黄昏の時代
西暦2000年代末期。
六度目の世界大戦で使用された自律型機動兵器端末群と、721基の大陸間弾道弾による無差別攻撃によって、惑星環境は徹底的に破壊された。
勝者のないまま終息した戦争の後、深く傷付いた地球に訪れたのは、それまで存在していた生命の大半が死滅した荒廃の時代だった。人類もまた総数の約9割を喪失し、黄昏の時を迎える。
退避シェルターに身を隠し、致命的な危機をやり過ごす事で生き残った一握りの人間達。彼等は人類という種が滅び去ることを恐れ、長年に渡り培ってきた科学の力と、連綿と伝えられる魔術の神秘力を用い、存続の方法を模索していく。
遺伝子操作によって、苛酷な環境下でも生き永らえる強靭な次世代種の創造。
残された僅かな生体サンプルの培養と複合を繰り返し生まれた、新世界適応型の動植物達。
環境改善修復を目的としたナノマシンによる大々的テラフォーミング計画。
既存の生命体を高次の機械部品で換装し、あらゆる状況に対しての適性向上化を図るサイボーグ躯体の応用。
世界は人々の手によって様相を一変させながら、辛うじて再生の道を辿りだす。大陸の形状や生態系の一大変革が、新たな時代の始まりを告げていた。
それより3000年余。かつての面影を失い、まったく異なる形で世界は存在する。
終末戦争と呼ばれた彼の大戦が、古の伝承として語られる時代。世界は四つの巨大な大陸と、そこに息衝く無数の生命によって成り立っていた。
極寒の地、北の大陸アルコノスト。日射量の少ない寒冷気候で、一年を通して風雪が止まない。北上するごとに寒さは苛烈さを増し、生命の耐えられない零度の山脈が深く連なる。
豊穣の地、東の大陸カスミガ。肥沃な大地と豊かな自然に恵まれた生命の楽園。四季の変化に富み、温暖な気候から多様な生態系を有す。
熱砂の地、南の大陸マーサレスは。乾燥した大地は荒野と砂漠が多くを占め、作物の生育には向かない。しかし古代文明期の遺跡が大量に埋没しており、その調査と発掘で賑わう。
戦乱の地、西の大陸グレゴリウム。穏やかな丘陵部に大小数多の国々が犇き、大陸の覇権をかけ壮絶な争いを繰り返す。現在は強大な軍事力を背景に、グロバリナ帝国が版図を広げる。
かつて繁栄を極めた人間と、人に似て非なる新生亜人種達が共存する世界。未知なる場所も多く、前人未到の領域を踏破しようとする冒険者も珍しくはない。
だが彼等の活動は、その多くがある障害によって悉く阻まれてきた。魔物と呼ばれる存在によって。
人間、亜人種を問わず「人類」を襲撃する天敵。強力な兵器や魔術で武装した異形の怪物。それが魔物である。大戦期に作られた自律型機動兵器端末群が、自己改造及び自己増殖の末に世界の随所へ群生するに至ったモノ達。
冒険者達が世界の神秘を解き明かす為には、凶悪な魔物との戦いを避けられない。探究心と使命感とに彩られた彼等の冒険は、常に危険と隣り合わせのものであった。
そんな時代の中、一隻の艦が姿を現す。それに魅入られた者達の冒険が始まった。