第11章 ざまぁの瞬間
翌朝、全社員が大会議室に集められた。
壇上には社長、役員、人事部長、法務担当。
鬼塚は端に立ち、スーツはよれよれ、目の下には深い隈がある。
フロア全体に緊張した空気が漂った。
「本日、コンプライアンス調査の結果を報告します」
社長の声がマイクを通して響く。
スクリーンに資料が映し出され、証拠の一覧が表示される。
「取引先への不正支出、帳票改ざん、パワーハラスメント……
これらが確認されました」
会場がざわつく。
鬼塚が立ち上がり、机を叩いた。
「でたらめだ! 誰がこんなでっち上げを!」
法務担当が冷静に答える。
「音声、ログ、契約書、複数の証言。証拠は十分です」
会場に沈黙が落ちる。
鬼塚が俺を指さした。
「お前か……お前が全部仕組んだのか!」
視線が集まる。
俺はゆっくり立ち上がった。
「俺だけじゃありません。ここにいるみんなが証言しました」
社員たちが次々と立ち上がる。
「私もです」
「俺も」
「三年前の件、ずっと言いたかった」
声が次々と重なる。
会場が波打つ。
鬼塚の顔から血の気が引く。
「……お前らまで」
社長が静かに告げる。
「鬼塚部長、あなたを本日付で解任します。退職金は支給しません」
鬼塚が崩れ落ちる音が会場に響いた。
誰も拍手しない。
ただ、重い沈黙が満ちた。
「……すまなかった……」
鬼塚がかすれた声で呟く。
だが誰も答えない。
警備員が鬼塚を連れ出し、扉が閉まった。
静寂の中、村瀬がぽつりと言った。
「……終わったんですね」
藤田が深く息を吐いた。
「やっと、だ」
会場の空気が少しずつ緩み、ざわめきが戻る。
佐伯が笑って俺の肩を叩いた。
「山田さん、やりましたね」
「いや、俺たち全員でやったんだ」
その言葉に、誰もが小さく頷いた。




