3話 将来有望
ゆっくり目を開けるとそこには、とても美人な人が私の顔を覗き込でいた。
こげ茶色っぽい黒色のサラサラのセミロングの髪の毛と吸い込まれそうなほど綺麗な青色の目を持っている。
「あれ? 今日は起きるのが早いわね。寝顔も可愛いけど、起きているときも可愛いわ。……ほんと、誰に似たのかしら」
「……?」
転生は、成功したのかな?
試しに、視界に入るように手を頑張ってあげてみる。
大体のラノベでは、手を見た時に前世よりも小さくなっているということで分かることが多いからな。
実際に自分の手だと思われるものを見ると、高校生の手よりは確実に小さくなっていた。
視界に映っている手が自分の手か確認するためにも、握ったり広げたりしてみる。
すると、私が思った通りに動いたので、自分の手だと分かった。
本当に、転生したんだ……!!
それに、赤ちゃんからの転生って、努力次第では皆よりも早く基礎を固められるというメリットがあるじゃん!
ということは、異世界無双も夢じゃない――というか、実現可能なんじゃ!!
嬉しさと実感が沸々と湧き上がってきて、声に出して叫びたくなった。
「……お、おぎゃ~!!(やった~!!)」
「どうしたのかしら? 手を挙げちゃって。抱っこほしいの?」
さすがに、赤ちゃんというということで言葉を発することは出来なかった。
覗き込んでいた人が私の叫びに反応して、手を伸ばしてくる。
言葉を聞く限り、私のことを抱き上げようとしているらしい。
それで、この美人さんは、私のお母さん……で、合っているのかな?
貴族とかそういうわけではないし――きっとそうだろう。
私の背中まで、お母さんの手が回ると、私の体は持ち上げられた。
突然ではなかったけれど、浮遊感に襲われて少し驚いた。
それでも、抱っこの状態までになると安心感が出てくる。
それと同時に、人の体温が心地よくて、瞼が重くなる。
さっき目が覚めたばっかりなのに、また眠くなるって赤ちゃんの体は少し不便なところがあるな。
これから、少しの間は体の自由が利かなそうだな……。
睡魔に襲われ、頑張ってあらがってみたものの本能にはあらがえず、お母さんに抱きかかえられたまま眠ってしまった。
◆ ◆ ◆
あれから、三カ月ぐらいが経った。
たどたどしいところがあるものの、話すことができるようになった。
この三か月間は、ひたすら情報収集をしていた。
とはいえ、お母さんが読んでくれた絵本などの書物や、両親が話しているところを聞いて、知った情報だけれど。
まず、どうでもいい情報としては、初めてこの世界に来て、前世の記憶を思い出したのは、生後約一週間ぐらいだったということが分かった。
それから、日本と比べて、文字と言葉が違った。
まぁ、当然と言えば当然だし、読むことも、話すことも、理解することもできるので、生活に支障はなかった。
書くことは、まだペンを持つことがないので分からないけれど。
それに、元々神様から説明されていたので特に驚くこともなかった。
ここからは重要な情報だ。
というか、殆どの情報は重要なので、どうでもいい情報の方が少ない。
1つ目は、一日などの時間的なことだ。
一週間は七日で、一カ月は大体三十日といった感じで地球とあまり変わらなかった。
一つ驚いたことがあるとすれば、一日の時間についてだ。
地球の歴史上では中世ヨーロッパでは、正確な時間というものがなかった。
というのも、「五分」や「二時間」といった正確に時間を図れるものがなく、太陽の位置などで「朝」、「昼」、「夜」のようにざっくりとしたものだったはず。
でも、この世界には既に正確に時間が分かる時計があり、一日は二十四時間という概念があるのだ。
魔法とか、地球にはないものがあるからなのかな。
考えても意味がない気がするので、そういうことにしておこう。
2つ目は、地形についてだ。
どうやら、大陸が五つぐらいあるらしい。
だけれど、まだ見つけていないところがあるかもしれないので、確定はしていないらしいが。
それと、和風の国があるとかないとか聞いたから、いつか行ってみたいと思った。
それから、私が住んでいるこの場所は『アレクサンドリア王国』というらしく、『アルノルト』という地名の辺境なのだとか。
ラノベでお馴染みの国名が王家の苗字だったり、その地域を治めている貴族の名字がそこの地名だったり、といったものを採用しているらしい。
ここの領主様は、領民と一緒に畑仕事をするなど、とても異世界にいる悪徳貴族とはほど遠い存在だった。
おそらく、神様が気を利かせてくれたのだろう。
そのことがあってなのかは分からないけれど、特に辺境伯家と家の近い私の家と、お隣さんの『アーネスト家』は、よく交流することが多いらしい。
家から出たことがないので、分からないけれど。
だから、私の家には高級品とされる書物が『アルノルト辺境伯』のおさがり的な感じでもらってきて、沢山あるのだ。
領主様と仲がいいのは、これから何かあった時に相談することができるのでラッキーだったかも。
3つ目は、私の家族構成についてだ。
取り敢えず、私の名前は『イーナ・カーナルト』ということが判明した。
それで、お母さんの名前が『アイシア・カーナルト』で、お父さんの名前は『レリー・カーナルト』だ。
職業としては、お母さんが専業主婦といったところで、自家製の野菜等を育てたりしている。
お父さんは、近くの森で、動物を狩る猟師・狩人的な職業をしているらしい。
とはいっても、『弓使い』らしく、あまり動き回らないし、基本的に動物も含めて生き物に襲われることもあまりなく安全なんだとか。
だから、家の食卓に並ぶものは、基本的に自給自足だ。
時々、領主様からもらったらしい高級食材が並んでいることもあるけれど、美味しいものを食べられるのだから、なんでもいっか。
それに、前世では両親は私が五歳の時、物心が付き始めたぐらいのときに交通事故で亡くなったから、居てくれるだけで嬉しいし。
で、4つ目が一番大事ともいえる、『魔法』についてだ。
この世界には、魔法があり、基本的に人口のほとんどが魔力を持っているという。
だが、魔法が使えるかは『職業』によるらしく、魔法職的なものにならないとあまり使えないらしい。
でも、生活魔法などの簡単な魔法なら魔力を持っていれば使えるとか。
魔法職に就けなかった人――例えば『剣士』などだったら、剣に魔力を乗せて攻撃することで威力を上げるというように魔力は職業によって違った使い方をするらしい。
だから、必ずしも魔法職に就かなくても、魔力は重要になるとか。
人生のほとんどが決まるとされるジョブが分かるのは、13歳になったら教会で行われる『授けの儀』で分かるらしい。
これは、創造神様も言っていたことと似ているところがあるから、きっとこれのことを言っていたのだろう。
ということは、その時にまた神様に会うことになるのかな?
だとしたら、その時までにどんなジョブがあるのかとか調べておかないとな。
話は変わって、この世界の魔法の種類は異世界の定番の『四大属性』の『火・水・風・土』と『特殊属性』とされる『雷・氷・光・闇』の8つが主にある。
使える属性――というか、得意とする魔法もジョブによって決まるらしい。
要は、ジョブが結局のところ、何をするにも大事らしい。
だけれど、神様の話ではジョブはランクを上げればジョブのクラスが上がるらしいから、意外と『職業)』よりも『スキル』とかの方が需要が高かったりして。
それだったら、スキルのことも調べないといけないのか。
まぁそれは置いておいて、こんな感じで、ざっくりと情報をまとめるとこうなった。
情報をまとめている私は、今何をしているかというと、家族でピクニックに出かけている。
だけど、特にやることもないので、こうして、情報を整理していたというわけだ。
どうして、こうなったのかというと、お父さんが今日休みだったらしく、私も一日に起きて居られる時間も長くなったということで、「外に行ってみよう」ということで、ただいま外にいるのである。
初めての外は、草原が広がるところに連れて行ってもらった。
日差しも風も暖かく、そよ風がお母さんの髪の毛と背の低い草を撫でるようにして通り過ぎていく。
「おーい! アイ! イーナ! こっちに川があるぞ! しかも結構綺麗な」
突然、お父さんが大きな声を出してきた。
お父さんは、私の想像していた『猟師・狩人』とは違い、洗いっぱなしの青みがかった黒髪と黒い目を持った、綺麗な顔立ちの男性だ。
「そうなの? 行ってみる?」
お父さんの言葉にお母さんは、川に行くか、行かないかの選択肢を私に示した。
私は、立って歩くことどころか、ハイハイもできないので相も変わらずお母さんに抱っこされている。
だから、お母さんの綺麗な顔と瞳が赤ちゃんの手でも伸ばせば届くぐらい近くにある。
うっ! 直視ができない!!
それにしても、この両親ほんと美形だな。
もしかして、異世界ではこれが普通なのかな?
これで、私の容姿がよくなかったら、ちょっと泣くかも。
容姿?
――もしかしたら、川で確認できるんじゃ
だったら、答えは一つ!
「うん! いきゅ!」
あ、噛んだ。
いや、まだ生後三ヶ月なのだからこれが普通か。
やっぱり、幼児の体は不便なところがある。
だけど、前世の知識を使って、冒険者になるために必要な体力づくりや知識の吸収が早くからできるという最大のメリットがあるから、これぐらいの些細な不便は我慢しないとな。
成長すれば解決する問題だし。
「そうだね。行ってみようね」
そう言うなり、お母さんは私を抱えたままお父さんの方へと向かった。
お父さんの元へ着くと、お父さんが言う通り、底まで見えるぐらい透明で綺麗な川がそこには広がっていた。
もっと近くで見てみたい。
その気持ちが強かったのか、思わず手を思いっきり伸ばしてしまう。
「かわ! かわ!」
「……ふふ、川に興味津々みたいね」
お母さんは、抱っこをしたまましゃがみ、川の近くまで行ってくれた。
そうしたのは、きっと川が危険な所だと分かっていたからだろう。
この川は、十五センチもあるか分からないぐらい浅いけれど、それでも危険なことには変わりがないからな。
川を覗き込むとそこには、お母さんに抱きかかえられた赤ちゃんの姿があった。
まだ、容姿があまり確定しないとはいえお母さん譲りの吸い込まれてしまいそうなほどきれいな青い(少し碧色が混ざっている)瞳とサラサラの髪、髪の毛の色はお父さん譲りらしく、青みがかった黒髪だった。
これが私か。
我ながら将来有望そうで良かった。
そんなこんなで、私の容姿も確認できたので大満足の一日になったのであった。
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※これは、『那雲 零』と『黒神 波切』の共同創作です。