Out of joint
どこから見ても、普通の日常。それは、誰もが最初から持っていて当たり前のもの、
例えば、公園では子ども達が遊び、社会人は会社への通勤する。
どこからどう見ても平和な日常だ。
もしも、その全てが偽りだったなら、どうだろう?
気がつくと、そこは戦場だった。両手には拳銃、背中を合わせるようにして後には、少女がいたその手には彼女の背丈ほどの太刀が握られている・・・・・・・・
「囲まれたわね・・・・・伊織。」
「あぁ、びびったのか、雫?」
周りには、数十人の人影・・・・いや、人の気配がしないからもしかしたら違うのかもしれない。
風が止んだのと、ほぼ同時に2人は攻撃を仕掛ける。
俺は、次々に人影を撃っていく、ただ、当てるだけでは倒すことはできないらしい。だが、自分の撃つ銃弾に無駄なものはなく一発一発が人影の急所を捉えている。
ふと、隣を見ると雫が戦っている、彼女の太刀捌きは、すばらしく、流れるように人影を斬り捨てていく。
だが、彼女を遠くから狙い、銃を構える人影が2つ見えた。相手が撃つ前に仕留めようと2丁の拳銃を2つの影へ向かって発砲した。
しかし、弾切れのためか一発しか出なかったようで仕留めたのは1人だけだった。このままでは危ない!「雫、危ない!!」
とっさに彼女を庇おうと自分の体を盾にして彼女を庇うようにして銃弾を受けてしまう・・・・・・・・・
「い、伊織?」
「早く、早くあいつを仕留めろ・・・」
俺が、声を絞りだしそう言うと、彼女は目に涙を溜めて答える。
「う、ううん。」
彼女は飛んでくる銃弾をうまい具合に体を反り、足を引き、間合いを詰める。人影が気がついた時には彼女の間合いだった、彼女の太刀はそれを真っ二つしてこの戦闘が終わった・・・・・・
「伊織、大丈夫?」
「すまん、当たり所が悪いようだ・・・もう基地でも直せないだろうな。」
「う、嘘よ。そんなの・・・・」
「くっ、もうそろそろ限界だ。体の光分子が崩壊し始めようとしている。」
「そんな、消えないで、伊織!」
消えて欲しくない、こんな彼女の望みとは別に伊織の体が消滅を始める。両手両足がそれぞれ光の粒となり消えていく・・・・・・・・
少しずつ意識がなくなっていく、まるで、夢から覚めるように・・・・・・・・・・・・・・・
いつもと変わらない朝、いつもと変わらない時間に目覚ましが鳴る・・・・はずだった。
あれ・・・・、なんで鳴らないんだ? そう不思議に思っていると、
いきなり、顔に大きな衝撃を受けた。・・・・・・どうやら、殴られたらしい。
「ぐぅ#”$#”#%#”%~。」
「起きなさい!朝よ。」
今、俺を殴って起こしたのが、幼馴染の江口 翼だ。小3から高2になった現在までで毎朝俺を起こしに来てくれる。そのこと自体はうれしいのだが、顔面を殴って起こすのはやめて欲しい。
「翼、いい加減、殴って起こすのはやめろ!」
「えっ、そんな!アンタが二度寝しないようにするためよ?」
「その気使いは嬉しいが顔を殴るのはやめて欲しい・・・・・・。」
いい加減毎朝されると顔がせんべい見たく平べったくなってしまいそうだ・・・・・
「分かったわ、次からはやさしく殴るようにするわ・・・・主に顔を。」
って殴るんかい!しかも顔、・・・・なんて自分でも惚れ惚れするぐらいの鋭いツッコミを入れるも、口には出さない。なぜなら、彼女は俺のためにやってくれているのだからそこのところは分かっているつもりだ。
なんだかんだで騒がしいのだが、これが、毎朝の日課だ。
俺、佐藤 伊織の日常なのだ。
「行ってきまーす!」
誰もいない自分の家へと声をかけてから家を出る。俺は、高校生になってから1人暮らしをはじめたため、家には誰もいない。ただ、夕食は翼が気を使ってくれているようで毎日作りに来てくれている。
しばらく2人で歩いていると、電柱の影に隠れている少女を見つけた。あの彼女の名は春日野 沙紀といい、僕の彼女だ。
「おはよう・・・・・・伊織君」
「ん、あぁ、・・・・・・・・おはよう。」
「あんた達、付き合ってるのになんかぎこちないわね・・・・・・・。」
これで、いつもの通学するメンバーがそろったわけだが、実は沙紀と翼は中が悪い!
その中に挟まれている俺といったらもう、・・・・・・・
自分でもこの状況のことは分かっているつもりなのだが、他の人からすると相当羨ましい状況らしいのだ。もし、自分が他人だったならそう思うことだろう。だが、幸福な一時というのは意識しないと分からないもので、残念ながらなれてしまった俺にはわからない。
教室に入る、すると既にほとんどの生徒が席についていた。後から入った伊織たちが目立つようになる
静まり返る教室、長く静寂に包まれていたこの空気を壊すかのようにドアを開く音が聞こえた。先生だ、先生が入ってきた。その後には、1人の少女が着いてきている。
『転校生か・・・・・』と心の中でつぶやくが、彼女の顔を見てあることに気づいてしまう。彼が今日見た不思議な夢、その中に出てきていた少女にそっくりだったことに・・・・・・・・
「・・・・・・嘘だろ。」
いつもと変わらない日常、この日から世界の歯車は少しずつずれてしまう。そう、この少女の登場によって、・・・・・・・・・・・・・
担任の真田先生がだるそうに生徒の紹介し始める。
「あー、何だその、転校生だ!自己紹介を頼む。」
とても、担任とは思えないような適当さでホームルームを進めていく。
「私は、伊達 雫といいます。みなさん、よろしくお願いします。」
俺は、その雫という名前を聞いてあまりの驚愕に体が動かなくなったように感じる。
『雫ってそんなバカな、たまたま俺の夢に出ていた少女、容姿・名前まで一緒の人物がこのタイミングで学校に転校してきた?そんなうまい話あるか!』
と俺は思ったのだが、事実目の前にいるので現実と認めざる得ない。だがそんな、俺の顔を見て彼女は微笑んだ。その笑みは、寂しさとうれしさが入り混じっているかのような複雑な微笑みだった。
「それでは、伊達さんあの席に座ってください。」と先生が指を指した先は俺の席とは真反対だったのだが、彼女はなぜか俺の席の方向へ歩いてきた。そして、俺の席の横まで来ると立ち止まり
「後で屋上に来て・・・・・・・・・伊織。」
「・・・・・・・・!」
俺が驚いたのは彼女が俺の名を知っていたということではなく、俺にその言葉を言った彼女の目に涙が溜まっていたからだった。彼女は涙を流すまいと、必死に堪えているようだが、それでも涙が一つの線になってほほを流れていく。
「よかった、存在しててくれて。」
彼女がボソッと漏らした言葉を耳にして違和感を感じた俺は彼女の方を見るも彼女は目をそらし自分の席へと戻ってしまう。
『存在しててくれて?あの夢のことでも関係あるのだろうか・・・・・・』
そんなことはないだろうとは思いながらも、一時限目の準備に取り掛かることにした。
1時間、2時間と時間が過ぎていく。だが、頭から離れずただ、繰り返し言い聞かせられているかのような錯覚に陥ってしまった。彼女のあの悲しさと嬉しさを含んだ瞳、彼女の言ったなぞの言葉のことを考えていると、ボーっとしてしまう。気がつくと周りには誰もいなかった、外からは多くの生徒の声が聞こえる。
「放課後?・・・・・・っっっ!!」
彼女が屋上に来てと言っていた放課後になっていた
俺は急いで階段を駆け上る、自分のいる2階の教室から屋上は2つ上の階だ。すぐに屋上にたどり着くとやはり、彼女がそこに立っていた。前と同じように瞳に涙を浮かべながら・・・・・・・・・・
だが、不思議なことにさっきまでとは異なる感情が芽生えている自分に驚いてしまう。
「懐かしい?・・・・・・俺はいつかどこかで会ったことがある?」
彼女を見た時、それとなく懐かしさを覚えた俺だった・・・・・・・・・・・・・・・・・