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memory

屋上で伊織はありえないものを見てしまう・・・・・・・

突然、伊達に手を引っ張られて連れて行かれた先はなんと生徒会室だった。

「覚えているの?・・・・・・・」

俺がふと漏らしてしまった言葉が聞こえたらしく、彼女が尋ねてくる。

「いいや、何のことかさっぱり分からないけど、君とはどこかであった気がする。」

「どうやら、記憶は消失してしまっているようね・・・・・・・・」

「・・・・・でもいいわ、だってあなたが存在してくれた、それだけで私は充分よ。」

それだ、最初に会った時から頭の中で引っかかっていた言葉、『存在しててくれて』という言葉。存在しててくれて?どういうことだ?全く分からん。

「どういうことだ?存在してくれてって?」

俺がそのことについて質問すると、彼女は下を向き黙ってしまう・・・・・・・・・・・・・

「そうね、あなたには知る権利がある。」

彼女は、しばらく考えてからしゃべりだす。

「伊織、あなたはすでに1度死んでいるわ。」

「・・・・・・・・・はぁ?」

意味が分からなかった、なぜなら、俺は今生きている。世界中共通して命は1人1つなのだ、それなのに彼女は1度死んでいると言った。俺には全く理解できない。

「どういうことだ?」

「そうね、そういう質問が来ると予想していたわ。まずは、この世界の仕組みについてだけど・・・・・これを見て。」

そう言って彼女の指した方向を見る、当然のことながら住宅が並んでいるはずのそこを見ると・・・・・・・・・・廃墟が広がっていた。

あったはずの住宅は跡形もなく壊れている、人の住んでいる気配すらない。

「な、何だこれは?」

「これが、あなたのもともと住んでた世界よ。」

「まて、それじゃあ俺が今いるこの世界は?」

「人工的につくられた世界、偽りの世界よ・・・・・・」

人工的に?この世界がつくられた世界だって?そんなバカな・・・・・・・・・

いくつもの疑問が浮かんだのだが、目の前の光景に何も言えなくなってしまう。なぜならば、そこに見えている光景が明らかに本物だと分かるものだったからだ。

「う、嘘だろ・・・・」

「あなたが落胆するのも無理はないわ・・・・・・・でも残念ながらこれは事実なの。」

彼女は続けて話し出した、この世界についてを・・・・・・・・

「この世界は、記憶から構成されてるの・・・・・・・だから、あなたの周りで死んだ人はいないはずよ。記憶の中にいるあなた達は死なない、なぜなら、体を持たないある意味もとから魂だけも同然だから・・・・・・・・・・・」

「嘘だ、そんなことはない!ほら、こうして俺は生きている。俺だけじゃない、他の奴らだって     ・・・・・・」 

「嘘ではないわ・・・・・・残念ながらね。」

彼女は、うつむきがちに小さく答える。

「分かったわ、着いてきて!」

そう言うと、彼女は走り始めた。今度はものすごい速さで階段を駆け下りる、俺はついていくので精一杯だったのだが彼女は息1つ切れていない、何かスポーツでもやっていたのだろうか・・・・・・

気がつくと、目の前には扉があった。その扉には『生徒会室』という看板がかけられている。

「生徒会室???」

疑問に思いながらも、扉を開く。

「ま、待て、ここって学校だよな?」

扉の先には、見たこともない機械や設備が並べてあり、まるで何かの基地みたいだ。

「伊達さん、戻られましたか。官長が呼んでいましたよ?」

「ありがとう、今から向かうわ。」

「あの・・・・・そこにいる彼は誰ですか?」

伊達に話しかけていた少女が俺に気がついたようだ・・・・・・・・・

「彼?彼は、戦闘要因よ。」

「はぁ?」

俺の疑問もむなしく、彼女は俺の手を引いてもっともっと奥のほうへと突き進む。すると広場のような空間に出る、部屋の中心の方には誰か大柄な男が立っているのが見える。

「官長、ただいま戻りました。」

どうやら、あの人物が官長らしい。官長と呼ばれる人物は50代ぐらいだろうか、筋肉質の肉体からは創造できないほど貫禄が出ていた。

「遅かったね、雫君。何かあったのかね?」

「はい、伊織を発見しました。」

「何、伊織君だと・・・・・・・・・」

彼女がどうやら、俺のことについて話したようで官長が俺のほうへと近づいてくる。そして、肩に手を置くと息を吐いてからあくまでも冷静を装い「ぶ、無事だったのか・・・・・・」と落胆したようにつぶやいた。

「何はともあれ、よかった。戦闘要因が手薄になりつつあったからね・・・・・・」

「何がよかったんだ?」

俺が官長にたずねると、少し驚いたような顔をしてから「ふむ、そうか・・・・」とつぶやき俺に向かってこういった。

「君は何も覚えてはいないんだね?」

「はい・・・・・・多少の懐かしさは感じますが、それがなぜなのか自分でも思い出せないんです。」

俺は官長に自分の心に引っかかっていたことを全て話した。初対面であるはずなのだが、彼に話したらどうにかなるのではと言う気持ちになってしまい全て話してしまう。

「なるほど・・・・・・・・では、まずはこの世界のことについて話そうか。」

官長は、伊達に入れてもらったコーヒーを少し飲むと懐かしむように話し出した。

「今となっては、もう10年も前になるな・・・・・・・人が永遠に生きることができる方法について研究していた学者がいたんだ、その当時私は彼の同僚でね・・・・・いつも近くで私は彼をサポートしていたよ。彼は真面目な人間だった・・・・・・」

「それがこの世界がどう関係があるんです?」

「まぁ、ここからが本題だ。ある日彼は気がついてしまったんだ、永遠に生き続ける方法を・・・・・・・・それが、記憶だった。彼は何とか記憶を閉じ込め、なおかつそこでもとの世界と同じような生活ができるようなプログラムを作ったんだ。そして、世界中でそれは活用されるようになった。これが、今の君がいた世界についてだ。」

「待ってください、じゃあ何で元の世界には誰一人いないんです?それにあの廃墟は・・・・・・」

「それは彼がそうしたんだ人間を住めなくするためさ。」

「何ですか。何でそんなことを・・・・・・・」

「言っただろう?彼は誰にも認められなかったって、だから彼は自分の研究の成果を使わざる得ない状況を作り出だしたのさ・・・・・力によってね。いや、正確的に言うと世界中の軍事力が彼1人の力に及ばなかっただけのこと。」

官長の話に俺の周囲は暗い雰囲気になる。伊達やその後で仕事をしていた人たちが動きを止め、こちらの話を聞いていた。

「で、ここで何をしているんですか?」

「いい質問だ、ここではもとの世界の奪還を目的としている。」

なぜなんだ?なぜもとの世界を取り戻そうとするのだろう?おかしい、記憶の世界ならば死ぬことはないのに・・・・・・・・・・・・

「なぜ、そんな危険を冒してまで取り戻そうとするんですか?」

「欠点が見つかったんだ・・・・・・・それは世界がリセットされることだった、記憶を閉じ込めるといっても限りがあってね、その限界が近づくと記憶、人間関係などがリセットされるんだ。」

「リセット、つまりどういうことですか?」

俺のした質問に周囲が凍りつく、どうやら触れてはいけないところだったらしい・・・・・・・・

そして、その沈黙を壊すように話し出したのは伊達だった。

「今は、あなたには分からないかもね。いずれ分かるわ、生きるということがどういうことか・・・・・・。」

すると突然、警報が鳴った。周囲はあわただしく動き回り、伊達や官長までも動揺しているのが分かった。

「ど、どうしたんだ?」

「敵よ、敵が攻めてきたの。」

「敵の数、15体」

なにやら、敵が攻めてきたようだった。俺は何もすることができずただ立ち尽くしていた。俺には、何もできることは何もない・・・・・・・・こんなに近くにいるのに・・・・・・自分の無力さを改めて痛感した。

「ちょっと、伊織行くわよ。」

「行くって、どこへだ?」

「決まってるじゃない、戦場よ!」

何を言っているのだろう、この人は・・・・・・・・・・・・・・

「そうだな、敵のレベルは1と低い初めての彼でもいけるだろう。」

「大丈夫ですかね?俺なんかで・・・・・・・」

「装備はどうする?あっ、オート式の拳銃しかないからこれで何とか戦って!」

あの・・・・・・・・・俺の話聞いてます?

俺の質問は、どうやらスルーされたようだった。

「拳銃って、危なくないか人間に当たったりしたら・・・・・・」

「大丈夫です。敵は人間ではありませんし、その銃はその敵にしか聞きません。」

答えてくれたのは、小柄な女の子だった。背は俺の肩のあたりだろうか、俺が背があんまり高くないからいかに彼女が小柄かわかる。

「伊織、シューティングゲームのような軽い気持ちでやるのよ、あんまり固まってはダメ。」

そういうと、彼女は光の粒になって消えた。

「どうなって・・・・・・」

俺が言葉を言い終わる前に俺自身も光の粒になって消えてしまった。


気がつくと、そこは荒地だった。周りには崩れたビルや一軒家の残骸が無数に転がっており、視界が悪い。こんなところを襲われでもしたら・・・・・・・・・・

「集中して、敵が来るわ。」

固まる空気、周囲に沈黙が流れる。

先に動いたのは敵だった。

「何してるの、あなたの武器は遠距離向きなんだから間合いを詰められたら終わりでしょ、さぁ、早く。」

俺は渡されたオートガンを握り、襲ってくる影へめがけてトリガーを引く。連射された俺の銃弾が影にあたり、影が消える。

「なるほど・・・・・確かにゲーム感覚だ。」

俺は、まだ衝撃で痺れている手のひらを見つめてそうつぶやいた。

あとは、コツをつかんだら簡単だった。15体もいた敵はあっという間にいなくなってしまっていた。

「お疲れ、初めてにしてはなかなかやるじゃない。」

そういって、俺に笑顔で笑いかける伊達・・・・・・・

俺は、彼女の笑顔を再び懐かしく感じてしまう。それに、自分が戦闘を行なった戦場や今握っているオートガンも微かにだが記憶の中にあるような気がする。もしかして・・・・・・・俺が見たあの夢って本当のことだったのか・・・・・・・・・

そんなことある訳ないだろう。

「伊織、行くわよ。」

俺の考えがまとまらず考えている所に伊達が話しかけてきた。どうやら基地に戻るらしい・・・・・・

俺は、「ああ、わかった」といいその戦場をあとにする。

2人とも光の粒となって消えたあと、突然吹いた突風にそこに咲いていた花が散った。





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