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1/∞の世界で  作者: スマイロハ
3652回くらい星を眺めたら十年。の章

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45/47

思ってるより人生は甘くないけど、思ってるより人生は甘い。

魔王が有する最強の軍隊「魔王軍四天王」その四人が一堂に会する事、それ即ち灰燼を意味する。

魔王は本気で潰しに来たのだ。脅威を。灰燼と帰す為に。

「【力】のヴァイス…!【翼】のグリア…!【心】のドリュー…!【瞳】のきれいな人…!」

「まさかここに来て全員が揃うなんて…。」

「違ぁぁぁぁぁぁぁぁぁう!!!!!」

【瞳】のきれいな人の咆哮が響き渡る。

「わちきだけ見た目のイメージ!!な、ま、え、で、呼、ん、で!!」

「だって知らないんですもん。」

「わちきは魔王軍四天王が一人、【瞳】のベーラ!これからは名前で呼んでおくんなんし!」

「ベーラさん。」

「それでようざんす。」

四天王の標的、それは【勇者】に縁ある者。【勇者】自身は既に葬っていようと、その影ある限り士気に乱れが生じる。勇者パーティの【侍】と、【血鬼剣聖】の妹達、そして世界最強の魔法使い【流星】が揃った絶好の機会。

「逃す訳無ぇよな。」

真っ先に動いたのはグリア。最強の四天王ヴァイスと最強の魔法使いチトセ、二人のタイマンを作る為、運んだ。

「…一対一か。キメラはナシか?」

「そうだ!!必要無いからな!!」

一方、取り残された者達は絶望すらする暇も無く、町の人間ほぼ全てが【心】のユニークスキルによって敵に付く。

「どうだベーラ。何人効いた?」

「ティアルーン、フィヴィナ、レファゼゼ、ルフェディア、サフェディア、ジェーサ、の心は死んだでありんす。」

「ネムアム以外の姉妹はこれで終わりか。あっけねぇなぁ。…で、ジェーサってのはあの淫魔か?」

「あーあ、あの子には将来性があったのにー。勿体ない。」

「どうせ全員殺すんだから別に良いだろ…。」

また姉妹と敵対することになったネムアム。ナイフを握る手に力を込める。

躊躇う必要は無い。もう元の人格は無いのだから。しかし残された者達には心苦しく気圧される。これが本来の使い方。敵も味方も関係無く、ただ【心】の思うままに。

「にしても相変わらず我の強い連中だ。俺のスキルが全く効かん。」

「問題ナシナシ。効かないのはボクが殺す。」

「お待ち!わちきの出番に半分残すでありんす。」

「じゃあ半分こね。ドリューはスキル使って兵増やしといて。」

「了解。」

四天王達と同様に、ネムアム達も戦闘態勢となる。

「皆!!【心】のスキルにやられた以上、最早打つ手は無いでござる!!躊躇えば死ぬでござるよ!!」

「敵勢力になった奴は殺せってことかよ…。クソッ。竜の涙を使う!!ここしか無い!!」

キャルェインは竜の涙の力を開放し、失われた火蛇竜の姿へと変化する。

煌煌と燃え盛る鱗、大蛇の竜。翼は無く空は飛べない。吸血鬼の力が陽光に遮られる今、翼を使って飛べる者は居ない。

「ルルは飛べる!!長くは持たないけど…!!」

風魔法の飛行魔法は無理矢理飛ばす魔法。飛べはするが魔力を喰う。それでも遠距離からの攻撃か飛んで近付かなければ、グリアとは戦いの土俵にすら上がれない。

そんな折、一人の戦士は飛び上がった。縮むユニークスキルの応用。戻る勢いを利用した高速移動。ミニフの全力。

これから先の準備期間で用意するはずだった専用装備は無い。サイズの変化に伴い装備は使い物にならなくなるが、その欠点を補って余りあるほどに速く、強く。

「へぇ。面白いスキルだね。速い。全裸で殴り掛かられたのは初めてだよ。でもボクからすれば弱過ぎる。」

ミニフが殺された。

動揺が広がる間もなく、シンリは水魔法を使う。

「凄いな。下級魔法でそれ?並の最上級魔法を凌駕してるよ。まぁ結局、どれだけ出力が高くても下級なんだけど。」

シンリが殺された。

相手は魔法の専門家、魔族の最高実力者。この程度の魔法くらい対処出来ずに名乗れる肩書では無い。

ローレは続く。シンリが生み出した大量の水を人魚の力で形造った人魚の最高火力、水の竜。そして火の竜キャルェインと共に自爆覚悟の特攻を放つ。

「ボクは魔族から四翼のグリアと呼ばれててね。元々の翼とユニークスキルの翼を合わせて四つだからだって。でも中々四つ出せることはないんだ。誇って良いよ。キミはボクに四翼を出させた。」

「……勲章より勝利の褒美が欲しかった。」

四天王最速のスピードに追い付けず、ローレとキャルェインが殺された。

「半分こだからあと一人か。誰にする?誰がボクと戦ってくれる?」

直後、飛ぶ斬撃がグリアを狙う。

「拙者が斬るでござる!!」

「キミか…。仕方ないね。飛べる子が戦う気ないんだもん。」

サヨとグリアのやり取り。この状況をただ観る事しか出来なかったのがルル。飛べるだけの普通の魔法使い。

「サヨさん!!」

ルルは声を荒げる。

「残って。」

サヨは見る。その瞳に決意の煌めくのを。

「ネマちゃんごめん。ルルは幸せだったよ。」

グリアは空中に拘束される。ルルはそこに飛び付き、辺り一帯を消し飛ばす究極の最上級魔法を使う。自身の命をくべて発する大爆発魔法。もしグリアが地上に居れば仲間毎殺していただろう。

ルルが死んだ。

「はは。ははははっ。凄い。凄いよこれは!!勇者レビィに殺されかけた時以来じゃないか!?なぁ【侍】!!ボクがこんなダメージを負うなんてさ!?手ぇ抜いて良かったぁ…!!」

グリアの傷が回復していく。当然回復魔法を突破しなければHPは削れない。そうでなくとも、本気なら技を出す一瞬すら与えられず殺されている。

「はいはい退きなんし。ここからはわちきの舞台でありんす。」

バトンは渡され、次は百瞳のベーラが相手を取る。

「おや。ドリューのスキルを解こうとしたのでありんすか。それがセデス神から与えられた力でありんすね。」

一度ドリューと相対し【心】のスキルを経験しているネムアムは、事前に仲間達へ【魅惑の完全支配者(マスターチャーム)】の発動条件を満たさせており、それを今発動させた。発動条件は記憶に残っている必要は無く事実として存在していれば良いため、心を壊された後でも魅了することが出来る。だが当然ドリューもそれを警戒しており、ネムアムの仲間に対してスキルで心を壊した後、追加した心は消しているためこれはただの人型の肉。魅了したところで意味は無い。

「何故私の特典を…?」

それは本来知り得ない筈のものだ。

「わちきのこの【瞳】はありとあらゆる全てを見通す。過去も、未来も、概念さえも。遥か彼方の事象であっても、直ぐ傍の思考であっても、見えないものは存在しんせん。…おっと、眼が無ければとお考えでありんすか?それは残念でありんすね…。わちきの瞳は百を超えるのでありんすよ。」

ベーラは左眼の下のほほにもう一つ瞳を出して魅せた。これが百瞳であると。

五人がベーラの対処に希望を見出せずにいる中、ドリューはスキルの対象者を増やし続けていた。

「強いスキルだな。ゼーテはともかく、リコに効いたってことは単純な精神汚染じゃないのか。」

ビセルの現最高権力者の一人、岬傭兵団団長ジェイサーが対敵する。

「何だよ。やっぱ俺は知らないか?裏方ってのは目立たねぇもんだな。」

「噂は聞いてるよ。心狩るドリューだろ?人の心をぶっ壊しちまうって言う。」

「おいおい知ってんなら言えよ。痛い奴じゃねぇか俺。」

「噂だけだ。…リコより上の研究者らしいな。」

「獣人よりずっと長生きなんだ。年の功ってヤツさ。」

ドリューは支配下の獣人をけしかける。

「不可侵はどうした?悪魔は契約を破らないんじゃないのか?」

「ビセルと結んだ協定だな?確かに悪魔は契約絶対主義だが、お前は一つ勘違いしてる。」

「契約に勘違いがあったら大問題だな。」

「良いか?悪魔との契約が良いものな訳無いだろ。俺達は敵を討ちに来ただけ。来てみれば、お前らの国の獣人がその敵に寝床や物資を売っていた。先に裏切ったのはそっちだ。」

そう言い切り、ドリューは逃亡する。

「逃げるのか?」

「俺は弱いんだ。お前みたいなバリバリの武闘派とは戦わないことにしてんの。」

追いかけたいジェイサーであったが、まるで革命の日の様に、また守るべき者達が行く手を封じる。

「相当強ぇ心の持ち主でもない限り効くんだけどな。ネムアムの知り合いはイカレてるのが多い…。さて、スキルの対象に全員入れないとな。かくれんぼの始まりだ。が、まぁ、見逃した分はベーラとグリアのコンビで、場所を特定して高速移動で殺せば良いんだ。そんなに気にしないで行こう!最終的に殺せれば良いんだから!」

四天王のビセル襲撃と同時刻、世界中で魔王軍の襲撃が行われていた。魔族や魔物に限らず吸血鬼族や淫魔族も国を捨て攻める。今この瞬間も着々と命は減っている。

グリアによって別たれた究極の腕力と究極の魔力の対決。両者は完全に拮抗してしまっていた。チトセはヴァイスのスピードに対応するため体が耐えられない域のバフを自身へかけ続け、回復魔法によって無理矢理それを成り立たせている。一方で、ヴァイスはチトセが放つ座標指定の消滅魔法を避けるため、常にチトセの索敵範囲外へ動き続ける。ワープで追ってくるチトセを四本の腕で、魔法を発動させる前に倒そうとするが超重力の魔法によって思うように動けず、結果どちらも有効打を持てないまま戦闘時間だけが増えて行く。

「力無きヴァイス。そう呼ばれとるらしいの。」

チトセは、特別なスキルと言えば魔法の神から与えられた成長不可のみ。手札は全てが魔法一色。

「では流れ星とはなんだ?願いを叶えると言う事か?」

対するヴァイスは魔法を含め一切のスキルを持たない。言ってしまえばステータスが高いだけ。

「叶える力を持ちながら、叶えずに去って行くからであろう?貴様の様に、力を持つ者がその力を振るわない。それは魔王様が最も嫌うものだ。」

故に速く。故に堅く。故に強く。だから四天王最強であるのだ。

「最早形振り構ってはおれんか…。すまん。本気で殺しに行く。」

「そうだ。それで良い。」

巨大隕石の生成とその流星群を墜とす魔法。この国どころか大陸を消し飛ばす単純威力最強の魔法。

魔法の詠唱とは完成度を高める裏ワザでしかない。詠唱破棄と違い、超級魔法に詠唱自体が存在しないのは既に完成されている魔法だから。使用者の魔力量や魔力出力、制御力によって様相は変わるが、それは魔法自体が変化している訳では無い。

ではこの超級魔法の使用者が二人しか存在しないのは何故か。答えは単純。覚える方法が存在しないから。ネムアムが習得出来たのは無理矢理魂に使い方を刻み込んだからであり、そしてこの方法はチトセの魔法をもってしても再現不可能の荒業。魂に刻まれた傷が治せないのと同様に、魂に刻まれた記憶は消えない。仮に、クローン技術などで生前を再現した傷一つ無い肉体を用意し、その人間の魂を用意し、それらを繋げて生き返らせたとする。すると傷一つ無い体に魂に刻まれた傷が新たに増える。その傷が致命傷であれば当然死ぬ。逆に、同様の状況で、魂に刻まれた記憶であれば生き返っても残っているが、刻まれていない記憶は失われる。肉体に記憶を刻んでいれば話は変わるかもしれないが、それは致命傷を治せれば死なないと言うのと同じ発想。つまり当たり前のことである。話を戻すが、神が転生者として転生させる時、神はその者の魂に刻まれている傷を消してから転生させる。大抵の人間は、首を切られて死ねば首を切られた傷が魂に刻まれるため、転生させても死ぬ可能性が高いからだ。しかし当然、その様な人間はそもそも転生させることが無い。が、ネムアムは違った。ネムアムの死因は即死ではなく、普通の人間ならその致命傷は魂に刻まれるはず。なのにネムアムの魂には傷一つ無く、逆に必要で有用な記憶はしっかりと全て刻まれていたのだ。だから超級魔法を習得出来た。

「…脳を完全に破壊された…。なのに何故再生出来るでござるか…!?自意識の崩壊も無い様に見えるでござる…。ネムアム殿…!」

ベーラとの戦闘で多大な傷を負うネムアムだが、陽光を遮れる場所に隠れて再生する。

「普通の吸血鬼はここまで再生出来ないらしいですね。そもそも痛みで気絶するとか。」

ネムアム本人は気付いていないが、外付けの魔法によって既に使い方は習得出来ている。後はそれを自覚出来るかどうかだけ。勿論、呪いの影響で魔力量も制御力も変化は無いため、使えたとしても数回でガス欠するだろうが。

「サヨさん。向こうはどうやったら勝てるか見えてるんです。仮に勝てたとしても後ろの四天王に殺されるだけ。」

「それは…そうでござるが…。しかし拙者は侍故、何もせずと言うのは無理でござる…!!」

「分かってます。なので逃げましょうって話です。」

逃げ腰のリーダーを知らず、仲間がまた一人殺される。

「姉の愛でありんすねぇ。こんなスライムを造るなんて。」

スラリンはティアルーンが自身の魂の一部を使用し錬成した、妹を見守る為の人造生命。その禁忌の錬成式は当然、誰であっても明かす事は出来無かった。

スラリンが殺された。スライムであっても完全に消滅すればその存在を保つ事は出来無い。残りは四人。

「ラトちゃんのスキルは…?」

「口に入れないと食べられません…。」

「単純な地力であれば拙者とラビリア殿、ネムアム殿でも通用するのでござるが…。」

ベーラの瞳を突破するには、スキルの対象に制限が無いラトで食うか、見えても対処出来無い攻撃を行うしかない。が。

「当然そうは致しんせん。」

ラトが殺された。

剣士三人、範囲攻撃出来る手札は持っていない。

「……チトセさんしか対抗出来ない。そのチトセさんがどれだけ凄いのかは噂として知ってる。…多分、私達は見捨てられる。…よね?」

「…お婆ちゃんが敵を瞬殺出来ていないと言う事は、その内手段を選ばなくなると言う事です…。私達も、私達の目の前の敵も、全員まとめて魔法で殺されるでしょう…。」

「拙者を逃がしてくれた時の様に、瞬間移動で逃がしてはくれないでござるか…?」

「…お婆ちゃんが本気を出すまで生き延びてたら助けてくれるかもしれません…。」

その予想通り、チトセは星を降らしている。それは遥か宙の上にあり、いまだ着弾は愚か姿すら見えない。

「オグルの時と同様に、か。限界のようだな。」

「これならぬしも受け切れんじゃろ。」

「お前らなのじゃ!?わしの仙境を破壊しているのは!!」

二人の戦いに割って入ったのは九尾の獣人。ビセルの仙境の主。

「何やってくれてるのじゃ!!わしの家どころか仙境があった山そのものが消し飛んだのじゃ!!どう責任取ってくれるのじゃ!?ああ!?」

「誰じゃぬしは?…ネムアムが言っておった仙人か?」

「ネムアムを知っているのじゃ?それはわしの弟子なのじゃ。」

「なんじゃ奇遇じゃの。ネムアムはわしの弟子じゃぞ。」

「何!?ではお前がネムアムの言っていた師なのじゃ!?」

チトセは突如現れた仙人に一通り説明する。

「なるほどなのじゃ。わしは仙境の外の事象には疎いのじゃ。まさかそんなことになっていたとは…なのじゃ。」

「悪いがあの男の足止めを頼めるか?わしは仲間を逃がさねばならん。」

「問題無いのじゃ。――別に、アレを倒してしまっても構わんのじゃ?」

「勿論じゃ。頼んだぞ。」

チトセはネムアム達の元へワープする。

「我は魔法使いを追いたいのだが…こちらの方が楽しそうだ。」

「わしはヒーローではないのじゃ。殺させてもらう。のじゃ。」

思わぬ援軍に喜びつつ、チトセは仲間の元へ急いだ。

「――間に合わなんだか…!!」

サヨとラビリアは殺されている。

「やっぱり未来が見えるのは良いね。コレがなかったらもう二人逃がされてた。ネムアムちゃんは斬れなかったけど。それが(リン)ってヤツ?」

グリアの眼が【瞳】になっている。これによって【瞳】の視界を共有出来る。

この【瞳】に未来は無数の可能性として見え、それはほんの些細な事、【瞳】で見ただけでも変化する。チトセが仲間を逃がしに来るのを見たベーラとグリアは即刻三人を始末しにかかった。ネムアムだけは(リン)の防御術で免れたが二人は殺された。

「……これは骨が折れそうじゃな…。ネムアム。」

流星の魔法使いは言葉をかける。

「他のロードレイグ家の姉妹達が全員死んだ今、セデス神の眷属でありその恩恵を受け天界へ入る事が出来るのはネムアム。ぬしだけじゃ。…わしが教えられる魔法はもう無い。気付いておらんだけじゃネムアム。ぬしは全ての魔法を使う事が出来る。自覚するんじゃ、己の才を。――託したぞ、我が愛弟子よ。」

ネムアムの姿が消える。

「弟子だけ逃がすのか。キミは逃げなくて良かったのかな?」

「ぬしらを放置は出来んじゃろう。」

流星群の着弾時間が迫っている。

「…ベーラ。逃げるよ。」

「逃げ切れるのでありんすか…?」

「そう簡単に逃がしてたまるか。」

翼を生やし逃走する四天王二人と、その二人を追いかけるチトセはビセルから離れた。

これは後の話だが、世界を股にかけた鬼ごっこの果て、全てを見通し逃げ回るグリアとベーラを仕留める為、チトセは全ての魔力を使用し自身を巻き込む領域で退避地点を無理矢理封じた超広範囲消滅魔法を展開、相討ちの形で三名は死亡する事となる。

場面は変わり、仙人とヴァイスの戦闘。

「む?今のは(リン)と言う技か?我の攻撃が無効化されたようだが…。」

「一応はね返したのじゃ…。何ちゅう馬鹿力なのじゃ…。」

(リン)のカウンターをものともしない豪胆。そもそも(リン)が戦闘の為の技術ではないと言うのもあるが、鍛えはしていても仙境に籠り、同程度の相手とのまともな戦闘経験のない仙人には有効打が無かった。しかしそれは向こうも同じ。ヴァイスの攻撃は全てあしらわれる上、仙人程の使い手であれば(リン)を回復に使う事が出来る。更に、(リン)にはエネルギー切れの概念は無い。奇しくも、チトセの時と同様の拮抗状態にあった。

「ならば我が力を持って押し通るのみ!!」

「押し通れぬから仙境なのじゃ…!!」

この戦いはどちらかが力尽きるまで続く。一見すれば仙人の圧勝に思えるが、仮にも最強の称号を持つ男。ヴァイスはこの果てしない格闘の中でも成長を止める事は無く、じっくりと力を上げて行った。やがて(リン)では完全に防ぎ切れなくなり、仙人は回復させる事で猛攻に耐えざるを得なくなってしまう。その結果、生命力を使い切った両名は同時に力尽きる事となる。

魔王軍四天王最後の一人ドリューは、対象の今の事柄だけを見る事が出来る【瞳】の水晶玉を用いて、グリアとベーラが殺した形跡の無い消えたネムアムの行方を調べた。するとネムアムは天界に居る事が分かり、そこには天界を滅ぼしに行った魔王様も居る。万が一魔王様に何かあってはマズいと考え、ネムアムを殺しに天界の入り口に繋がる導天山へ向かったドリューだったが、その導天山で今回の事に乗じて魔王軍を抜けた吸血鬼の王女と出会ってしまった。王女が導天山に居た理由は、神の力が無ければ入れない天界で魔王軍を抜けたこの身を隠したいから。本当にただの偶然であったのだが、四天王が裏切り者の自分を始末しに来たと勘違いした王女はドリューに戦闘を仕掛ける。王女には【心】のスキルが効かない上、地力で完全に上回られていたドリューは運悪くもここで命を落とす事となる。

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