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深を知る雨  作者: 淡雪みさ
第七章

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2201.02.15 ④



通話を切って端末をしまった私に対し、吉治くんが不思議そうに聞いてくる。



「今の相手、誰なんですか?」

「協力者。別にいいだろ?1人でどうにかしろとまでは言われてないし」

「ふーん……協力者、ねえ。澤小雪ですか?あるいは相模遊?それとも大神薫?皐月里緒……は事情を知らない様子でしたし違いますよね。東宮泰久も午前中から曲技飛行の準備に行っていたはずですし、Sランク能力者に協力を要請したとしたら一ノ宮一也でしょうか」

「何でオレの交遊関係を把握してんだお前は!」

「やだなぁ、怖がらないでくださいよ。父さんに少し聞いただけです」



少し聞いただけでフルネーム覚えるか、普通?


紺野ファミリーは変わり者……あ、いや、げふんげふん、個性的な人ばかりだなぁ。



「残念ながら、その中の誰でもないよ、今回の協力者は」

「ほう、まだ他に交流が?」

「メモを出すなメモを」



新しい情報を得るチャンスとばかりに紙のメモを取り出す吉治くんを直ぐさま押さえ付ける。


渋々メモをしまった吉治くんは、次にこんな質問をしてきた。



「どうしてこの中の人たちには頼らないんですか?」



どうしてって言われても。


そりゃ一也とかその辺に頼ればもっと楽に解決するだろうけど……そんな解決法じゃあの極悪司令官のお気に召さないだろうし、それに。



「巻き込みたくないじゃん。オレが勝手に動いて勝手にお前の父ちゃんに弱味握られただけだし」

「さっきの通話の相手は巻き込んでいるのに?」

「あー、あいつはいいの。スリルを楽しめる子だから。寧ろ巻き込んでくれてありがとうって言ってもらいたいくらい」

「随分信頼しているんですね」

「まー、相棒だからね」



実際は信頼云々以前に消去法で選んだ部分もある。


一也は事情を知れば心配するだろうし、小雪は紺野司令官のこととなると理性的じゃなくなるし、Aランク寮のみんなには隠したいことが多すぎる。


そこまで考えてふと時計を見た。まだ昼過ぎだ。



「できれば夕方までに片付けたいんだよなー。夕方からはパフォーマンスだし」

「夕方からのランク別パフォーマンスは厳格さの無いゆるゆるな見せ物だと聞きましたが。サボっても問題ないのでは?」

「オレが見たいの、友達がパフォーマンスするし。それに、オレだってEランクのパフォーマンスではワルツ踊るんだぜ?サボったらペアの相手に迷惑かかっちまう」

「楽しんでるみたいですね、軍人生活」

「……そうだね。楽しいよ」



こんな日々も、もうすぐ消えるんだけどな。




航空機格納庫に着くと、そこには既に退屈そうにドラム缶に座っているティエンがいた。


その前には、ロボットが運んできたであろう10人の武力反対派の方々。


まだ眠っているのをいいことに全員分の端末を服から取り出し、ロック解除してそれぞれの連絡先を一通り確認する。


10人全員に共通する連絡先を探していると、ティエンが吉治くんを見て私に聞いてきた。



「このガキ何?」

「ガキって。お前も出会った頃はこんなだったじゃん」

「ボクこんな小さくなかったしィ」

「あーそーだっけ?覚えてないや。とにかく、そっちの子は吉治くんっていって司令官の息子さんだから失礼の無いようにね、“太郎”」



然り気無く太郎と呼び身分を隠せと暗に伝えるが、ティエンは私の話を聞いているのかいないのか「ふーん」とだけ返してくる。


さて……端末のチェックはしたし、ここからは直接聞くしかない。



「太郎、誰か起こして」

「はァい」



ドゴッ、と反対派の1人を容赦なく蹴り飛ばすティエン。


そんな攻撃的な起こし方でなくとも良かったのだが、結果的にその1人は目を覚まし、状況が分からないのか困惑した様子で固まっている。



「おはよー。よく眠れた?」

「……お、まえは」

「あー、余計な言葉は吐かなくていいよ。数字だけ答えてね。何人で今日ここへ来たの?」

「……っ俺の端末……!」



余計な発声はするなと伝えたはずなのに、質問に答えずいらないところに反応する反対派の1人に、思わず溜め息が漏れた。



「――太郎」



呼べば、すぐに意図を察したらしいティエンが大きな剣を体から取り出す。


「ヒッ」と短い悲鳴をあげた反対派は怯えた目でティエンを見上げ、できもしないのに逃げようとする。


男の行く手を阻み、見下ろした。



「別にお前が答えなくても代わりはあと9人いるんだし、役に立たないようなら殺す準備だってできてるよ」

「……わッ……分かった!答える!ちゃんと答えるから!」

「いい心掛けだね。で、今日は何人で来たの」

「12人、です……」



こいつら全員に共通する連絡先の件数からして、信じていいだろう。


となるとここにいないのはもう2人。


共通の連絡先の中に、ピンク髪の女の子がいた。雪乃たちの証言と一致する。



「ここにいないお仲間は2人だけ?」

「あぁ……」

「嘘だったら容赦しないよ?」

「嘘じゃない!信じてくれ!」

「ふーん。……太郎、オレちょっと離れるから他のこと聞き出しといてくれる?」

「おっけ、終わったら殺していーい?」

「それはダメ」

「ケチ」



膨れっ面になるティエンや吉治くんと距離を置き、自分の端末を取り出して電話を掛けた。


相手は――大中華帝国軍少校の、リューシェン。



『ハーイ鈴。夜のお誘い?』

「違う」

『ちぇー。折角今夜は日本のホテルに泊まるのにな。まー鈴がダメなら他の子当たるけどー』

「リーが怒るからほどほどにしときなよ。…で、本題だけど。今日どっかでピンク髪の女の子見かけなかった?」

『ピンク髪なら数人いたよ。それがどうかした?』

「その女の子たち全員分の現在地、こっちの端末に送ってくんない?」



リューシェンはAランク追跡能力者。


少しでも視界に入れた人間の位置情報を、視界に入れてから一週間以内ならいつでも検索できる便利な能力を持つ。


数人なら、リューシェンに調べてもらった後その内の誰が武力反対派かこっちで判断すればいいだけだ。



『おっけ。鈴の頼みなら何なりと』



クスリと色っぽい笑い声が電話越しに鼓膜を震わせた。色男め。


通話を切り、リューシェンからのメッセージを待つ。


……そーいや一也、私から誘っておいて放ってきちゃったな。


待っている間に連絡しておこうと思って一也へのメッセージを打つと、返事はすぐに返ってきた。



 〈おいてっちゃってごめんね(;_q) 今度私のオススメのAV紹介するから許してね(;_q) 〉


 〈ご無理は程々に。〉



……“ご無理”、ねぇ。


里緒といい一也といい、何でこう鋭いかなぁ。



 〈ありがと〉



そう返信し、苦笑した。





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