ep3-4
「今日から兄妹だってさ! よろしくね! 」
「おう。だが俺は例え妹だろうが完全に異性として見ていくからそこんとこよろしくな」
「うはは! 女の子みたいな顔して何言ってんの? 」
「おまっ。お兄ちゃんになんて事を……」
「うはははは! とりあえずよろしくね! 」
「そして何なのその笑い方」
「てめぇ! 俺の妹にストーカーするとはいい度胸じゃねーか! 」
「ぐふぉっ! ち、違うんです。僕は決してストーカーなどではなく白雪さんのお友達で」
「お友達はパンツとブラジャーを盗んだりしねええええええ!! 」
「ぐあああっ! ゆ、許してくださいお姉さん! 」
「俺はお兄さんだこの野郎! 世界遺産みたいな名字だからって調子乗るんじゃねーぞ! 」
「り、凛。もういいよ、二条城先輩さっきから時々痙攣するぐらいしか動かなくなっちゃたよ」
「甘い! 人の女に手を出したらどうなるか教えてやる! 」
「いや、別にあんたの女じゃないけどね」
「……起きた? 」
ん? ノアちゃん?
「ここは……道場か? 」
なんともまぁ懐かしい夢を……
「……うん。私が凛を運んできた」
「そうか。ありがとな」
「……妻の役目を果たしただけ」
「白雪は? 」
「……二条城に連れていかれたまま」
あの野郎!
「……とりあえず林崎さんに連絡してみるといい」
「ああ、そうだな」
携帯電話を取り出し白雪に発信する。
『もしもし! 凛!? 大丈夫? 』
呼び出したらすぐに白雪が電話に出たのでとりあえず安心する。
「おう。ぼちぼちな。それよりお前は大丈夫か? 」
『今のところね。今あいつの家に閉じ込められてる』
「あいつの家……? 確か西町のはずれだよな」
以前二条城が白雪の下着を盗んだ時にあいつの家まで殴りこんだので覚えている。
『うん。たっちゃん取り上げられちゃったからもうお手上げ状態』
たっちゃんとは白雪の愛刀、断風のことである。
「待ってろ、今すぐ行く」
『でも、さっきの怪我とか』
「気にするな。今すぐ行く」
確かに全身が痛いが、それを気にしている場合ではない。
『……うん。待ってる。でも、無理はし』『おやおや? これはこれはお兄さん。まだ生きてたんですね』
「二条城……! 」
『うーん。本気で叩きつけたんだけどなー。ショックです』
「ふん。言っておくがさっきの俺は本気の三割も出してなかったからな」
いやホントに、負け惜しみとかじゃなく。
『わぁ。これが負け犬の遠吠えかぁ。初めて聞きました。かっこ悪いなぁ』
こ、この野郎……
「いいか? 白雪に何かしてみろ。確実に心肺を停止させてやるからな」
そして全裸にひん剥いて歩道橋からぶら下げてやる。
『僕もあなたが生きているのが許せないんです。一緒に住んでるのをいいことに白雪さんを洗脳するなんてね』
何言ってるんだこいつ?
『まぁいいです。あなたが消えれば白雪さんの洗脳も解けるでしょう。僕達の結婚式はその後です』
「首を洗って待っとけよ。この俺をここまで侮辱しやがったんだ。覚悟しとけ」
『あはは。可愛い顔でそんな事言っても決まりませんねー』
このくそysxrdtcfygヴいbhk
「……凛。これ」
俺が怒りのあまり携帯電話を粉々にしているとノアちゃんが朧月を持って立っていた。
「ああ、ありがとう。ん? その紙は? 」
ノアちゃんが持っているA4サイズの紙を指差す。
「朧月の取り扱い説明書@現代語訳ver」
説明書!? 刀に説明書あんの?
「と、とりあえず読んでみるか」
~これから朧月を使うあなたへ~
其の壱・これは鈍器ではありません。妖刀・朧月です。
其の弐・まずは鞘に収めておきましょう。その間に斬られてしまう? 頑張りましょう。
其の参・朧月は鞘に収められている間、無限に力を蓄えます。流石、妖刀ですね。
其の四・蓄えた力を放ちましょう。勝負は一瞬です。失敗するとただの光る刀になってしまいます。これはこれで赴きがありますよね?
其の伍・以下、其の弐から繰り返し。※月夜には何かあるかも!
「……うん。よく分かった。ありがとう」
なんだろう。なんか腹立つなこの説明書。
「……どういたしまして」
まぁ、詰まるところ居合い斬りを使えと言うことか。
「……行くの? 」
「ああ、こいつがあれば何とかなるだろ」
朧月を腰に提げる。
「ノアちゃんは待っててくれても」
「……義妹の危機を黙って見過ごせない」
頼もしいな……義妹じゃないけど。
「あんなパチモンなんか余裕だろ」
「……ええ。私達夫婦は無敵。三秒で殺す」
頼もしいな……夫婦じゃないけど。