拘束って、エロイよね………。
「ちょっと見に行こうぜ~!」じゃないですよね。他の人の修行も気になります。が!ルルちゃんに時間作ってって言われてたんでした。会議は終わったんです。早く行きましょう。
「ルルちゃん久しぶり!13年ぶりくらいかな?」
王都自体がそうですけどね。
「抱いて。」
抱きませんが、懐かしいですね。…前世の両親も死んじゃったんですよね…。
「抱いて。」
いやいや拘束の魔法なんて使っちゃって。私はどこにも行きませんよ。ほらギュッと再会のハグしてあげましょう。ぎゅー。
「そうじゃない。」
「………今回も眠らせて逃げれる?」
「ミストラビットの時とは違う。…一回で良いから。お願い。」
「……………分かった…。」
何でこんなことしちゃったんだろう。後悔するに決まってるのに。頼めば絶対受け入れてくれると知ってるのに。ネマちゃんが好きだから?違う。私が好きなのは彼女が演じているキャラクターであって彼女じゃない。でも、彼女は私の知らない間に色んなことがあって、変わった。変わって欲しくない。現実から目を逸らして、見ようとしないで、甘い夢だけを見続けていたい。私はみんなみたいに強くないから。失恋なんて堪えられないから。偽りの恋人ごっこで良い。否定しないで。好きで居させて。あなたを好きじゃなくなりたくないの。そんなのはいつか瓦解する夢だって分かってる。分かってるから、その時が来るまで騙し続けて。私に夢を見させて。私に目を閉じさせて。あなたを一方的に好きで居させて欲しいの。見返りを求めない愛は愛じゃないと知っているけど、これが瞑愛だと知っているけど、私の目を覚まさないで。甘色で彩られた夢の世界に私を縛り付け続けたまま。それが唯一、私が幸せになれる道だから。
「…フィヴから聞いた。おじさんとおばさん、私の家を庇ってくれたって。フィヴたちを逃がしてくれたって。…そのせいで死んだって。」
違う。
「原因と言うか、元を辿れば私が後先考えずに突っ走ったせいだし。『どうせ自分は何とかなるから。』って、みんなのこと考えない癖が出来てたせいだし。」
やめて。そうじゃないから。
「だから、その…。私のせいだから。私がちゃんと責任は取るから。」
そうじゃないんだって。ネマちゃんは何もしてない。何もしてないから悪いんじゃなくて、何もしてないから悪くないの。
「私がルルちゃんを幸せにする。」
しなくて良い。断って良い。ネマちゃんに責任は無い。言わなきゃ。フィヴちゃんは黙っててくれたんだ。私のために。フィヴちゃんが一番辛い筈なのに、私よりずっと先に居る。私も追いかけないと。手遅れになる前に責任を取らないと。子供のままでは居られない。大人に成るんだ。ルル。
「魔法使いになりたかった。凄い魔法使いになって、困ってる人を助ける。それが夢。」
夢を叶えるために学校へ行って、勉強して、魔法使いになれた。怪我した私を助けてくれた幼馴染みたいになれたと思った。ずっと魔法の勉強をし続けて、ずっと大切な幼馴染の隣を目指していた。なのにあの日、9年前、王都を警護していたプラチナムランクの冒険者二人、メルルダさんとグランさんは四天王を名乗るヴァイスと言う魔族の襲撃からこの街を守って死んだ。残された者達は抵抗したけど、決して叶わないと悟ってすぐに諦めた。そして、この街を潰した魔王軍は撤退していった。多くの冒険者が命を賭して戦ったのに、私は「大切な人に会いたいから。」と言い訳をして戦わなかった。私がちゃんと戦っていれば、結果論だとしても、死なずに済んだ人は大勢居たかもしれない。もっとマシだったかもしれない。元々、王都壊滅の2年前にジルミさんが行方不明となり、レビィさんが呪いを受けたまま1年間戦っていたけど限界が来て臥し、その時本来は私もティアさんと同じ様に戦場へ行く筈だった。行かなかった理由はティアさんに止められたことではなく「大切な人に会いたいから。」で、しかもティアさんから「お姉ちゃんの代わりに妹たちを守ってあげてくれる?」と言う免罪符を貰ったから。甘えて甘えて甘えて、それと関係あるかは分からないけど、2年間で浮上した勇者パーティへの疑念が、王都が潰された余波で増し、結果何の罪もないロードレイグ家に火が飛んだ。そしてその時私は天秤にかけてしまった。ロードレイグ家を庇おうとする両親を守る為、大切な人と同じだけ大切な筈のその家族を手にかけてしまった。魔力の鎖で相手を拘束する魔法をかけ、出来るだけ楽に死ねるように風の刃で相手を切る魔法を使い首を刎ねた。でも子供達の姿がなくて。気付いた時には、私の両親が子供達を逃がし、逃がしたことで裏切り者として縛り上げられていた。決断せざるを得なかった。「ルルはティアさんに託されたんだ。」そう言ってフィヴちゃんたちをこれから自分が守っていくと決めた。だから私を信用してもらう為に、私は両親の首を刎ねたんだ。それから3年間、私は家族代わりとして四人を育てたけど、フィヴちゃんがネマちゃんを探しに旅に出て三人になった。行くべきは私だったのに。私が行ってフィヴちゃんが残るべきだったのに。私が残ってフィヴちゃんを行かせてしまった。この時ようやく、「大切な人に会いたいから。」の言い訳は、本当に「理由も意味も信念も無いただの言い訳」なんだと気付いた。
「ルルが目指した魔法使いは人を助ける為に魔法を使っていた。ルルが成った魔法使いは人を殺す為に魔法を使った。ねぇ、ネマちゃん。ルルの力なら。ルルぐらいの魔法使いなら。あの日ちゃんと戦ってれば、ルルの父親も母親も、ネマちゃんの父親も母親も、ちゃんと守れてたの。なのに手を抜いたからみんなルルが殺すことになった。ねぇ。ルルはどうやって罪を償ったら良いのかな?教えてよ。ネマちゃん。」
夢は見続けられない。いつか目が覚め、現実を見ることになる。それが今じゃないとしても、その時、どうやって贖罪すれば良いのか分からない。死んだら償える?沢山の人を救う?神様に祈りを捧げる?それで何が償えてるの?どうやって責任を取れば良いの?逃げるのは簡単だよ。逃げたくないから逃げなくて良い方法を知りたいの。
それとも逃げ道しか残ってないのかな。それかもう道なんて無いのかも。
「過去を振り返るのは良いことです。でも後ろ歩きは危険です。ちゃんと前を見ないと、思わぬ障害にぶつかってしまいますから。」
「そんなの分かってる…!…どの方向を見ても道が無いの…。ここに座り込むしか無いの…。逃げることも進むことも出来ずに、ずっと、永遠に、暗い道の切れ端にしがみつくことしか出来無い。それがルルの人生なんだよ。人生にしてしまったんだよ…。」
「道が無いなら作れば良いって言うのは暴論ですよね。だって道の作り方なんて、土木系のプロじゃないと知らないじゃないですか。自分で道を作ってる人は専門的な知識と経験、技術のある人か、道のクオリティを気にしない人です。でもどうせなら進みやすい整備された道を進みたい。だからプロが作った道をみんな進みたがるんです。じゃあ道のクオリティを気にしない人はどうしてるのかと言うと、その人達は本当は道なんて自作して無いんです。自分が進んだ場所を勝手に『道』と言い張っているだけなんですよ。別に道以外進んじゃいけない決まりも、進めない理屈も無いですからね。進みたい方向に道を作って進んでいる訳じゃなく、進みたい方向にただ進んでいるだけなんです。」
「…………ルルも進める…?」
「大丈夫。よく見まわしてみて下さい。進みたいと思える場所が見えますよ。道を進むことに拘る理由なんて無いんですから。自由に。進みたいところに。行きたい場所に。」
いつの間にか、自分で自分を拘束していた。簡単に解ける拘束を、拘束に気付いてないから放置していた。それを今解いた。今思い出せた。子供の頃の夢を忘れてたんだ。恥ずかしくて隠してた、誰にも言わなかったから忘れてしまった想いを。やっぱり夢は忘れないようにはっきり声に出さなくちゃ。魔法使いは手段で、隣に居る為の肩書。いつの間にか目的の為に欲する手段そのものが目的になってた。本当はこの拘束が見えていたのに、見ようとしていなかった。でも今見て解いた。
私の夢は、求めるものは、進みたい方向は。この人に、この大切な幼馴染に、ネマちゃんに。
「ルルを無限に広がる世界の中で一番の幸せ者にしてくれますか?」
大好きって伝えること。
「喜んで。私がルルちゃんを無限に、世界一幸せにします。」
お父さん、お母さん、見てますか?あなた達の娘は幸せに生きています。私のせいで不幸にしてしまったけど、その不幸を吹き飛ばすほど私が幸せになります。だから安らかに眠って下さい。心配かけたけどもう大丈夫。二人が育てた娘は立派に大人に成りました。




