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ギリギリ!  作者: 抹茶いぬ
第一章【俺、転校す】
3/16

ep1-3

 と、いう事があり。転校するまで、つまり今日まで俺は奴等からの逃亡生活を余儀なくされた。


 つまり、今この場にいるのが既に二時限目が始まっている時間だというのも仕方のない事なのだ。朝からあいつ等に追われていたからな。


「よし、まずは理事長に挨拶しなきゃな」


 盛大に遅刻したがまぁ許してくれるだろう。


「まー流石に誰もいないよなー」


 授業中なので仕方ない。しかし、やはり女子校。なんかこう雰囲気が素敵だ。時折教室から聞こえてくる笑い声なども薄汚い童貞の巣窟である剣信とは大違いだ。


 一人でニヤニヤしながら深呼吸して歩いていると渡り廊下の窓から外を眺めている人物を見付けた。


「……」


 ぼーっと外を眺めているその子は透き通るような白い肌に同じく真っ白な髪、そして正反対に真っ赤な瞳を持っていた。


 あれが世に聞く先天性白皮症、アルビノっていう奴か。凄いな。なんだか神様とか妖精みたいだ。


「こんにちは」


 通りがかる際に挨拶をする。


「……こんにちは……あれ? ……今何時? 」


 首を傾げるアルビノちゃんに時刻を教える。


「……しまった。景色を眺めていたら授業が開始してた」


「休み時間の間ずっと外を見てたのか? 」


「……いや、朝からずっと」


 なんだろうか。とてつもなく不思議ちゃんなオーラを感じるぞ。


「そっか。とりあえず気付けて良かったじゃないか」


「……うん。ところであなたの名前は? 」


 い、いきなりだな。


「俺は林崎凛だ。今日からこの学校に転校してきたんだ」


「……それでいきなりサボってるの? ……ワル? 」


 な、なんて答えればいいんだろうか?


「ワルじゃないぞ。うん。ちょっと親父が車に轢かれちゃったから遅れたんだ」


「……それは大変だね」


 我ながら苦しすぎる言い訳だと思ったがアルビノちゃんは信じたようだ。


「……なんか男らしい喋り方だからワルだと思った」


 しまった。思いっきり“俺”なんて言ってた。


 でも自分で自分の事を“私”って呼んだり女の子らしい喋り方なんて出来そうにもないしな。


「そ、それより君は教室に行かなくていいのかい? 」


「……ノア」


 のあ?


「……ノア・ウィンター。私の名前」


 あ、ああ。ノアちゃんって言うのか。名前的にアメリカ人か?


「……こんなに人と話したのは初めてかもしれない」


「そ、そうなのか? 」


 そんなに言う程話してなくない?


「…・・・うん。皆私が可愛すぎるから引いているに違いない」


 サラッと凄いこと言うなこの子。まぁ確かに俺が今まで見た女の子の中でもトップクラスに可愛いけど。いや、ってか友達がいないのはそういう理由じゃないと思うけど。


「じゃあノアちゃんの初めての友達だね。俺は」


 と、言うと今まで無表情(本当にビックリするくらいの)だったノアちゃんの頬が若干朱に染まった。


「……嬉しい」


 かっ! 可愛い! 満面の笑みとはいかないが若干微笑んでるノアちゃん可愛い! どうにかして付き合えないかな。あ、女装してるんだ俺。


「……突然頭を壁に打ち付けてどうしたの? 」


「ごめんよ。少し取り乱した」


 まぁ落ち着け。剣信と合併した暁には堂々と男の姿でいられるじゃないか。


「じゃ、俺は理事長室に行かなきゃいけないから。また後でな」


「……うん。元気でね」


 ヒラヒラと手を振ってノアちゃんはまた窓の外をボーっと眺めだした。あの子授業に出る気0なのか。











「遅れましたけど? 」


 ノックをして理事長室へと入る。


「いや、僕も昔は教師やってたけど君みたいに遅れたけどなにか? って感じで遅刻してきた生徒は初めてだよ」


「あんたがここの理事長か」


 剣聖の理事長はメガネをかけた普通のおじさんだった。


「ああ。いかにも、いや、しかし君は本当に男の子なのかい? ぜひともウチのパンフレットに写真をのせたいなぁ」


 だからこういう反応をされてもリアクションに困るんだけど。


「えと。とりあえず宜しくお願いします」


 まぁ、挨拶をするのが目的なのでこれくらいでいいだろう。


「うん。君には期待してるよ。合併の話、どうにかまとめてくれ」


 と、ここで疑問。いくら生徒会が権力をもっているからとは言え、最高権力者は理事長だよな?


「なぁ、一つ疑問なんだが、この合併の話はあんたが拒否したわけじゃないよな? なんで生徒会長とは言え生徒に理事長が従っているんだ? 」


 俺の質問に理事長はバツの悪そうな顔をして


「実はね、生徒会長は僕の娘なんだ……」


「お? おお」


 ならなおさら父親として言う事を聞かせられないのか?


「彼女は“私が生徒会長の内は私がルールだ”と言っていてね。恥ずかしい話だが僕は彼女に頭が上がらないんだ。逆らったら三秒で殺される気がする」


 な、情けなっ! 理事長情けなっ!


「そ、そっすか。ま、まぁ俺が生徒会長になるんで安心してください」


「大丈夫かい? 父親の私が言うのもアレだけど、娘は強いよ? 」


「はは。男として女の子に負ける訳にはいかないっす」


 いくら生徒会長とは言え俺には男という体力的にも腕力的にもアドバンテージがあるだろう。まぁ刀での勝負なので油断は禁物だが。


「そうか。うん。期待してるよ」


 理事長にもう一度挨拶して部屋を出る。俺の教室は二年菖蒲組(この学校はクラスは全て花の名前らしい)だと言う事でパンフレットの地図を見ながら向かう。


 ちなみに、途中の渡り廊下にはさすがにノアちゃんはいなかった。

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