ち着こう」


「……凛」


 俺を見た瞬間に赤面する意味は考えないでおくとして。


「なに!? この子の知り合い!? やべぇめっちゃ可愛い! 」


「二人になったし丁度いいじゃん! カラオケ行こうぜ! 」


 うぜぇ……なにより二人ともイケメン(俺よりは劣る)なのがうぜぇ。


「悪いけどこれから二人で遊びにいくから」


「なら俺らも付いていっていい? 」


「黙れ。じゃなくていや、二人で遊ぶからごめんね」


「いいじゃん。二人より四人の方が楽しいって」


「死ね。じゃなくてごめんね」


 こういう奴等は殴り倒しても後がめんどうだからな。この前なんか「先輩呼んで来るからな! 」から始まって最終的にそいつの先輩の友達の従兄弟のお父さんの知り合いまで呼ばれてしまった始末だ。


「じゃあメアドだけ教えてよ」


「あ、いいよー。じゃあケータイ貸して」


「おっけー。え? なんでそんな投球フォーム? え? ちょっ! 捨てられたああああああ! 」


 よし。完璧だ。


「てめぇ! ふざけてんじゃねーぞ! 」


 ケータイを投げ捨てられた可哀想な男が殴りかかってきたと思った瞬間。


「あぎゃあ!! 超痛い!!! 」


 物凄い血飛沫を出して倒れた。


「……凛に触るのは許さない」


 え? なに? 今のノアちゃんが斬ったの? 


「う、うわぁ! 大丈夫か!? 」


「ほ、星が……星が見えるよ母さん」


「あひゃああああ! 人殺しいいいいいいい!! 」


 無事な男は斬られた方を担いで逃げ出していった。


「いや、凄い速いね。全く見えなかったよ」


「……うん。あれがこの瞬剣・刹那の力」


 ノアちゃんの持つ刀は大きさなどは標準的だが、刀身が薄く、ガラスのようになっている。


「へぇー。綺麗だね」


「……やん。綺麗だなんて照れる」


 いや、ノアちゃんに言ったのではないんだけど、まぁノアちゃんも綺麗だけどさ。


「まぁとにかく無事みたいで良かった」


 俺が来た意味は0だったが。


「……そんな事より、どこに行く? 」


 ノアちゃんが刀を鞘にしまいつつそんな事を言い出した。


「へ? 」


 どこに行くって、家に帰るんだけど。


「……さっき一緒に遊ぶって言ってた」


 あー。あれは適当に言っただけなんだけど。


 うわ! すっごい見てくる! 無表情ですっごい見てくる! 


「あ、ああ。あれね。でもほら、とりあえずアイスを家に届けなきゃいけないからさ。それからでいいかな? 」


 断る事もできない俺。ほら、紳士だからさ。

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