2話 異世界キタ━━━━(゜∀゜)━━━━!!
「え、えっと、もしかして神様ですか?」
「神様か。普通は、どなたですか? と聞くところだと思うんですが。さすがは、オタクだと聞いているだけはありますね。『椎名 風花』さん。」
何でこの人(?)は、私の名前を知っているのだろう。
というか、何故オタクということも知っているのか?
神様だからかな。
聞いているだけはあるって言っていたし、誰かから聞いたということは分かったけれど。
「そういえば、風花さんの疑問に答えていませんでしたね。確かに、私は人々に神様と呼ばれています。ですが、私がどういった存在かは私、いえ、私たち自身では付けてはいないので正式名称のようなものはないですね。」
ゆっくりとした優しい口調で話す神様。
というか、話の流れもゆっくりな気もするけれど――気のせいだよね。
「そうなんですね。……そういえば、お名前は有ったりしますか?」
「名前、ですか。はい、ありますよ。名前はですね、※♪☆▲◎☆です。」
うん? なにも聞き取れなかったというか、規制音が流れていたというか、ノイズが入ったというかで、名前が分からなかったんだけれど……
神様には申し訳ないけれど、もう一度言ってもらうしかないのかな?
「すみません。名前の部分だけ聞き取れなかったんですが……」
「そうなんですね。分かりました。※♪☆▲◎☆という名前です。今度は聞き取ることができましたか?」
やっぱり、上手く聞き取ることは出来なかった。
これも、ラノベでいうところの神様と人との格差問題的なものだったりして。
「すいません、やっぱりだめでした」
「まあそうですよね、私たちは貴方達の言うところの神様です。存在の格が離れすぎていますから。創造神とでも呼んで置いてください。」
やっぱりそうだった。
この神様は地球の神様なのかな?
「そ、創造神ですか〜 地球の神様なんですか?」
「そうですね〜 色んな世界を管理しているのが正しいですかね。神様にも格があって私はその中で管理神と呼ばれる上から三番目の神ですね。」
「なるほど〜」
だとしたら、この神様よりも位が高い神様がいるということで、その神様たちには、会うこととかできたりするのかな?
会えたところで、特にやりたいこととかもないから、別にいっか。
「そろそろ本題に入りますね。風花さんはどうしてここにいるのか分かりますか?」
私の内心の疑問などつゆ知らず、話を進める神様。
「トラックに轢かれそうな女の子を助けて、自分が轢かれたような気がします。それで、死んでしまった……はず?」
神様の質問に答えつつ、私の心の中は大騒ぎだった。
これって、もしかして……
もしかして、異世界転生のやつ〜!!
「そうですよ、異世界転生のやつです。」
「へ? も、もしかして思考が読めちゃったりします?」
「ちゃったりしますね。」
「ええ〜 じゃあ今までの思考も全部ですか?」
「はい、全部読めちゃってますね。」
オタク全開の思考が全部丸裸になっていたら、もうお嫁にいけない〜。
いや、お嫁に行くつもりも無いからいいのか。
「お嫁には行けますから、安心してください。」
「行きませんよ!」
やばい、神様相手に本気程ではないけど、90パーセントぐらいで、つっこんじゃった!
「話を戻しますね、さっきもお伝えしたように風花さんは異世界転生ができます。」
「全オタクが望む神展開キタコレ!」
「思考が読まれるからって隠す気、なくなってきましたね」
隠しても意味ないですからね! と心の中で言ってしまったものの、これも聞こえているのだから、意味がなかった。
返事の代わりになったから、結果オーライってことで前向きに行こう。
「一応、理由を説明しておくと、風花さんは自分の命よりも、あの女の子の命を優先したということですからね。」
「分かりました。……それで、『例の件』については――」
「理由には興味なし、ですか。まあ、いいです。で、風花さんには今、3つの選択肢があります。『1つ目が記憶を消して地球で生まれ変わること。』、『2つ目は天国にいって両親に会って、一緒に暮らすこと。』、そして『3つ目が記憶を持って異世界に転生すること』ですかね。」
指を人差し指、中指、薬指と順番に立てて説明をしてくれる。
「といっても、転生ではスキルや最強装備みたいなものは渡せません。ですので、身一つで生きてもらうことになります。」
なるほどね。
選択肢が3つだとして、1つ目は無し。
記憶も無く生まれ変わっても楽しくないし、なにより、オタクとしても人としてもメリットが一つも見つけられない。
残るは、あと2つ。
2つ目――これと3つ目が迷う。
両親とは小さい内に離れちゃったけど優しかったし、とうまとはるも天国に来るかもしれないしな〜。
でも、オタクとしてはやっぱり、異世界というのには行ってみたい。
「ちなみに、その異世界の文明レベルとかは、どうなっているんですか?」
「異世界、ルーティニアという世界は、それこそ風花さんが好きなラノベという書物のテンプレ? と同じで、地球上の歴史上で中世ヨーロッパ風の文明が異世界の文明レベルです」
やっぱり、これもテンプレか~
でも、だからこそ、前世の知識(オタク知識)が役立つというもの!!
あ、そういえば、もう一つオタクとしては、大事なことがあったな。
「これが1番大切なんですけど、異世界と言えばのスキルや職業とか冒険者ギルドとかあるんですか?」
「勿論ありますよ、職業はジョブというものになっていますが。」
「レベルとかもあります。ジョブには、クラスがあって1から4まであります。レベルを上げることで、ジョブのクラスを上げられます。」
よし、とうまとはるには悪いけれど私は異世界に行こう!
レベル上げもしたいし、ジョブのクラスを4にしてみたいし、異世界で最強にもなりたい。それから、冒険者ギルドで最高ランクとかにもなってみたい!
詳しく説明してくれた神様は、私の返答を待っているようだった。
心を読めるのなら、既に答えは分かっているはずなのに、私の口から聴いてからではないといけないといけないのかな。
人生がかかっているのだから、それはそっか。
一度、瞼を閉じて深呼吸をすると、覚悟を決め目を開けた。
「決めました。私は……異世界に行きたいです」
「本当にいいんですか? 日本のように治安がいい訳でもないですし、スキルやジョブが手に入るのは13歳になってからですよ。」
最終確認をするように真剣な面持ちで訊いてくる。
さっきまでの、ノリの良かった神様ではなく、威厳に満ちた神様がそこにはいた。
さすがは、管理者という上から数えて三番目の位にいる神様で、ルーティニアという世界を作り出した創造神といったところかな。
確かに、治安がいいというイメージはない。
アニメなどでもそうだった。
それでも、私は――
「はい、それでも私は、異世界でやってみたいことがいっぱいあるんです」
「そうですか、分かりました。転生するに当たって、何か要望はありますか?」
「そうですね。……自由がある辺境の村人の子がいいです。いろいろ鍛錬とかもしてみたいですし」
「分かりました、辺境の村人の子ですね。そのように手配をしておきますね。」
準備をするためか、床に手をかざす神様。
そんな神様の様子を見て、私は少し焦った。
もう一つだけ、お願いを聞いてもらいたい。
「あ、あともう一つお願いがあって……」
「? それはどういったものですか?」
準備で集中していたらしく、私の思考を読みとめて居なかったらしい。
だからなのか、神様の顔がポカンとしていた。
とはいえ、実のところは、彼女にしか分からないが。
「えっと、ですね、お願いというのは――――」
◆ ◆ ◆
「……分かりました。その時が来たらそう致しますね。」
「よろしくお願いします。えっと、約束、ですよ」
「はい、よろしくされました。約束ですね。大丈夫です、約束は必ず守るので。じゃあ異世界を楽しんで生きてください。」
「『貴方の旅路に幸あらんことを。』」
神様の言葉に反応したかのように、私の足元に魔法陣が顕現する。
それから私の体が、徐々に光り出し少しずつ、体が薄くなっていった。
どうやら、この体は精神や魂だけで作られていたらしく、肉体というものがなかった。
薄れゆく意識の中で、この世界――ルーティニアでのこれからの生活に胸を躍らせていた。
さぁ、ここから私の異世界ライフが始まるんだ!
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※これは、『那雲 零』と『黒神 波切』の共同創作です。