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深を知る雨  作者: 淡雪みさ
第七章

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2201.02.15 ⑦



 《15:18 VIP席》春梅side



「えっ……ええっ!?」



VIP席にいた私はその光景を見て目を疑った。



「は、激しく燃えてない!?あれ……!」

「……どこだ?」

「進行方向にある建物!」



隣にいるタイランにそれを伝えたが、視力の悪いタイランはよく見えないのか目を細めながら眉を寄せる。



「確かに、煙が上がってるな」

「さっきの音といい、爆発したんじゃあ……」

「もしそうなら大事だな。他国で放送されたら日本帝国の警備の甘さが露見するぞ」



と。端末が、鳴った。鈴からの着信だ。



『もしもし、チュンメイ?』



こ、このタイミングで電話かけてくるってことは……まさかあれ、鈴が関係してるの?



『見えてるでしょ?』

「見えてる、けれど……」

『あれ演出だって説明してくんない?』

「無理があるわよ!?」

『お願い!パレードを中止にさせるわけにはいかない!フレームマシン置いてそれっぽくするから!』

「いやそんなもん置いたって不自然さは隠せないわよ!?」



反論する私も無視して、『頑張って!』と通話を切りやがった鈴。


隣で会話の内容を聞いていたタイランが、ぽんと私の肩に手を乗せる。



「お前ならできる」



……ああもう!


タイランもここ数年で随分毒されたのか、鈴からの無茶な要求に対し反応が薄くなってきている。


…………仕方ない。無理でも、やるしかない。



  [どうでしょうか!取り壊し予定だった日本帝国軍事施設内の建物を利用したパフォーマンスです!炎を使った演出は迫力がありますからね!扱い方を間違えると危険なものではありますが、専門家にもご指導を頂きこのパレードに相応しい演出を実現することができました!引き続きパレードをお楽しみください!]



テレパシーによる脳内へのアナウンス。


確実にこのパレードの参加者全員に届く声だ。


こちら側の軍人は予定に無い演出に戸惑っているだけのようだが、それ以上に驚いているのは日本帝国側の軍人たちで、皆が皆目を丸くしながら行進を続けている。


施設内の地図を見れば、あそこは日本帝国軍人の寮らしい。


……自分の寝床が燃えてて、しかもそれが演出だとか言われて、でも行進を続けなきゃいけない気持ちを考えると可哀想でしかない。


しかし私の放送により一般人は騙せたのか、誰も逃げようとはしなかった。



「はあ……。どうにかなったわね。でも鈴、一体何をしているの……」

「あの女の行動が謎なのはいつものことだろう。きっと今回も何か目的があってのことだ」

「……随分評価してるのね」

「評価してるのはお前もだろ。なんだ、やきもちか?」

「や、やきもちって……!私はそんな、」

「違うのか。残念だ」

「……っ」


「うっわー、入りにくい空気だなぁ」



背後から呆れたようなリューシェンの声が聞こえ、聞かれたくない会話であっただけにびくっと体が震えた。


リューシェンは女を口説くためか何度もVIP席を離れるのだが、まさかこのタイミングで戻ってくるとは。



「君らいつになったら付き合うの?」

「つ、付き合わないわよ!そんなんじゃないわ」

「出た出た、チュンメイのツンデレ」



クスクス笑いながら席に座るリューシェンから、女物の香水の匂いがする。


リーがいたら激怒しているところだ。



「にしても、うちの上将はまた派手なことしたねぇ。何があったのか知んないけど、面白いことこの上ない」



リューシェンの言葉から毒されているのはタイランだけではないことに気付き、今度は私が呆れてしまった。





 《17:00 訓練所》



「おい、聞いたか?一般部隊の女子、寮が新しくできるまで他んとこ泊まんなきゃなんねえってよ」

「まぁそうだろうなぁ」

「実家に帰る子も多いらしい」



女子寮が破壊されたのは演出班のミスとして軍人側にのみ報告された。


爆弾を仕掛けた人間がいたことは伝えられていない。


今回やってきた武力反対派の12人は私の意向で罰されず済むことになり、今後は別の形での活動を行うと約束してくれた。


勝手に調べたことだが、あの12人は武力反対運動グループの中でも存在感のある人たちらしい。


恩を売っておいて損はない。


今後邪魔されないためにも。


ティエンはあの後タイランたちに引き渡した。


いい加減大中華帝国に帰ってくれないと困るから。いつまでも居候させてられない。



爆風を防いでくれていた吉治くんは、事件が終わった後姿を消した。


協力してくれたことにお礼を言いたかったんだけど、あの子の目的は爆弾犯に対する私の行動の監視。


どんな形であろうと爆弾が処理された今、もう私と一緒にいる必要はないと感じたのかもしれない。





「ち、千端、お前マジで性転換した方がいいんじゃねーの!?」



赤いドレスに着替えた私を目にし、Eランク隊員たちが騒ぎ始める。


鏡を見て思った。我ながらこういう格好似合う。



「千端を女役にして正解だったな、やっぱ」

「絶対このタイプのドレス似合うと思ったんすよねー。まぁウケ狙いの女装ワルツなんでマジで似合ったら意味ないんすけど、1人くらいマジで似合ってる奴いてもいいっしょ」

「いやこれは女に見間違えるレベル!そーいや千端って体の方も華奢だもんなー」



同じくドレスを着用したムキムキEランク隊員が群がってきて、その似合わなさに吹き出してしまった。


EランクのパフォーマンスはAランクのパフォーマンスの後だ。


今はBランクのパフォーマンス中で、自分達の出番が来るまで私たちは訓練所で準備をして待つことになっている。



「千端、口紅塗ったか?」

「……あ!忘れてた!」

「お前抜けてるとこあんだな~」



慌てて渡された口紅を塗る私を見て、ぶはっと吹き出すEランク隊員たち。


……何だよ、近付きにくい筋肉バカたちだと思ってたけど、親しみやすい部分もあるじゃん。



「皆で記念撮影しようぜ、記念撮影!」



Eランク隊員全員の集合写真はスペース的に撮れないものの、近くにいた人間である程度集まって写真を撮った。



……楽しいなぁ。


ごめんねお姉ちゃん。


今だけは、戦争が始まるまでは、楽しく生きることを許してください。


その時が来たら、そちらへ行くから。


ちゃんと罪を償って、お姉ちゃんに会いに行くから。





「おい、次はAランクのパフォーマンスだぞ!」



誰かの声が聞こえ、私も慌てて窓の近くまで走る。


さすが冬、外は既に暗くなってきていた。


目を凝らしてセクシーダンスを踊る3人を見て思ったことは。


なんか……エロい。


ウケ狙いのつもりで提案したのに、笑えない感じだ。


何故か中国の女性陣から黄色い声が聞こえるし。


クソッ、女性アイドルグループの曲踊ってんのに何であんな男性的な色気が出るんだ!


そういやあいつらルックスは結構……いや、こういうこと考えるのはやめておこう。何か腹立つ。


どうせなら近くで見たいと思い、こっそり訓練所を出て人混みの中へ入っていく。



――すると。前方に、パフォーマンスを見ながら楽しそうに話している麻里と泰久がいた。



思わず立ち止まってしまったが、麻里はそう時間を経てずに気紛れな猫のように泰久から離れて行く。



な、何でだろう!


話してただけなのに凄くモヤモヤしたぞ!


……ああ、そっか。


曲技飛行から帰ってきた泰久と1番最初に話した女の子が、私じゃないことがショックなんだ。


私が1番最初に、お疲れ様って言いたかったのに。



「泰久のバーガー!」

「っ、」



背後から不意打ちで蹴り飛ばすと、泰久は見事によろけた。


私の方を睨み付けるように振り返った泰久は、しかし途中で動きを止める。



「……な、何」



あまりにも凝視してくるもんだから、不安になって後退る。


この格好、変に感じられた!?似合ってると思ったのに!皆も褒めてくれたし!



「あ、あぁ、すまない。……少し驚いた」

「驚いたって何!?驚いたって何!?」

「いや、悪い意味じゃない。何というか……女性的だなと思って」



女性なんですが。


まぁそうだよね、泰久にとって私なんて女でも何でもないよねーなんて苦笑いしていた時、とんでもない言葉を投げ掛けられた。



「可愛いな。似合ってる」



…………ッんがああああああああああああああああああああああああああああああ!!


やめてくれ!そうやって私の心を乱すのはやめてくれ!!






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