休憩、嵐の前の静けさ
執筆者:百合宮桜
上手く魔物(?)のようなものから逃げた私たちは現在、レリオさんの起こした火で暖をとっています。
「エレーナさん、はぐれた人達の行方とかもわかるのかい?」
アウロさんがにこにこ笑いながら聞いてきました。
「はい、もうわかっていますよ。リーナさんがくれた保存食を食べながら作戦会議をしましょう?」
「「「アレ、食べるの?」」」
スキンクさんとレリオさんが引きつった顔で私を注視しています。そんなこと言ったってしょうがないじゃないですか! アレ以外に食べ物ないんですから!
「私は食べるよ。リーナさんがせっかく心を込めて作ってくれたんだ。食べないなんて失礼じゃないかい?」 アウロさんは優しく諭すようにそう仰いました。流石、自称お婆さん。懐の深さが違いますね。
「いや、でもさ……」
「そうだぜ、婆さん! いくら俺が防毒マスク被ってたって体内の毒までは防げねぇよ!」
そりゃそうでしょうね。
「まあ私もそのまま食べろとは言いませんよ」
「熱湯消毒でもするの?」
「違いますよ、スキンクさん。これをどうぞ」
そう言って手渡したのはいつぞやも使った竜人族の秘薬。
「ソースか?」
「そうですよ。前にも使ったのですが、味がマシになり、気絶しないのです」
「まあ、気絶しないで済むのは有り難いけど……」
味は……やっぱりダメなのか。レリオさんは少し遠い目をして仰いました。全く味がなんだって言うんですか! あ〜これだから戦争を経験してない世代は困りますよ、贅沢で。最も心の中で思うだけで口には出しませんが。
「ひゃひゃひゃ、本当に大丈夫なのかい?」
ニヤニヤ笑いながらスキンクさんがソースを見つめます。
「大丈夫ですよ」
それで漸くスキンクさんも信用したのでしょう。ソースを受け取って、ご自分の保存食にかけられました。皆さんもそれに倣います。
「ありがとねぇ、エレーナさん」
最後にアウロさんがかけて、私の元へソースが戻ってきました。私も適当な量をかけて、皆で食べました。その時です……
バッターンとレリオさんが後ろに倒れました。泡を吹き、目は焦点があっていません。彼はどうもソースをかけていなかったらしいのです。Mっ気があるのでしょうか?
まあそんなことはどうでもいいのです。この人手不足の時に倒れられると流石に困るので私はナノリペアを取り出しました。レリオさんに飲ませようとしたのです。
「待ちな」
後ろから声がしました。スキンクさんです。
「何でしょうか?」
「あの嬢ちゃんの料理で倒れた奴にはナノリペアは効かねえよ。ナノリペアは壊れた細胞の修復と活性化をはかるもんだからな」
「そうでしたね。私は随分と慌てていたようです。でも治せないとなるとどうするのでしょう?」
「見捨てて先に進むしかないだろうねぇ」
ずずっとアウロさんが縁側でお茶を飲んでいるような雰囲気で話します。
「でも……」
「起こしても役に立ちそうにねぇしなぁ」
お二人がそう言ってるなら仕方ないですね。最短ルートで行く位しかレリオさんへの罪滅ぼしにはならないでしょうし。
「さっき手に入れた地図の情報をモバイルパソコンに起こしますね」
そう言って、私はトランス状態に入りました。
一分も経たないでコピーが完了しました。我ながら見事に纏まっています。
「皆さん、こちらへ。画面に映っているのが洞窟内の地図です。ラグナさんは洞窟の入り口にいます。何故かはわかりませんが、ずっとそこにいるんです。艦長のチームは洞窟前部ですね。この辺です。まだ魔物にも会わず、平和に進んでいるようです。私達がいるのが洞窟地下です。もう少し奥に入るとワープがあります。洞窟内の分岐点へ向かうワープです。艦長のチームもこのまま何事もなく、進めばそこへ到着するはずですから……そこで皆さんを待ちませんか?」
「俺は異論はねぇよ。もとよりここのことは何もわかんねぇしな」
「私もかまわないよ」
お二人の同意が得られたのでいざ出発です。
念の為、レリオさんへの伝言を残します。
少し奥に箱のようなモノがありました。三人入っても大丈夫そうな大きな箱。能力で調べたら、案の定ワープの機械でした。皆で箱に入ると中にボタンがあったので、それを押しました。ヴヴンという機械にありがちな奇妙な音を立てたと思うともう洞窟の分岐点に到着したようです。場所が明らかに違います。ノイウェル艦長たちはまだ来てないようですね。これからの作戦を立てながら待ってましょう。
洞窟前部
ノイウェル、リリナ、禾槻、セルシア
分岐点
スキンク、エレーナ、アウロ
洞窟地下
レリオ(意識不明)
洞窟入り口
ラグナ(意識不明)