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ギリギリ!  作者: 抹茶いぬ
第二章【俺、いきなりピンチ】
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ep2-6

 もうすぐ家に着くというタイミングで商店街の方が物凄く騒がしくなった。


「……なぁ、あの電柱やら建物が次々と倒れていってるのって……」


「ま、まぁ確実に殺りあってるね。うはは」


 うわぁ……物凄い親子喧嘩。


「元はと言えば凛が原因なんだから行くべきじゃない? 」


「ええ~? そんなこと言っちゃう? 」


「うはは! 生徒会長を倒すなら極光一刀流の当主と戦うのはいい経験になるんじゃない? 」


 あー。まぁ確かに腕試ししたいって気持はあるんだが、いかんせん相手は殺す気MAXで来るだろうしなぁ。


「死んだら骨は拾ったげる! 」


 ああ、もう、行くしかないのか。せっかくさっきは誤魔化せたのに。

















 騒ぎの現場に辿り着くと、そこでは嵐が起こっていた。


「さすがノアちゃん! 強いな! パパは嬉しいぞ! 」


「……くっ。流石に強い」


 極光一刀流の現当主と次期当主。二人の戦いはまさしく極光という名にふさわしい物だった。


「極光流奥義・燭陰! 」


 ノアちゃんのお父さんが技名を叫びながら斬撃を放った(結構いい歳を召しているにも関わらず)


「……っ! 」


 刀から放たれた赤い閃光にノアちゃんが弾き飛ばされる。


「ふふ。まだパパの方が強いな。いいかいノアちゃん。これに懲りたらあんなどこぞの馬の骨とも知れない女みたいな男よりもパパの選んだ男と結婚するんだ」


 馬の骨? 女みたい?


「……無理。私は凛しか愛せない」


「くっ。まぁいい。まだ早いと思っていたが、結婚の話を早める事にしよう。なに、あいつとしばらく暮らせばいい奴だと分かるさ」


「……まだ、負けない」


「あっ! 凛!? 」


「おいノアちゃんのお父さん! 」


 ボロボロになったノアちゃんの前に仁王立ちする俺。


「む? お前はさっきの」


「俺はな。知らない奴にバカにされるのと男に女みたいって言われるのが大嫌いなんだ」


 このおっさんは地雷を二つも踏んだというわけだ。


「……凛! 」


「ぬおおおおおおっ! 愛しの娘が恋する女の顔になっている! 貴様! 先程は俺を騙したのか! 」


 一瞬で距離を詰められ、上段から刀を振り下ろされる。


「あっぶないな?! 」


 うわびっくりしたー。いきなりなんだもの。


「む……なかなかの身のこなし。だが、年季が違う! 」


 ノアちゃんのお父さんは振り切った体勢から無理やり片手で突きを放ってきた。


「うおはえっ!? 」


 なんであそこから突きが出せるんだよ。


「む? 俺の三十八ある必殺技の一つを避けただと? 」


「多いな必殺技! 」


 技の貴公子と呼ばれていた隣の隣のクラスの山本君だって必殺技は十五個って言ってたぞ。


「しかし貴様、なぜ抜かん! バカにしているのか! 」


「抜いたら終わりなの! 一発屋なの! 」


 もっと接近してから使うべきだ。それで、視力を奪ってボコる。


「まぁいい。ノアちゃんが回復すると厄介だ。その前に決めさせてもらおう」


 ノアちゃんパパは刀を鞘にしまい。腰を落として柄に手をかけた。居合い斬りでもするつもりか? とりあえず距離をとろう。


「……凛。まずい。奥義がくる」


「へ? 奥義? 」


 あ、さっきの。


「奥義・燭陰! 」


 鞘から火花が飛び散る勢いで抜刀したノアちゃんのお父さん。


「おすぺらんす! 」


 そしてその姿を見たと思った瞬間には吹っ飛んでいた俺。痛い、泣きそう。


「ふん。なよなよしている割には頑丈だな」


「くっそ。ずりーよそれ。卑怯じゃんか。刀なのに遠距離攻撃って」


「奥義だから」


 物凄いドヤ顔で言われた。すっげー腹立つ。


「ほれ。もう一発」


 いつの間にかさっきの体勢に戻っていたノアちゃんパパ。


「おぼろん! 」


 な、なんだよ別に技名叫ぶ必要ないのかよ。


「休んでる暇はねーぞ」


 ヤバい、さすがにもう一発貰ったら気絶はする。


「……護る」


 奥義連発とか最早奥義じゃねーぞ氏ね! と叫ぶ準備をしていると、ノアちゃんが俺の前に現れて防いでくれた。


「くっ。さすがノアちゃん」


「……もうその技は通じない」


 そう行ってノアちゃんは父親へと斬りかかっていった。


「くっそー。あんなおっさんにも奥義とか必殺技があるのに俺にはピカピカするしか能がないのか」


 二人の剣戟を見つめながらなんとなくノアパパの奥義の格好の真似をしてみる。


 パクりではない。見本にしているだけだ。


「んで、これを思いっきり抜く! 」


 朧月が鞘から飛び出た瞬間。落雷が起きたのかと思うくらいの轟音が生じ、目の前の空間が刀の軌跡を境目にして一瞬ずれた。


「……えっ? 」


 な、なにこれ?


「……い、今のり、凛? 」


「うっわー! 何!? なんなの今の! うはははははは! 」


 ノアちゃんと白雪が駆け寄ってきた。あれ? ノアパパは?


「ばたんきゅー」


 いた。道路に伸びてるぞ。しかも全裸で。


「な、なんだったんだ今の? 」


 とりあえず警察に通報してから改めて朧月を眺める。


「すっごーい。光るだけが取り柄じゃなかったんだねその子」


「!? ……もしかしてそれ、朧月? 」


 ノアちゃんがハッとした表情になった。


「え? なんでノアちゃんが知ってるの? 」


 言った事あったか?


「……当然知ってる、だってその刀は」


「えー通報にありました路上で全裸で寝ている男を確保しました。只今から連行します」


 あ。ノアパパが警察に連れて行かれた。

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