働いて稼ぐヤツと、遊んで稼ぐヤツと、気付いたら貯まってるヤツと、進まなくて売られるあのゲーム。
「お金を貸してください。」
リエルさんは土下座して頼み込みます。
「お願いします!このままでは明日のおさk…いや、今日のお酒も無いんです!」
何でお酒で通してるんですか。ごはんに言い換えてくださいよ。
「酒代くらい自分で稼いだらどうなんじゃ?ぬしも冒険者じゃろうが。」
お婆ちゃんも旅費稼ごうとしないですよね?
「私弱いんで無理ですね。」
何大金稼ごうとしてるんですか。何で強いモンスター相手にするの前提にしてるんですか。宝箱ちゃんと回収してないからそうなるんですよ。
「ゴールデンゴーレム狩りに行きませんか?一攫千金ですよ!」
全然出てこないですよゴールデンゴーレムは。それに意外と強いですからね?経験値稼ぎと並行してモンスターを狩るのが結局安定するんですよ。
「じゃあグレートピッグでも狩って焼くか?」
普通にクエスト受けましょうよ。こんがり焼かないでください。
「グレートピッグですか…おしゃけにあうんでしゅよねぇ…。」
…この機会に禁酒しませんか?
「何をしても良いんだったら良いですよ。」
じゃあダメですよ。
「取り敢えずギルドに行きましょう。」
スー大運河から船に乗って、遂に海へ辿り着きました。シーの港町ですね。シーです。
それで船を降りまして、このやり取りになりました。
一応社長に貰った銀貨はあるんですけどね。里帰り代の。
「ネマちゃん!このクエスト受けましょうよ!」
えっと?
「若くて可愛い冒険者のあなた!私の家を護ってくれませんか?強くてカッコよくて若いあなたです。(三食おやつ付き小金貨5枚)(性別は問いません)」「却下。」
絶対払わないですよ。
「コレなんか良いんじゃないか?」
…。
「最強のタックラーを目指して タンクトップを着こなす旅人 オレは最強のタックラーを目指す者。どうやらシーの林にもタックル使いが居るらしいな。是非手合わせ願いたい。ソイツを捕獲してくれたら、報酬にタックルが強くなる防具の製法を教えてやろう。」「却下。」
報酬金全部小鉄貨で渡して来ますよ。
「タックルが強くなるんじゃぞ?わしでも知らない魔法じゃ。」
それ多分着こなせなきゃ意味ないやつですよ。魔法じゃないです。
「これはどうですか?」
「却下。」
「これはどうじゃ。」
「却下。」
「これも却下。それも却下。」
「全部ダメですよ!まともなクエストは無いんですか!?何で全部変なクエストなんですか!?」
この町はどうなってるんですか。美味しい海の幸も怪しくなるじゃないですか。まだ食べてないのに。
「あの…それはですね。」
!
何ですか!
受付嬢さんでしたか。
「えと、それでですね?ここは港町なんですよ。」
はい。
「それで、海の騒動が多いんですよ。依頼もほとんど海の魔物関連でして。」
はい。
「その為、漁師さんからの依頼が多くてですね。」
はあ、それで?
「漁業は重要な町の要ですし、報酬も多めにしておりまして、殆ど漁師さん専用の冒険者ギルドになっていたんです。」
と言うことは、漁師さんが依頼を出さなくなったと?
「はい。最近新しく出来た漁業ギルドが「漁師と海を守る」為に支援をするようになりまして、この町の冒険者は海に特化していましたから、皆さんそちらに行かれて…。」
クエストも冒険者も無いギルドになったと。
「冒険者業は安定しませんが、漁業ギルドは保険も充実していて、報酬も定期的に一定の額が必ず支払われるんです。」
安定した収入が得られる上に、冒険者ギルドの自己責任方式と違って保険がある。冒険が大好きな所謂【冒険者】では無い方が大半でしょうし、旅の冒険者は町に留まりませんし。そうなりますか。
「シーは旅の方も多くいらっしゃるのですが、クエストがこのようなものばかりで直ぐに旅立ってしまいます。受付嬢達も待遇の良い漁業ギルドに引き抜かれまして、今はギルドマスターと私の二人で運営しているんです。」
それは大変ですね。
「皆さんはクエストを受ける気があるんですよね?旅の方はこのクエストボードを見て直ぐに帰ってしまいますから。」
一応、私はないってことでやらしてもらってるんですけど。
「元々、相対的に報酬の低い、漁師さん以外の方達から依頼されたクエストはギルドマスターが一人で行っていましたから、マスターに聞けば、一見怪しくても内容はちゃんとしているクエストが分かると思います。」
受付嬢さんは分からないんですか?
「マスターはどのクエストも受けられるので…。すみません。私は内容を詳しく知らないんです。その…冒険者ギルドは自己責任ですから…。」
ここまで言われたら受けますよ。
シーのギルドマスターは噴水広場か占いの館か何処かに居るらしいです。
「いつ帰るかは聞いていませんので、通常通りなら3日以内にはギルドに帰って来るはずです。いつもまとめて受けられるので、達成しても直ぐには報告しに帰らないんですよ。」
三日なら待ちませんか?私観光したいんですよ。
「何をしても良いんだったら良いですよ。」
じゃあダメですよ。
「噴水広場から探してみよう。」
お酒が抜けてても別にまともになる訳じゃないんですよね。「酒の席だから」って、めちゃくちゃ言い訳なんですかね。
「居ないですよ。」
居ないって言うか。人が居ないって言うか。
噴水広場にはそもそも人が居ませんでした。お店とかも無いですし、やっぱり怪しいクエスト受けてるんですかね。
「次は占いの館じゃな。」
占いの館サービス 只今キャンペーン中
ギルマスは無事なんでしょうか。
「いらっしゃいませ〜。さぁさぁ何を占うんですか?」
占いに来た訳ではなくてですね。
「貴方、何か悩んでいるわね?あー言わなくて良いわ、ワタシには分かるの。」
悩みはありますけど。目の前に。
「この水晶が貴方の悩みを解決してくれるわ。」
なんか水晶に「はぁぁぁ」てしてますね。
魔法があるので占いが出来ても不自然ではないです。使い手によりますが。
「ズバリ!『小まめに確認して整え続けるのが良い。』そうよ!爪切りのタイミングに悩んでいたのね…。美しい爪は美しい指を造るわ。一緒に美人を目指しましょう!これで貴方もモテ女よ!」
男性は女性の指気にしてないと思いますけどね。
「安心して、これはサービスよ。今キャンペーン中なの。今なら何と半額で占ってあげるわ!さあ、悩みを言って。大丈夫、恥ずかしがらなくて良いの。ワタシは貴方の味方よ。貴方みたいなロリ体型の子は3人も占ったことがあるわ。この体型ではモテないと思ってるんでしょ?それはノンノンよ。コレは外国の大学が行ったアンケート結果なんだけど、コレによると成人男性の92.2%は『成人していれば見た目が幼くても(罪悪感の有無はあるが)恋愛対象になる。』と考えているの。つまり結局は貴方本人の ミ・リョ・ク なのよ。ワタシはただ貴方みたいな女の子を魅力的にしたいだけなの。確かに活動に資金がいるから代金は払って貰うわでもこれはボランティアでやってるようなものなのよこれでも魔法使いの端くれでねワタシの占いは意外と的を得てると親戚付き合いの時評判なのよああそうそうキャンペーン内容はまだあってね今ならなんとこのティシューを差し上げるわこのティシューに使われてる紙なんだけど恋愛の神様ラブリリリ様を信仰している教会を建てた大工さんのはとこが所有している山の周辺に生息しているグレートホッグが好物のワタシの姪が働いている会社で造られたものなのこの前会社から貰ったけど使いきれそうに無いからあげるって言われて使ってるんだけど凄く使いやすくてねそれにこのティシューケースはワタシの手作りなんだけど凄く可愛いデザインでしょ男性は女性の可愛い持ち物に魅力を感じるのよこれもとある外国の大学のデータにあって
「占い師さんは彼氏居るんですか?」
追い出されました。
ギルマスはサクラでもやってたんでしょうか。ちゃんとした依頼ではなさそうですが。
「ギルドマスターは何処におるんじゃろうな。特徴は訊いたが、三人で探すのは流石に無謀じゃったか?」
お婆ちゃんなら魔法でなんとか出来そうですけど。今回は利己的な目的ですからね。
私は暇つぶしで付き合ってるだけですし。
「ネマちゃん…。私のユニークスキルって、状態異常耐性とか関係ないんだよね…。」
酒場を見ないでください。そして私にリーダーとして命令させようとしないでください。
「ではまた!次はお客さんとして来ますね!」
酒場から人が出て来ましたね。割と夕方なんですよね今。
当たって欲しいですね。
「すみません!!冒険者ギルドのマスターですか!?」
「お酒奢ってもらえませんか!?」
展開を省略しないでくださいよ…。
「えぇ…?そう…ですけど。じゃあこの酒場に…入りますか?」
「入ります!!」
カウンターに座りました。
お酒が出されました。
飲み干しました。
「んはぁぁぁぁ…。死ぬとこだったよぉ。」
誰がかは聞かないでおきましょう。
「それで私に何の用なんですか?」
実はかくかくしかじかで…。
「なるほど…そう言うことなら力になれます!」
エピソードの通り良い人みたいですね。
「明日ギルドに来てください!クエストを選んでおくので!そうですね…。報酬が豪華なものと、安全なもの。それと安定するものを用意しておきますね!」
何とかなりそうで良かったです。
ほよさははほはいへんほういへっひゃほいひいへふうぇ(この酒場の海鮮料理めっちゃ美味しいですね)。
あひはににゃ 明日になって冒険者ギルドに行くと、約束通りクエストがテーブルの上に並べられています。
「先ず一番報酬が良いクエストはこれ!しかも一番のオススメです!」
昨日の可愛い子(性別問わず)クエストじゃないですか。本当に払ってくれるんですか?
「流石に金貨は貰えませんでしたが、前に行った時は小銀貨を2枚貰えました!それに三食おやつ付きなのは本当です!依頼主さんも凄く優しくて、お喋りが大好きな恰幅の良いお爺さん。それに警護と言っても、依頼主さんの話し相手がほとんどで、娘さんが昔着ていた服を着たり、クエストなのにお風呂にも入れて貰いました!ああそうでした!なんと警護する家も凄い豪邸でして…。なかなか見られない美術品が沢山置いてあるんです!ヌードって言うんですか?あえて裸になることによる美しさとかを表現しているとか!」
美術品のこと全然分かってないじゃないですか。
て言うか受付嬢さん。ギルマスって、アレですか…?
「少しだけ、アレではありますね…。」
私の価値観だと大分なんですけどね。
「あー、その…。それは〜。あ!他のクエストはどんなのなんじゃ?」
あ!じゃないですよお婆ちゃん。
「二番目にオススメなのはこのクエストです!しっかり準備すれば安全ですよ!」
タックラーのクエストですか。さっきよりかはマシですかね。
「捕獲なので、しっかり準備すれば討伐よりも簡単で安全です!グレートピッグ自体、そこまで強いモンスターではないですしね。報酬は少ないですが、この依頼主さんは旅の方なのでキチンと払ってくれますよ!」
町民は払ってくれないと。
一応、報酬は依頼と一緒にギルドに預ける仕組みなんですが、依頼主が直接支払うケースも多いんですよね。
冒険者は自己責任なので、依頼主が報酬を支払わなかったとしても、それはクエストを見る目が無いってことになるんですよ。ですが、このタックラーは報酬をギルドに預けているみたいですね。
それなら確かに報酬は支払われます。支払われますが、
「報酬は防具の製法じゃからな。余程凄い防具なら売れるかもしれんが…。捕獲に必要な罠代なんかで吹っ飛ぶじゃろうな。わしは気になるんじゃが。」
多分売れないですよ。普通に服屋で買えると思いますよその防具。
「三番はこのクエスト!安定も安全も約束出来ませんが、報酬は必ず支払われます!最高で大銅貨2枚、最低でも中銅貨5枚ですし、高い方だと思いますが…どうですか?」
山の幸の採集クエストですか。漁業ギルドには頼めませんね。
漁業ギルドと言えば、お二人は何故冒険者ギルドの運営を続けているのでしょうか。ギルドはギルドですから、常連の依頼主や専属の冒険者が多くないと運営は難しいはずです。冒険者ギルドの運営費用は報酬金の一部で賄うのが一般的ですし、報酬を支払わない依頼主が多い今の状態では赤字になっているはずですよね?運営費用の為に酒場などを経営したり、受付嬢をアイドルの様にしたりするギルドもあると聞きますが、シーのギルドではそう言う足掻きも漁業側の特権になっているんでしょうし。
「マスターが受けたクエストの報酬で運営しているんです。私の給料もそこからでして。マスターはお人好しですから、依頼主が居る限りは続けるつもりなんですよ。」
受付嬢さんは、そんなギルマスの
「私は一人の分給料が上がるので残ってるんです。業務が減って給料は増える。最高の職場です。それに、冒険者ギルドが潰れても漁業ギルドに入れるんですよ。漁業ギルドが受付嬢の引き抜きに来た時そう言う契約をしたんです。」
助けになりたい訳ではないんですね。
「依頼も減って来てますし、今は元々の常連さんか旅の方の依頼しか無いんですよね。その山菜採りクエストもそうなんです。依頼内容が詳しく書かれて居ないので怪しむ気持ちは分かります。ですがそのクエストは大丈夫ですよ。ちゃんと冒険者らしい依頼です。」
いつも受けているので、ギルマスは山菜に詳しくなって一人で行っているみたいですが、最初の頃は依頼主さんの護衛クエストだったらしいです。
護衛クエストに変更出来ないかギルマスが依頼主さんと話してくれるそうなので、私たちはこのクエストを受けることにしました。
「と言うことで、彼女たちが護衛をするので山菜採りについて行って貰えませんか?」
私達三人平均値は高いですよ!
「マスターの頼みなら聞くよ!そうじゃなくても、たまには自分で採りに行きたいしな。マスターにはいつも頼ってばっかで、こっちが頼られるのは何か変な気分だな。」
何処の町のギルマスも慕われているんですね。
慕われてはなかったですね。「頼りにされている。」ですね。
「オレは飯屋をやってるんだが、採れたての山菜はやっぱり味が違くてな。他の店と共同で依頼を出してるんだ。山菜はオレが探すから、アンタ達はモンスターが近付かないか見張っててくれ。戦わなくて良いからな。モンスターが出たらさっさと逃げよう。」
了解です!
任せてください。戦わないのは私達三人、全員得意ですから!
「この辺りで探そう。護衛は任せたぞ。」
思ったより山奥じゃないんですね。
「奥のは動物達のモンだからな。あと、ここらはレアモノのキノコが生えてる。たまにな。」
へー。
…。
その草食べられるんですか?
「お浸しにするとウマいぞ。…山菜な。」
この草はどうですか?
「これは香り付けに使える。おっ、そっちのねーちゃんが持ってるキノコ生でも食えるヤツだ。ウィスキーに合う。」
「そーだねー。」
既に一杯引っ掛けてる…。
「こやつは食えるのか。」
「あっ!嬢ちゃん、それ!…あー。」
お婆ちゃんが食べてるキノコ、同じやつじゃないんですか?
「似てるけどな。ありゃ毒キノコだ。」
ヤバいじゃないですか!早く解毒しないと!
「いや、大した毒じゃない。一晩で毒は抜ける。」
そうなんですか?なら良かったです。
「まあ精々、逆立ちせずには居られなくなるってぐらいだ。」
は?
「ぬおぉぉぉ…!逆立ちがぁ、逆立ちがぁ…!!」
大したことありますよ!こっちの最高戦力ですよ!?
と言うことは黙っておきましょう。
何か解毒する方法はないんですか?
「解毒か。だったら…このキノコだ。食わせてみろ。」
お婆ちゃんどうぞ。
…食べにくそうですね。
「おお…。治った。」
キノコの毒をキノコで治すとは…。
「ん?治った訳じゃないぞ?より強い毒で上書きしただけだ。」
…因みにどう言う毒ですか?
「クリケットがしたくなる毒。」
「プレイボール!」
何食べさせてるんですか!?
「逆立ちよりはマシだろ?動けるし。」
変わりませんよ!
「ボウラービビってるよー!」
リエルさん!?
何か増えてるんですけど!
「行けー!嬢ちゃんかっ飛ばせー!」
知らない人増えてるんですけど。2チーム揃っちゃてるんですけど。
「よし、オレが審判をやろう。プレイボール!」
何アンタも混ざってるんですか!
…あ、コート。
「ラン、アウッ!」
お前クリケット知らねーだろ!!
「冗談だ。冗談。」
早く解毒してください。
「タイムドアウトってヤツだろ?分かってるって。」
クリケットは良いんですよ!間違ってるし!
「解毒だろ?…無いな。」
無いって?
「クリケット茸の解毒にはバスケット茸が必要なんだが…無いな。」
それホントに解毒できるんですか?
「それは安心してくれ。これら二つのキノコは同じくらいの毒性でな。打ち消し合うんだ。」
…分かりました。そのバスケット茸は何処で採れるんですか?
「前に奥の方で群生地を見たことがある。…ただ危険だ。ここは下山して採ってきて貰おう。」
ギルマスにですか?
「…ああ。依頼料は払うぞ!オレがちゃんと止めるべきだった。」
ギルマスが来るまで彼らを放っておくんですか?人里離れた山の中に。
「だが…ハッキリ言おう。アンタはまだ子供だ。」
ギルマスなら多分、他のクエストを受けてますよ?
連絡が取れると思いますか?
「取れないか…。そうだな分かった。…そうか。」
ハッキリしてください。
「あなたは必ず、【旅人】のネムアム・ロードレイグが護ります。」
約束は破りたくないので。
「分かった!行こう!アンタも冒険者だもんな。」
で、何処に生えてるんですか?
「距離的には直ぐそこだ。ただ、入ったことが本当に無い。オレも何が起こるか分からん。」
ギルマスは入ったことあるんですかね?
「あれ?」
え?
「あった。」
…。
ありましたか。
良かったです。
「もうちょい奥だと思ったんだがな。」
そうなんですか。
「待ってください。」
先程のレアモノと言うのは、クリケット茸も入るんですか?
「ああそうだな。バスケット茸もそうだ。言われれば、あんなに数があるのは珍しいな…。」
…。
「バスケット茸の毒って、バスケット“ボール”がしたくなるんですよね?」
「いや?バスケット“タオル”以外身に付けられなくなるんだ。」
バスタオルじゃなくて!?
「サポーターが持ってるヤツだ。」
ただのタオルじゃねぇか!!
あー…。
「おい!何だこれ!手錠!?足錠!?罠か!?」
変態紳士作製のでしょうね。
見事に捕まってしまいました。
「ありがとう。君たちを追って来て正解だったよ。ギルドマスター君は教えてくれないんだ。大切な採取場所だと言ってね。」
正しく変態紳士じゃないですか!
杖も持って…懐にキノコしまうのシュールですね。
バスケット茸の群生地は見つけられましたか?
「ああ。直ぐそこにあったよ。クリケット茸を用意したのに、勿体なかったかな。だがまあ、魔法使いと酒飲みは封じれたんだ。知ってるかい?クリケット茸の毒は人数が増えるほど効果を増すんだ。20人もプレイヤーを雇ったのは厳しい出費だが、クリケットのルールなど知り得ないのでな。先行投資として割り切ったよ。」
バスケット茸はそんなに稼げるんですか?
「強力な媚薬になるんだ。そうでなくても、対人戦闘の際に重宝する。タオル一枚では戦えまい。」
それで、私たちは解放されるんですか?
「【旅人】か。新人のようだね。殆ど情報がなかった。だが、残ったのが君で良かったよ。【流星】か【酒盛り】なら対処は難しかっただろう。」
解放されるんですか?
「そっちの男は殺すとして…君はどうしようか?奴隷として売りに出しても良いが…。」
私美人ですよ?
「そうだね。確かに美人だ。売るのは勿体無いな。ネムアム君だったか、君は私が育てるとしよう。二人とも着いてきたまえ。」
気色悪いですねぇ。足のやつは外してくれましたが寒気がしますね。
依頼主さんもそう思いますよね?
「何で冷静なんだ…!?アンタはこれから何をされるか分かってないのか!?と言うかこれはどう言うことなんだ!?」
バスケット茸を手に入れるために仕組まれたんですよ。
多分ギルマスから話を聞いて、当初は群生地まで泳がせるつもりだったんでしょうけど、思ったより簡単に見つかったので、「君を始末させてもらう」に変えたんでしょうね。
「隙を作るから、どうにか逃げるんだ。」
良い人ですね。了解です。
「オジさぁん、その杖高いのぉ?」
「これかい?高いよ。装飾にこだわったからね。カラマツと言う木で作ったんだ。この辺りにも生えている木だね。」
針葉樹ですね。分かりました。
「おじさぁん、手錠返すね。」
「え。」
ファイア。
「アッツぅ!!」
ついでに山も燃やしますか。針葉樹林なのでよく燃えますよ。ファイア。
「火!?アンタ何やってって言うかどうやって外したの?オレのも外してよ。」
小銅貨3枚になります。毎度あり!
早く逃げますよ。
「仲間さんは助けなくて良いのか?」
二人とも図太いんで何とかなってますよ。多分。
「早く消火しろ!!バスケット茸が燃えてしまうではないか!!」
「無理です!消火仕切れません!あの女、至る所に火を付けまくってます!」
「だったらバスケット茸を回収しろ!!一つ残らずだ!!さっさとしろ!!」
的なことになってるんでしょうね。
「おいアレ…。アイツら道を塞いでやがる。」
他に道はないんですか?
「ある!アイツらよりもこの山には詳しいからな。こっちだ。」
頼もしいですね。
火は…居場所がバレるのでもう止めておきましょう。
きっと、
「すみません。火の出所を追っていたのですが、道の直前で消えていて…。」
「さっさと見つけ出せ!!」
とか、火傷冷ましながら言ってるんでしょうね。
「よし、ここまで来れば大丈夫だな。早くマスターと衛兵に知らせねぇと。」
じゃあ報告はお願いしますね。
あと報酬はちゃんと払ってもらいますからね。
「そりゃ…構わねぇが…。いや、山菜は無いもんな。迷惑料として払うよ。」
どうぞ。
「山菜!?何で持ってるんだ!?」
くすねたとは言えませんからね。
「こんな事もあろうかと集めておいたんですよ。」
「そうか…それはありがとう。で、アンタはどうするんだ?」
手錠を返した時にくすねたコレがありますから。
「バスケット茸か。仲間を解毒しようってコトだな?」
お婆ちゃんが戻れば基本解決するので。
「気を付けろとは言わねぇ。アンタが居なけりゃオレは死んでた。信じてるぜ!」
私が…。
元はと言えば、私がお婆ちゃんに教わった酔い止めの魔法で、リエルさんからお小遣いを稼がせて貰ってたのが原因なんですが…。まあ知らなくて良いことは沢山ありますからね。ははっ。
…そう言えば、リエルさんがキノコ食べてるの見てないですね。
逆立ちキノコ食べたんでしたっけ?でも逆立ちしてないので食べてないですよね。
リエルさんが持って来たお酒ウイスキーじゃないんですかね?合わないお酒では頂かないとか?
…。
私酔い止めの魔法使えるんですよね?
「かっ飛ばせー!チートーセ!」
クリケットの掛け声ってこんな野球っぽいんですか?
いやそれは良いんですよ。
丁度お婆ちゃんたちが攻撃側ですね。
こっそり…。こっそり…。
抜き足…。差し足…。忍べ私…。
「お婆ちゃん…!コレ食べてください…!」
「え〜?わしもうキノコ嫌なんじゃが…。」
口閉じないでください。
…鼻つまみますか。
「卑怯じゃぞ!息ができんではないか!」
良いから食べてください。
「むぐっ。」
…。
どうですか?
「わしはなぜクリケットを…?ルール分からんのに…。」
よし。
次はリエルさんですね。
「リエルさん。」
「なにぃ?」
酔い止めの魔法タダで使いますよ。
「やったー!おねが〜い!」
えい。
「お〜…。ネマさん。クリケットって面白いですね。」
よし。
実はですねかくかくしかじかで。
「ぬしは本当に騒ぎを呼び込むの。」
私が原因…まあそれは良いじゃないですか。
「まあそれは良いのじゃ。ぬしら二人で足止めをしておいてくれ。わしは先ず消火から始める。」
リエルさんのスキルがあれば楽勝ですよ。やっちゃってください!
「任せてください!今回の相手は普通に悪人ですからね。キツめにいきますよ!【酒様の香】!」
逆さま?なんかオシャレですね。私もそう言う良い感じにオシャレな技欲しいんですけど。今度お婆ちゃんに教えて貰いましょう!絶対に!
「水よ、我が呼んでいる。光を奪えと命じている。母なる海より生まれし乱雲。地に落ち、還り、巡る雨。天より降りし恵の雨。岩をも穿つ尖点の雨。此度は炎を溶かし喰らう。止まぬ雨など無きともよ。数瞬の命は七色に煌めく。水よ空を漂いて、燃ゆるこの地を奪い獲れ。」
「コンセントレートヘビーレイン!!」
トレンショナルレインじゃないんですか?と言うか魔法の詠唱って何なんですか?
詠唱内容に関連性無いですし。短いのもあれば長いのもあるし。無詠唱もあるし。そもそも誰に向けて詠唱してるんですか?魔法の学校では大真面目にコレ習うんですか?音読でめっちゃ気持ち込めて読んで、「おー。」って感心されて、「ボケたんですけど…。」ってなって変な空気になるアレよりキツくないですか?詠唱内容を読み解くテストで、「Q.作者の気持ちを答えよ。」「A.なんかカッコいいから。」で百点満点やったーなんですか?
「これで暫くすれば、火の手は消えるじゃろう。」
後は酔って動けなくなってる変態たちですか。
「面倒じゃが、衛兵に引き渡すしかあるまい。全員そこらの木にでも縛り付けておくか。」
それなら依頼主さんが呼んできてくれてますよ。
縛ったら放置で良いでしょう。
「ならわしらはギルドに戻ろう。」
時は遡り、一時間前。冒険者ギルドでは…。一度やってみたかっただけなのでお気になさらず。
「受付嬢さん!!マスターは!?」
大きな音を立て、ギルドの扉を勢いよく開ける男。
受付嬢は何事かと男に問う。
「実はかくかくしかじかで!…マスターは!?」
マスターは今居ないと答えると、男は連絡係を受付嬢に頼み、衛兵の下へと駆け出した。
そして今、私たちがギルドへ戻って来ると…
「大変です!!」
受付嬢さんがめっちゃ焦ってます。何事か?
「衛兵の方は暫く来られないと思います。港の方でモンスターが暴れておりまして。」
ギルマスはどうしたんですか?
「マスターも皆さんと同じく町を離れて…掛かっても数時間程だとは思いますが…。マスターが不在の際は私がギルドマスター代理ですので、皆さんに緊急クエストを依頼します!」
「緊急クエスト『巨大モンスターからシーの町を守れ!』です!」
「報酬は漁業ギルド次第ですし、皆さんは旅人ですから、受ける必要はありません。ですが、どうかお願いします!生まれ育った私の故郷。最高の町なんです!」
受けたいですけどぉ…。私は居ても変わらないでしょうしぃ…。
「出現したトライホーンクラーケンは絶品ですよ。」
「正義の心が訴えているんです。「救え。」と。」
「シルバーランクの力を見せる時が来たようじゃな。」
「私のユニークスキルで踊り食ってやりますよ。」
行くぞ!!